(前回からの続き)
これまで綴ってきたように、米FRBの金融引き締め路線の行方は、それによって引き起こされる金利の上昇が、借金消費にどっぷり依存してきた米実体経済に与える負のインパクトがデカ過ぎるがゆえに、きわめて不透明と指摘せざるを得ない―――こう考える次第です。
そして・・・FRBをさらに悩ませるのが、ドナルド・トランプ新政権が予定している税制改革&財政出動政策。現時点ではその内容等ははっきりしないものの、昨年の大統領選における同氏の主張から推測すると、これらが実行されれば米連邦政府の歳入減・歳出増は必至で、同国の財政収支はさらに悪化、すなわちFRB(の金融政策)のコントロールが及ばない長期金利がその思惑を超えて上がってしまうおそれが高いわけで・・・
こちらの記事を含めて何度か書いているように、いまや中国も、そして産油国にも、アメリカにおカネを貸す、つまり米国債を買い増すゆとりはありません。中国などは逆に売らざるを得ないくらいです(って、その理由の9割が人民元防衛だとしても、1割は「戦略的な」売りでしょうが・・・?)。そんななかで上記のような放漫財政政策が実行されたら、米株式&債券市場、そして不動産市場がどうなるか、ちょっと考えただけで簡単に想像がつきそうなもの。繰り返しますが中銀(FRB)が金融政策で操作できるのは短期金利(期間1年未満)くらいまでですからね・・・(?)
・・・とまあ、これくらいのことはジャネット・イエレンFRB議長を含むFRB幹部各位は重々承知と推察しますが、その一方、本稿一回目でご紹介したFOMC直後の同議長の自信に満ちた(?)佇まいとご発言に接すると、ホント失礼で余計なことながら、少々勘違いをされているのでは?と心配になったりするわけです。
で、その勘違いとは2つ。一つ目は米経済情勢に対する見立て。わたしは上記で勝手にFRBは本音と建て前を使い分けていると書きましたが、じつは本心から同経済が本格的に回復したとみているのではないか・・・って、それはちょっと・・・ね。そして二つ目は・・・FRB自身に金利―――長期金利のコントロールができるという思い込みがあるのではなかろうか、ということ。これ、どう考えても無理でしょう。トランプ政権が米国債をドバドバ振り出し、中国がドバドバ売ったら、利上げどころではなくなるわけで・・・
・・・おっと、制御不能と思ったらありましたね米長期金利を上げない手がたった一つだけ、FRBには。このあたりの結論はいつも記していることと一緒、「QEフォーエバー」(QE4ever)ですよ・・・?
(「米FRB『景気が回復で利上げ』の勘違い」おわり)
金融・投資(全般) ブログランキングへ