At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Step / Nalu!

2013-03-12 | Hawaii
そしてこちらが1991年にリリースされた彼らの3rdアルバム。前作までとは異なり当初からCDで発売されたと思われる作品で、リリース元も前作までのKahale MusicからMr.B Recordsなるレーベルへ変更となっています。2ndの紹介でも書いたとおりウィリー・ソロモンは本作録音時点で既に脱退しているため、1stと同じくルパートとウェイマウスのデュオ体制にて制作されていますが、今回は比較的予算があったのか、バックミュージシャンの参加人数で言うならば彼らの作品中ナンバーワン。アルバム全体を包む空気感は1stリリース時から変わっていないものの、サウンドメイクという意味では時代の流れと共に徐々に洗練されてきており、そうした意味では彼らの作品中もっともコンテンポラリー度が高いのが本作ということになります。収録曲ごとに見ていくと、少し切ないメロディーが印象的なM-1のLocked Into Your Loveがまず名曲。ボサノバ調のミディアムなAORですが、アコギとピアノとキーボードで紡がれる陰のある音作りが堪りません。間奏でのサックスの音色も良い雰囲気です。そしてなんといっても絶品なのがM-7のHad To Run。イントロのメロウなサックス一発でハワイアンAOR好きはまず間違いなく悶絶なキラーナンバーです。知らない人が聴いたらマッキー・フェアリーの曲だと言っても信じてしまうくらいアーバンリゾート度が高い一曲で、自作コンピでも隠し球として入れてみました。良い意味で90年代のサウンドとは思えないチープな音作りとなっており、70年代の曲と混ぜて流しても全く違和感がないのも高得点。ハワイの90年代コンテンポラリーには隠れ名曲がたくさん眠っていますが、ここまで70年代後半の雰囲気をそのままトレースしている曲はちょっと他に思いつきません。いわゆるアイランドメロウな雰囲気が好きな方なら、正直この一曲のためだけに買っても損がないと断言出来る作品。CDオンリーでのリリースということもあり、コンテンポラリー・ハワイアンに詳しい人はともかく、普通のフリーソウル~AORファンには今のところほぼ無視されているアルバムなので、他の人と差を付けたい人には是非お勧めの一枚です。ちなみに有難いことに彼らの作品の中でもっとも入手が容易なのが本作。もちろん普通に転がっているというような類のアルバムではありませんが、気合を入れて探せばそう遠くなく手にすることが出来ると思います。
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In The City / Nalu!

2013-03-12 | Hawaii
前作In Your Hawaiian Wayと同じく1989年にリリースされた彼らの2ndアルバム。本作も1st同様オリジナルリリースがテープで後にKahale MusicからCDで再発というパターンになっています。ジャケット写真を見ても分かる通りメンバーが一人増えており、どうやらWillie Solomon IIIなる人物が参加しているようですが、それ以上のクレジットがないため、このウィリーが何のパートをやっているかは不明。おまけに次作ではまた離脱しているので、どのような経緯で参加したのかも良く分かりません。ただ三人体制になったとは言え、本作も基本的には1stと同様の音作り。相変わらず適度なホームメイド感覚でカラパナ・フォロワー的サウンドをやっています。サウンドメイクが同年代の他国楽曲に比べチープなのは、この手のマイナー系コンテンポラリー・ハワイアン全体に言えることですが、このグループの場合はそれを完全に逆手にとっているのが特徴。80年代後半~90年頃と言うと、いわゆる打ち込みサウンドが一般に浸透してきた時期で、クリスタルな時代の雰囲気と共にポピュラー音楽全体が変に過剰装飾していましたが、彼らはそうした時代背景に流されず、あくまでマイペースにアコースティックなグッドミュージックを追求しているので、逆に今聴いても古臭さを感じないエヴァーグリーンな空気感を作り出すことに成功しています。収録曲個別で見ていくと、本作ではM-8のCoffee In My Teaがアタマ一つ飛び抜けた完成度。ルパート本人の甘いヴォーカルも手伝い、マッキー・フェアリー在籍時のカラパナそっくりなこみ上げ系アイランドメロウに仕上がっていて、そうした雰囲気が好きな人はまずハマるはずです。国内ポニーキャニオンから出ていた90年代カラパナ作品が過剰装飾に走ってしまったのとは対照的に、70年代のカラパナサウンドをよりナチュラルな方向に正統進化させた名曲。その他の曲では、メロウなサックスがリードするM-2のLove's Lightもコンテンポラリー系で良い感じです。個人的な経験から言うと、彼らのアルバムの中ではもっとも見かけない作品ですが、気になる人には是非聴いてもらいたい一枚。午後のカフェで流すコンテンポラリー・ハワイアン作品としてもぴったりな一枚だと思います。
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