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判例紹介
賃貸人が賃貸借自体を否定して値上げをしていなかった事情のある建物賃貸借(賃料月額1万5000円)について、賃貸人の得る客観的な経済的利益を立退きの算定基準として500万円の立退料提供によっても解約申入れについて正当事由がないとされた事例 (福岡地裁平成元年6月7日判決、判例タイムズ714号193頁以下)
(事案)
本件は、賃貸人Xが賃借人Yに対し、主位的に賃料不払による契約解除を理由とし、予備的には、正当事由として①建物の老朽化(築後約80年経過)と②自己使用の必要性(自宅が手狭で長女・三女がアパート住まい)、③信頼関係の破壊(無断増改築等ほか)、④立退料500万円の提供を主張した。
iまた、Yらは他に移転することの愛着などを理由に本件建物の必要性を主張して争った事案。
結果は賃貸人Xの敗訴。
(判決要旨)
「本件賃貸借契約の解除の正当事由の有無を判断するに、原告側の事情を衡量すれば、そのままでは明渡しの正当事由があるものとは認められないが、賃借期間が29年に及び建物の老朽化も進んでいること、当初の賃借人は死亡し、被告人らのうち本件建物に現在も居住しているのはY①1人のみであり、適正な補償があれば移転が可能であること、本件建物周辺は土地利用の高度化の進んだ地域であり、本件建物の存在によって地価の高い敷地の有効利用が著しく妨げられていることなどに照らし、原告(賃貸人)が十分な金銭的補償をすれば正当事由があると認めることができる」、
「しかしながら、右の立退料の算定に当たっては、従前の賃料は原告が賃貸借自体を否定して値上げをしなかった結果であるから、これを算定の基礎とするのは妥当でなく、正当事由がやや弱い本件にあっては、本件の明渡し(その後の取壊し)によって土地の最有効利用が可能になるので、それによって得られる原告の客観的な経済的利益を主たる算定基準とすべきである」、
「・・・・・・を参酌すると正当事由を補完するために借家人に分与すべき経済的利益(立退料)は金700万円が相当である判断される」「原告は金500万円を上回る立退料を提供する意思を有しないので、右金額と引換給付判決をなすことはできなず、結局、原告の請求は理由がないことに帰する」。
(寸評)
判決の結論は実務の実状から見ると異なる判決もあり得るので、あまり参考にはならないが、いわゆる立退料の算定基準について賃借人側の受ける経済的利益を基準として判断している点は注目される。
判決の考え方には恐らく貸主層から異論が出ると思われるが、有効利用を理由とした明渡しについては、それなりに合理性のある考え方であると思われる。
(1990.10.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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