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東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

保証金/敷金トラブル/原状回復/法定更新/立退料/修繕費/適正地代/借地権/譲渡承諾料/建替承諾料/更新料/保証人

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3年間で地代120万円を超える値上げ要求 (静岡・三島市)

2009年10月01日 | 地代の減額(増額)

 静岡県三島市内で寺領地を借地しているNさんとWさんは、住職の奥さんと檀家総代と不動産業者の訪問を受けました。

 寺側の訪問目的は、Nさんらの地代大幅値上げの申入れであり、現行の月額地代6万340円(1坪当り304円)を、①平成21年7月分から7万4480円(1坪当り376円)、②平成22年4月分から8万8610円(1坪当り447円)、③平成23年7月分から10万2740円(1坪当り518円)と3年連続して値上げするとの内容で、3年間の値上げ合計が122万円にもなる大幅値上げでした。

 Nさんは、不動産業者のまくしたてるような話し方に嫌気をさし、一時は値上げに応じようかと思いましたが、この景気の悪いときにと以前に入手し保管していた三島借地借家人組合の学習会案内ビラを思い出し、同借地借家人組合へ相談。

 事務局長の助言を基に、固定資産税等の調査の結果、矛盾点が見つかり、①事業用と居住用の借地面積(198坪)の割合が地主側のこれまでの請求はそれぞれが50%であり、実際は事業用の面積は88坪、居住用の面積が110坪であり、税額負担が違っており、その差額を値下げすること。②事情税23%徴収されるとの説明があったが理解できない。③寺の過去3年間の決算書の開示および固定資産税が下がった分の地代値下げなどをNさんは7月22日地主側へ要求書にまとめ提出しました。

 

全国借地借家人新聞より

 

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地主が公租公課の増額を理由に地代の値上げ要求 (東京・世田谷区)

2009年08月11日 | 地代の減額(増額)

 世田谷区に住むNさんは、10数年前に更新をめぐり更新料の支払い問題で地主から地代の受け取りを拒否されて供託をしていた。

 今年の7月に地主からお知らせと覚書の2通の書類が「土地賃貸借に関する地代の変更のお知らせと覚書」が送られてきた。その内容は、「長期にわたり地代の見直しを行っていませんでしたが、この度公租公課を基に下記の通り本年8月分地代より下記金額に変更を致したく、ご連絡申し上げます。(略)2通にご記名、ご捺印の上ご返送ください」と記載されていた。早速Nさんは組合に相談した。

 組合では賃料の値上げ値下げについては双方の合意が原則であること。一方的な値上げ通告に応じる必要がないことを説明した。また双方が納得をしないならば裁判所に調停の訴えをおこすことが必要であり、最終的には裁判をして、判決を求めることとなると説明した()。

 今回の件については、「一方的な値上げ請求は認めない。値上げ請求の根拠を示しなさい。公租公課が下がったときには地代の値下げをするのか。合意が出来るまでは現行の地代を支払うこと」を書面にして通知することにした。

 組合では「一方的な値上げ通知が増えています。簡単に応じる必要のないことを借地人は理解しておくことが必要です。借地が物納され国が地主の場合、30%近い地代が値下げされている事例もあり、借地人全体でがんばることが必要です」と話した。

 

東京借地借家人新聞より 

 


参考
借地借家法
(地代等増減請求権)
第11条  地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

2  地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3  地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。

 

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更新料拒否すると2倍の地代増額請求 (東京・大田区)

2009年08月10日 | 地代の減額(増額)

 羽田空港に隣接する町に住むAさんは、バス通りに面する宅地約30坪を賃借している。

 契約書がなく家屋の新築時を起点にすると、2回目の更新が法定更新されて9年を経過したこの時期に更新料を地主の代理という弁護士事務所より請求された。

 支払いを拒否すると底地の買取を求められ、経済的に困難と伝えると、月額1万7850円の地代を2倍するという請求を電話にて伝えて来た。

 Aさんは、バス通りに面していることを考慮し、月額750円を増額し月1万8600円の地代を支払うことを書面で代理事務所に通告。

 こんな理不尽な請求は認められないと受領拒否の場合は供託して頑張る決意である

 

東京借地借家人新聞より

 

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地代減額請求調停で10%値下げ (大阪・東大阪市)

2009年03月25日 | 地代の減額(増額)

 大阪府東大阪市末広町の15世帯の借地人は、10年以上も前から地主の請求する地代を2年に1度坪月当たり100円の増額を無条件に応じてきました。

 2008年3月借地人の中で地代があまりにも高いのではないかと調べてみると、地価は下落し、固定資産税は減額され、周辺の地代に比べると倍額以上の高い地代を払い続けていることがわかりました。

 とりわけ、固定資産税が毎年減額されているにもかかわらず2年毎に大幅な値上げは不当で、しかも税額の11倍にもなっていることから地代の値下げを地主へ申し入れ、再三再四話合いで解決するよう申し入れましたが全面的に拒否され、08年9月東大阪簡裁へ減額請求の調停を申し立てました。

 簡裁の窓口では、減額調停の申立てに対して、借地人へ難ぐせをつけなかなか受理しようとしませんでした。

 借地人の役員が中心になり、簡裁へ調停申立ては、借地人の権利だと強く申入れ、10月になって調停が開始されました。

 地主は、不動産鑑定の結果、減額の合理的根拠はないとの減額請求を拒否してきましたが、借地人側は、周辺の地代の実態調査を地図にしたり、固定資産税の負担の推移や地代と税負担の割合、最高裁の継続地代適正な基準の指針(公租公課の2~3倍)などを資料にし、簡裁へ提出しました。

 当初、減額などについて毛頭考えていなかった調停委員は、資料を見るや「これは参考になる」と一変して借地人の減額請求の合理性に理解を示しました。

 2008年12月の第3回調停で「今年1月分から現行地代の1割を減額する」との和解案を示し、2月18日に和解が成立しました。

 この和解によって、15世帯全体で年額約60万円の地代が減額される成果を上げました。また、地代値下げ交渉の中で、更新料支払いの特約を解消し、今後更新料は請求しないとの確認書を地主が提出し大きな成果を上げたと15世帯の借地人は大喜びです。

 役員のTさんは「借地人が団結することによって得られた成果であり、大借連や弁護士さんの支援がなかったらこんな大きな成果をあげることはできなかった」と語っています。

 

全国借地借家人新聞 より

 

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地代の値上げ請求 (静岡・三島市)

2009年03月06日 | 地代の減額(増額)

 三島市内に住むEさんは住宅用地として約40坪の借地をしています。地主の宗教法人より地代の値上げ通知を受け取りました。神社運営の諸経費がかかり、周辺の駐車場の賃料に比べて現状の地代が安いなどが値上げ理由にあげられていました。

 困ったEさんと面会した事務局長は地代は借主と貸主の双方が合意することが基本で一方的値上げ通知では決まらないことを説明しました。その上で地代の基準となる地主のコストは固定資産税・都市計画税で、まず税額を調べることが必要であると話しました。

 事務局長は調査経験がないEさんを伴い市役所の課税課へ出向き税額を調べました。その結果、現状の地代でも税額の2倍以上であることが分かりました。

 Eさんと組合は地代値上げ対応方法についての打合せを持ちました。地主に対して値上げ理由を具体的、定量的に説明を求めることになりました。Eさんを交えて質問状の文案を作成し、2008年12月末に地主に郵送しました。

 従来地代を内金として受取る旨の連絡が地主からあり、引き続き係争中です。

 

全国借地借家人新聞 より

 

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地代値下げ運動がきっかけで親しく近所付合い (大阪・東大阪市)

2009年03月05日 | 地代の減額(増額)

 2007年12月、地主から2008年度の地代改定を請求された大阪府東大阪市の借地人15世帯は、50年余りそこに住んでいる借地人です。

 朝に顔を合わせると挨拶をする程度のお付き合いでしたが、地主から一方的に値上げを請求され、更新料や増改築の承諾料も地主の云うままに支払っていました。Tさんが思い余って近所に呼び掛けて、地主の言いなりになっては今後地代や借地人の権利がどうなるのだろうかとの不安を語り合いました。

 その結果、2008年4月、町会で借地人15世帯で「会」を結成し更新料の請求特約を撤回させ、承諾料も請求しないことを地主に認めさせました。

 そこで、地主の言いなりに支払っていたことから税負担の11倍もの負担と周辺の地代に比較して倍額に近く高いことから、調停を申立て減額させることができる見通しとなりました。

 2009年1月17日、組合長宅で、3役の家族が集まり、手作りの料理で新年会を開きました。組合長は、「今回の借地人が力を合わせ、1年前まではまったくご近所お付き合いもなかったものが、このように親しくお付き合いができるようになったのは地主さんのおかげです。地主さんにありがとうとお礼を申し上げたい」と挨拶をされました。

 新年会は、盛り沢山な美味しい料理と美味しいお酒で前祝いを行い、和気あいあいの宴となりました。

 

全国借地借家人新聞 より

 

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地代値上請求権は5年で消滅時効(大阪地裁)

2009年02月13日 | 地代の減額(増額)

 大阪生駒借地借家人組合の会員は、1970年5月に地主から借地の建売住宅を購入。毎年のように地代の値上げを押しつけられ、1974年4月に思い余って組合を結成し、不当な値上げに反対してきました。

 地主は、1987年元会員の地代を訴訟で確定し、その地代額を組合員へ延滞金という名目で請求してきました。組合が拒否したしたところ、借地人が支払ってきた地代の差額分とその差額分に日歩20銭(年利7.3%)の利息をつけて、多い借地人で3000万円を超える延滞金と利息を請求されました。

 そして、地主は、1998年には、賃料不払いで契約解除とこれまでの延滞金とその利息を支払えとの訴えを大阪地裁へ提訴しました。

 2000年9月20日、大阪地裁は、「元会員の地代が裁判で確定してもその借地人の地代で適正地代として拘束される理由はなく、契約解除とはならない。適正地代は別途確定し、確定地代と従前地代の差額に年1割の利息をつけて5年分を経過した分は時効が成立している。」との判決を下しました。

 当事者の黒瀬豊組合長は、「長年地主から不当な要求を受けていたが、この判決で全面勝利したことで、苦労をしたことが、頑張って良かった。地主の言いなりになっていたら、今頃は住み続けられなかったと思う。」と語っていました。

 

全国借地借家人新聞より 

 



 参考判例  
①地代の増額請求に対して5年の短期消滅時効を認めた事例(東京地裁1985年10月15日判決

②賃料増額請求権が5年の消滅時効により消滅したとされた事例 (名古屋地裁1984年5月15日判決

 

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最高裁の指針を活かし地代減額を (静岡・静岡市)

2008年12月18日 | 地代の減額(増額)

 バブル期に急上昇した地代は、バブル崩壊後も高値安定となっています。一方、借地人にも高齢化の波が押し寄せ、生活を直撃しています。静岡借地借家人組合のYさんもその犠牲者の一人です。

 「生活が苦しくて高い地代が払えない」とのYさんの訴えに組合では、地主側の代理人の弁護士へ「地代減額の交渉に応じてほしい」と申入れ、今年4月に交渉が実現しました。

 地主側の弁護士は、「現行地代は合意賃料、値下げの意思はない、借地の譲渡も認めない、意義があれば法廷で」というものでした。

 組合では、Yさんの近隣で以前地代値上げ反対の運動があったことを知り、情報収集と共に「借地人新聞地域版」を作り配布しました。

 そして、7月には、「地代を最高裁事務総局が示した公租公課の2.5倍に値下げせよ」との調停を静岡簡易裁判所へ申立、9月上旬から調停が始まりました。地主側弁護士は、「若干の値下げには応ずる」と当初のゼロ回答から値下げを認める変化を見せました。

 調停委員の斡旋が数回続き、「坪月50円の値下げなら応ずると地主側から提案されましたが、問題にならないと一蹴したところ、地主側から「地主負担で地代を鑑定したい」と申入れがありました。

 10月開かれた調停では、地主側から「鑑定の結果が遅れているので次回に提出する」との申し出がありました。

 組合側は、近隣で公租公課の2.69倍の地代の実例を示し地代の値下げの実現へ向けて奮闘することにしています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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地代の大幅値上げ請求、調停で頑張る (大阪・堺市)

2008年11月26日 | 地代の減額(増額)

 堺市泉北ニュータウン周辺の市街化調整区域で先祖代々から156坪の土地を借地しているSさんは、敷地内の30坪の物置小屋を改修したところ、地主から無断増改築と難癖をつけられ、承諾料と地代の値上げを請求され話合いが物別れとなりました。

 地主側は、弁護士を代理人につけて無断増改築による承諾料の請求を取下げたものの、これまで年坪当たり3800円の地代を5400円に大幅値上げを請求し調停を申立ててきました。

 その後、Sさんは、インターネットで大借連の存在を知り相談。
 同時に、税負担を調べた結果、現行地代が税負担の7.9倍にもなっており、これにはビックリ。「むしろ地代減額を調停員に伝えたい。ましてや都市計画法では調整区域のため利用制限があり、あまりにもひどい」と怒っています。

 

大借連新聞より

 

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借地人14名が団結し17年間地上げと闘う (大阪・都島区)

2008年11月20日 | 地代の減額(増額)

 大阪市都島区都島北通り2丁目の借地人Hさん等14名、O工務店に地上げされ、大幅な地代値上げを要求され、17年越しの係争中です。

 平成3年には、角地にしぼって地代の値上げで提訴してきました。

 都島借地借家人組合に入会している会員が裁判費用を分担し、他の地主の地代を調査したり、鑑定士の現地調査に立ち会うなど心を合わせて闘って来ました。その結果、多少は地代の値上げを認めたものの和解が成立しました。

 この和解によって、地主側は、Hさん以外の借地人にも和解条件に従って値上げに応ずるよう要求してきましたが、これを拒否して相当と考える金額を加えて引き続き供託しています。

 この借地人の班は、現在まで17年間団結を崩さず都島借地借家人組合の運動の核の役割をはたしている一つになっています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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地代は税負担の3倍以内と主張し控訴審へ (兵庫・尼崎市)

2008年11月12日 | 地代の減額(増額)

 2008年8月20日、尼崎簡易裁判所は、地代減額請求事件で、借地人が減額請求の正当性の理由として、最高裁の継続賃料(地代)は「公租公課の2~3倍」が適正額との見解を示した指針に対して「相当賃料算定の一事情にとどまるものである」との判断を示し、尼崎簡裁が指定した不動産鑑定士による若干の減額を示した鑑定結果をもって適正地代であるとの判決を下しました。

 兵庫県尼崎借地借家人組合の借地人Tさんは、54.9㎡の土地を借地し、平成12年5月に合意した月額地代3万2800円(当時公租公課倍率7.9倍・平成19年度11.2倍)を、公租公課倍率が上昇したことから考えて、平成19年5月分より1万1629円が相当であると減額請求を申立てました。

 一方、地主側は毎年月額1000円値上げすることが適正額であったと主張し、4万1700円増額の反訴をしてきました。

 尼崎簡易裁判所は、月額地代2万8700円が相当額とした鑑定額通りの判決を言い渡しました。

 Tさんは、この判決に対して12.5%の減額であったが、公租公課倍率は9.8倍であり適正倍率からみて不当に高く不十分であると主張し、2008年10月7日神戸地裁尼崎支部へ控訴しました。

 Tさんは、不動産鑑定基準による算定された地代は、従前地代を基準にして算定さており従前地代が不適正であれば鑑定される地代も不適正であると主張し、あくまで最高裁の指針を反映した判決を求めています。

 

全国借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 地主が新築したビルに再入居する場合地代を継続賃料で算定した事例

2008年10月22日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介

 地主のビル建築のために、土地を明渡した借地人が、新ビルに区分所有者としてはいる場合の地代は継続賃料として算定すべきとされた事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1178号)

 (事実関係)
 4人の借地人は古くから、それぞれ借地していたが、地主は4つの借地をまとめて再開発を計画して交渉し、昭和54年4月に渋谷簡易裁判所、「借地人らは、各自の建物を撤去して、一時立退く。地主は、『並木橋ビル』という自分が建築するビルの一部を、区分所有として各借地人に再入居させる」即決和解をした。

 土地は、ビル区分所有を目的とする借地権であることが合意されたが、地代については、入居後に協議するとされた。ところがその話し合いが延び延びにされたため、借地人たちは、昭和56年11月、地代確定調停を申立てたが、話しがつかず、本裁判となった。

 裁判で問題になったことは、
(1)本件は地代増額訴訟ではない。

 そもそも、裁判所に地代を決める権限があるのかどうか。
(2)借地人は、地代は継続地代(坪670円)であるべきと主張し、地主は、新規賃料(坪2491円)のはずと主張した。

 (判決要旨) 
 「借地人と地主との間には、区分所有建物を目的とする土地賃貸借の合意は成立しているものの、賃料額は後日協議により決定することとされたままで、その後当事者間で合意が成立しない状態にあることが認められる。このような場合、民法388条但書を類推適用して、裁判所は、当事者の請求により適正な賃料額を確定した上で、それに基づいて当事者間の権利関係を判断することができるものと解される。」

 「昭和54年4月渋谷簡裁での即決和解が成立したときまでに、旧木造建物の所有を目的とする本件土地の賃借権(旧賃借権)を、その同一性を維持したまま並木橋ビル内の建物部分の区分所有を目的とする賃借権(新賃借権)に変更することを合意した事実を認めることができる。もっとも、旧賃借権と新賃借権とは、地主主張のように、設定契約も、対象となっている土地の範囲も異なっているが、それは、即決和解が成立し、借地人らの同意の下に旧木造建物の取壊しと並木橋ビルの新築が行われた経緯に照らして当然であるから、右認定を左右するものではない。」

 (解説)
 土地と建物を所有する人が、その1つだけに抵当権をつけて競売されてしまったとき、自動的に地上権が設定される制度(法定地上権)があり、そのときの地代は、裁判所が決める、というのが、判決のいう民法388条但書である。

 地主、家主が新築するビルに賃借人が再入居するというケースで、いつも問題になるのが、新しい賃借条件である。それが継続賃料でよいとした本判決は参考になると思う。

(1986.06.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 固定資産税額の3倍の地代改定特約違反でも契約解除が否定された事例

2008年10月21日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介

 地代を固定資産税の3倍とする自動改定特約違反があっても契約解除が否定された事例 (東京地裁平成6年11月28日判決、判例タイムズ886号)


 (事案)
 借地人は昭和58年3月建物所有を目的で借地した。借地契約には、地代は固定資産税の3倍とするという特約があった。借地人は昭和62年度分までは右特約どおりの地代を支払っていたが、昭和63年以降は特約で計算した賃料を支払わず、相当と認める賃料のみ支払っていた。地主は平成5年5月、賃料不払を理由に借地契約を解除して、土地明渡を求めた。借地人は、地代の自動改定特約は借地法に違反すると争った。


 (判決要旨)
 本件賃料自動改定特約は固定資産税の年額の3倍の12分の1を月額賃料としている。旧借地法12条が賃料増減額の要件として、「土地に対する租税その他の公課の増減」を挙げていること、及び従前土地の年額賃料は概ね固定資産税額ないし公租公課の2ないし3倍を1つの目安とする考えも相当行われていたことからして、定め方自体不合理であるとはいえない。

 本件特約による年額賃金は、
 昭和60年で16.3%増、
 昭和61年で6.3%増、
 昭和63年で397.6%増、
 平成元年で20.12%増、
 平成2年12.7%増、
 平成3年で22.3%増、
 平成4年で22.7増、
 平成5年で16.5%増となる。

 右賃料のうち昭和63年の増加は、一挙に約4倍になっている。しかし、右増加は、賃借人が借地上の建物を商業用のビルに建て替えたために小規模住宅用地に対する課税標準の特例が受けられなくなった結果と認められ、そのことは賃借人も予想すべきであるから、当事者の予測を超えた異常事態のため賃料が上昇したとは言えないので、本件改定特約が事情変更によって無効になったとまでは言えない。

 本件特約による賃料が通常の継続賃料としては賃借人に相当過酷な結果になっているが、賃借人は本件借地上の商業ビルを賃貸して多額の賃料収入を得ていることを勘案すると著しく不利益な改定特約とまでは言えない。

 賃借人は、本件特約賃料を支払わないが、従前賃料の2倍を支払い、その後も賃料増額と本件特約の改定を求める話し合いを求めた。しかし、賃貸人から具体的な対応もないまま、本件賃貸借契約を解除したものであるから、賃借人の賃料不払については、未だに信頼関係を破壊するに至らない特段の事情があり、本件解除は無効である。


 (説明)
 公租公課の3倍を地代とする地代改定特約の効力が争われた。判決は、借地人が堅固建物に建替えた結果税額が上昇した点、商業ビルとして賃貸している点をとらえて賃料改定特約の有効性を認めた。しかし、そのような事情がないとき、地代増額特約が否定されることがあるという余地を残した判決となっている。

(1996.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例】 適正地代を争った事例 (名古屋簡裁 平成19年3月30日判決)

2008年04月28日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介


 原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案


      名 古 屋 簡 易 裁 判 所 平成19年3月30日判決言渡し


      平成18年(ハ)第4095号 賃料確認等請求事件

 


主       文

 

1 原告と被告との間で,別紙一物件目録記載の土地についての賃貸借契約における賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万8000円, 同年8月1日以降は月額金2万0000円であることを確認する。

2 被告は,原告に対し,金16万0000円及びその内金である別紙二未払賃料一覧表左欄記載の各金員に対し,それぞれ対応する右欄記載の各期日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。

5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。


事 実 及 び 理 由

第1 請求
1 原告と被告との間で,原告が被告に賃貸している別紙一物件目録記載の土地の賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万9510円,同年8月1日以降は月額金2万2024円であることを確認する。 

2 被告は,原告に対し,金21万8954円及び別紙三未払賃料損害金一覧表記載の各未払賃料に対する各起算日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は,原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案である。


2 争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨で認められる事実
(1 ) 訴外亡Aは,訴外亡Bとの間で,昭和38年10月1日,別紙一物件目録記載の土地を木造建物所有の目的で,期間の定めなく,賃料月額金2200円(当初賃料はその後逐次改定,翌月分を当月30日払いの約定は,その後当月分を当月払い状態が続いたが,約定は当初のとおり。 )で賃貸借契約を締結し,同日,同Bに対し上記土地を引き渡した。

(2 ) 訴外亡Aは昭和53年3月14日死亡し,原告は相続により上記土地所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。他方,訴外亡Bは平成15年5月23日死亡し,被告は相続により上記建物所有権を取得し,本件土地の賃借権を承継取得した。

(3 ) 本件土地の賃料は,平成15年10月当時,月額金1万4000円であったが,長年低額に据え置かれ,租税等の増加や地価の上昇等近隣地代との均衡を欠き不相当となったことから,原告は被告に対し,平成15年10月16日,口頭で本件土地の賃料を平成16年1月1日から月額金4万円ないし5万円に増額 (その後月額金1万9510円に減縮) するとの意思表示をし,更に,平成18年7月29日到達の書面で本件土地の賃料を平成18年8月1日から月額金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)に増額するとの意思表示をした。

(4 ) 被告は,原告との話合いでは賃料値上げ額に合意できず,平成16年1月以降,引続き従前の賃料月額金1万4000円を現実に提供し,原告は賃料内金として受領していたが,同年12月末頃,原告に賃料持参の際,領収書交付を求めたことから原告と諍いとなり,被告は同年12月分賃料から以後
毎月,月額金1万4000円を弁済供託し,本件土地を賃借している。


3  争点

 平成16年1月1日から平成18年7月31日まで及び同年8月1日以降の本件土地の適正な改定継続賃料はいくらか。


第3  争点に関する判断
本件土地の適正な賃料額

(1 )  改定継続賃料の算定法式としては,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法が存するところ,鑑定の結果によれば,本件土地の賃料について,差額配分法,利回り法及びスライド法の3方式を併用し,各方式による平成16年1月1日時点での試算賃料(差額配分法月額2万2449円,利回り法月額1万3272円,スライド法月額1万3994円)及び平成18年8月1日時点の試算賃料(差額配分法月額2万6016円,利回り法月額1万3839円,スライド法月額1万4240円)を比較考量し,3方式の長所短所を考慮し諸要因による調整として4:1:1の加重平均により算出すると,平成16年1月1日時点の適正な改定継続賃料は月額金1万9510円,平成18年8月1日時点の適正な改訂継続賃料は月額金2万2024円が相当と結論付けており,鑑定内容における各資料の数値の採用や計算結果も適正なものと認められ,各試算資料の数値調整としての加重平均方式も, 諸要因の調整割合の評価は別として合理的なものと認めることができる。

(2 )  被告は, 本件鑑定結果が 賃貸人側に有利な差額配分法を過度に重視して,差額配分法,利回り法,スライド法の3方式による各試算資料の加重平均を4:1:1で改定継続賃料を算出するのは不合理であり,仮に不合理でないとしても,本件事案の和解案として裁判所から提示された平成16年1月1日時点で月額金1万7400円,平成18年8月1日時点で月額1万9500円の金額と比較しても増加額が大きく,合理的とみなされる複数の適正地代に関する意見があればその結果等を平均調整するのが相当であり,被告が来年以降,定年退職による収入減で家族を扶養する経済環境にあることも斟酌されたいと主張するが,本件審理中の和解案との比較は,和解提示額が根拠に基づく計算結果であったとしても鑑定結果と平均調整することは相当でなく,被告の今後の経済状況の斟酌も事情として理解はできても,本件の適正改定継続賃料を算定する要因として考慮するのは相当でない。

(3 )  本件で,適正な改定継続賃料を算定するには,鑑定の結果も踏まえ,本件賃貸借契約の経緯や当事者間の個別事情も総合的に斟酌する必要があるところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の貸借は,昭和23年頃の使用貸借で始まったが,昭和38年頃,訴外亡Bが木造建物を新築した際,賃貸借契約に改められ,以後,昭和40年代後半から50年代前半の二度に亘る地価高騰期や平成初頭のインフレによる地価高騰期,その後の不況やデフレによる地価下落期等の大きな価格変動にも,期間の長短はあるものの当時1000円刻みによる賃料増加に止められ,訴外亡B生存中は比較的低額に抑えられてきたものの,被告が賃借人となった後は5ヶ月程で,直近の改定時期から1年後の大幅な増額改定要求を受けたこと,本件土地は市街地の住宅地域で最有効使用も住居等であること,本件現行賃料が,鑑定結果では,本件土地の経済的価値に基づく理論上の適正賃料とされる差額配分法による試算資料数値と大きく乖離していること等が認められ,鑑定資料の3方式による試算資料の加重平均による数値調整をするに当たっては,経済的価値に即応した性質の強い差額配分法を加重する必要性は認められるものの,現行賃料を基準要因の一つとする利回り法やスライド法による数値とも応分の均衡を保つ必要性も認められ,3方式の加重平均は2:1:1で算出した額が相当と認められることから ,適正な改定継続賃料 (100円以下切捨て) は,平成16年1月1日時点は月額金1万8000円,平成18年8月1日時点は月額金2万0000円であると認めることができる。

2  以上によれば,原告の被告に対する本訴請求は,主文認容の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。


                    名 古 屋 簡 易 裁 判 所

                              裁 判 官   渡 邊   直 紀

 


       別紙一
                        物 件 目 録
           土地
           名古屋市C区DE丁目所 在
           地 番 F番
           地 目 宅地
           地 積 104.16平方メートル

 


 

 

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【判例】 *地代等自動改定特約と借地借家法11条1項

2008年02月22日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介


 平成15年06月12日 最高裁 第一小法廷判決 平成14年(受)第689号 土地賃料改定請求控訴,同附帯控訴事件

(要旨)
 地代等自動改定特約と借地借家法11条1項

(内容)
件名   土地賃料改定請求控訴,同附帯控訴事件 (最高裁判所 平成14年(受)第689号 平成15年06月12日 第一小法廷判決 一部破棄自判,一部破棄差戻し)
原審   東京高等裁判所 (平成13年(ネ)第3233号、3814号)

 

                     主    文

 原判決を破棄する。
 被上告人の請求についての本件控訴を棄却する。
 上告人の請求に関する部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。
 第2項の部分に関する控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

 


                    理    由

 上告代理人遠藤光男,同高須順一,同高林良男の上告受理申立て理由について

 1 本件は,本件各土地を被上告人から賃借した上告人が,被上告人に対し,地代減額請求により減額された地代の額の確認を求め,他方,被上告人が,上告人に対し,地代自動増額改定特約によって増額された地代の額の確認を求める事案である。


 2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

 (1) 上告人は,大規模小売店舗用建物を建設して株式会社ダイエーの店舗を誘致することを計画し,昭和62年7月1日,その敷地の一部として,被上告人との間において,被上告人の所有する本件各土地を賃借期間を同月20日から35年間として借り受ける旨の本件賃貸借契約を締結した。

 (2) 被上告人及び上告人は,本件賃貸借契約を締結するに際し,被上告人の税務上の負担を考慮して,権利金や敷金の授受をせず,本件各土地の地代については,昭和62年7月20日から上告人が本件各土地上に建築する建物を株式会社ダイエーに賃貸してその賃料を受領するまでの間は月額249万2900円とし,それ以降本件賃貸借契約の期間が満了するまでの間は月額633万1666円(本件各土地の価格を1坪当たり500万円と評価し,その8%相当額の12分の1に当たる金額)とすることを合意するとともに,「但し,本賃料は3年毎に見直すこととし,第1回目の見直し時は当初賃料の15%増,次回以降は3年毎に10%増額する。」という内容の本件増額特約を合意し,さらに,これらの合意につき,「但し,物価の変動,土地,建物に対する公租公課の増減,その他経済状態の変化により甲(被上告人)・乙(上告人)が別途協議するものとする。」という内容の本件別途協議条項を加えた。

 (3) 本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は,いわゆるバブル経済の崩壊前であって,本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていた。したがって,当事者双方は,本件賃貸借契約とともに本件増額特約を締結した際,本件増額特約によって,その後の地代の上昇を一定の割合に固定して,地代をめぐる紛争の発生を防止し,企業としての経済活動に資するものにしようとしたものであった。

 (4) ところが,本件各土地の1㎡当たりの価格は,昭和62年7月1日には345万円であったところ,平成3年7月1日には367万円に上昇したものの,平成6年7月1日には202万円に下落し,さらに,平成9年7月1日には126万円に下落した。

 (5) 上告人は,被上告人に対し,前記約定に従って,昭和62年7月20日から昭和63年6月30日までの間は,月額249万2900円の地代を支払い,上告人が株式会社ダイエーより建物賃料を受領した同年7月1日以降は,月額633万1666円の地代を支払った。

 (6) その後,本件各土地の地代月額は,本件増額特約に従って,3年後の平成3年7月1日には15%増額して728万1416円に改定され,さらに,3年後の平成6年7月1日には10%増額して800万9557円に改定され,上告人は,これらの地代を被上告人に対して支払った。
 しかし,その3年後の平成9年7月1日には,上告人は,地価の下落を考慮すると地代を更に10%増額するのはもはや不合理であると判断し,同日以降も,被上告人に対し,従前どおりの地代(月額800万9557円)の支払を続け,被上告人も特段の異議を述べなかった。

 (7) さらに,上告人は,被上告人に対し,平成9年12月24日,本件各土地の地代を20%減額して月額640万7646円とするよう請求した。しかし,被上告人は,これを拒否した。

 (8) 他方,被上告人は,上告人に対し,平成10年10月12日ころ,平成9年7月1日以降の本件各土地の地代は従前の地代である月額800万9557円を10%増額した月額881万0512円になったので,その差額分(15か月分で合計1201万4325円)を至急支払うよう催告した。しかし,上告人は,これを拒否し,かえって,平成10年12月分からは,従前の地代を20%減額した額を本件各土地の地代として被上告人に支払うようになった。


 3 本件において,上告人は,被上告人に対し,本件各土地の地代が平成9年12月25日以降月額640万7646円であることの確認を求め,他方,被上告人は,上告人に対し,本件各土地の地代が平成9年7月1日以降月額881万0512円であることの確認を求めている。


 4 前記事実関係の下において,第1審は,上告人の請求を一部認容し,被上告人の請求を棄却したが,これに対して,被上告人が控訴し,上告人が附帯控訴したところ,原審は,次のとおり判断して,被上告人の控訴に基づき,第1審判決を変更して,上告人の請求を棄却し,被上告人の請求を認容するとともに,上告人の附帯控訴を棄却した。

 (1) 本件増額特約は,昭和63年7月1日から3年ごとに本件各土地の地代を一定の割合で自動的に増額させる趣旨の約定であり,本件別途協議条項は,そのような地代自動増額改定特約を適用すると,同条項に掲げる経済状態の変化等により,本件各土地の地代が著しく不相当となる(借地借家法11条1項にいう「不相当となったとき」では足りない。)ときに,その特約の効力を失わせ,まず当事者双方の協議により,最終的には裁判の確定により,相当な地代の額を定めることとした約定であると解すべきである。

 (2)ア 本件各土地の価格は,昭和62年7月1日以降,平成3年ころまでは上昇したものの,その後は下落を続けている。

 イ しかしながら,総理府統計局による消費者物価指数(全国総合平均)は,昭和62年度を100とすると,平成3年度が109.66に,平成6年度が113.69に,平成9年度が115.75に,それぞれ上昇している。また,日本銀行調査統計局による卸売物価指数は,昭和62年度を100とすると,平成3年度が104,平成6年度が100,平成9年度が98であり,それほど大幅には変動していない。また,本件各土地の公租公課(固定資産税・都市計画税)は,昭和62年7月1日には1㎡当たり6000円であったのが,平成3年7月1日には同6740円に,平成6年7月1日には同8090円に,それぞれ上昇しており,本件各土地のうち面積が最も広い地番141番51の土地の固定資産税・都市計画税の合計は,平成6年度には84万4103円であったのが,平成9年度には117万4570円となり,約40%も上昇している。さらに,本件各土地の平成9年7月1日の時点における継続地代の適正額についての第1審の鑑定結果は月額785万8000円であり,本件増額特約を適用した地代の月額881万0512円は,その1.12倍にとどまる。

 ウ 以上の事実を考慮すると,平成9年7月1日時点において,本件各土地の地代が著しく不相当になったとまではいえないから,本件増額特約が失効したと断じることはできない。


 (3) そうすると,本件増額特約に基づき,平成9年7月1日以降の本件各土地の地代は月額881万0512円(従前の月額800万9557円を10%増額した金額)に増額されたと認めるのが相当である。


 (4) 本件増額特約のような地代自動増額改定特約については,借地借家法11条1項所定の諸事由,請求の当時の経済事情及び従来の賃貸借関係その他諸般の事情に照らし著しく不相当ということができない限り,有効として扱うのが相当であるところ,その反面として,同項に基づく地代増減請求をすることはできず,その限度で,当事者双方の意思表示によって成立した合意の効力が同項に基づく当事者の一方の意思表示の効力に優先すると解すべきである。


 (5) 平成9年12月24日の時点において,いまだ,本件増額特約そのものをもって著しく不相当ということはできないし,これを適用すると著しく不相当ということもできない(したがって,本件別途協議条項を適用する余地もない。)から,上告人は,本件各土地につき,借地借家法11条1項に基づく地代減額請求をすることはできない。


 5 しかし,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約の当事者は,従前の地代等が,土地に対する租税その他の公課の増減により,土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により,又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは,借地借家法11条1項の定めるところにより,地代等の増減請求権を行使することができる。これは,長期的,継続的な借地関係では,一度約定された地代等が経済事情の変動等により不相当となることも予想されるので,公平の観点から,当事者がその変化に応じて地代等の増減を請求できるようにしたものと解するのが相当である。この規定は,地代等不増額の特約がある場合を除き,契約の条件にかかわらず,地代等増減請求権を行使できるとしているのであるから,強行法規としての実質を持つものである(最高裁昭和28年(オ)第861号同31年5月15日第三小法廷判決・民集10巻5号496頁,最高裁昭和54年(オ)第593号同56年4月20日第二小法廷判決・民集35巻3号656頁参照)。

 (2) 他方,地代等の額の決定は,本来当事者の自由な合意にゆだねられているのであるから,当事者は,将来の地代等の額をあらかじめ定める内容の特約を締結することもできるというべきである。そして,地代等改定をめぐる協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため,一定の基準に基づいて将来の地代等を自動的に決定していくという地代等自動改定特約についても,基本的には同様に考えることができる。

 (3) そして,地代等自動改定特約は,その地代等改定基準が借地借家法11条1項の規定する経済事情の変動等を示す指標に基づく相当なものである場合には,その効力を認めることができる。
 しかし,当初は効力が認められるべきであった地代等自動改定特約であっても,その地代等改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者はもはや同特約に拘束されず,これを適用して地代等改定の効果が生ずるとすることはできない。また,このような事情の下においては,当事者は,同項に基づく地代等増減請求権の行使を同特約によって妨げられるものではない。

 (4) これを本件についてみると,本件各土地の地代がもともと本件各土地の価格の8%相当額の12分の1として定められたこと,また,本件賃貸借契約が締結された昭和62年7月当時は,いわゆるバブル経済の崩壊前であって,本件各土地を含む東京都23区内の土地の価格は急激な上昇を続けていたことを併せて考えると,土地の価格が将来的にも大幅な上昇を続けると見込まれるような経済情勢の下で,時の経過に従って地代の額が上昇していくことを前提として,3年ごとに地代を10%増額するなどの内容を定めた本件増額特約は,そのような経済情勢の下においては,相当な地代改定基準を定めたものとして,その効力を否定することはできない。しかし,土地の価格の動向が下落に転じた後の時点においては,上記の地代改定基準を定めるに当たって基礎となっていた事情が失われることにより,本件増額特約によって地代の額を定めることは,借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなったというべきである。したがって,土地の価格の動向が既に下落に転じ,当初の半額以下になった平成9年7月1日の時点においては,本件増額特約の適用を争う上告人は,もはや同特約に拘束されず,これを適用して地代増額の効果が生じたということはできない。また,このような事情の下では,同年12月24日の時点において,上告人は,借地借家法11条1項に基づく地代減額請求権を行使することに妨げはないものというべきである。


 6 以上のとおり,平成9年7月1日の時点で本件増額特約が適用されることによって増額された地代の額の確認を求める被上告人の上告人に対する請求は理由がなく,また,同年12月24日の時点で本件増額特約が適用されるべきものであることを理由に上告人の地代減額請求権の行使が制限されるということはできず,論旨は理由がある。これと異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そこで,原判決を破棄し,被上告人の上告人に対する請求についての本件控訴を棄却するとともに,上告人の被上告人に対する請求について,上告人が地代減額請求をした平成9年12月24日の時点における本件各土地の相当な地代の額について,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。


 (裁判長裁判官 甲斐中 辰夫 裁判官 深澤武久 裁判官 横尾和子 裁判官 泉 治 裁判官 島田仁郎)

 

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