米ドルが基軸通貨・・・というよりは「石油交換券」(私的定義)であることがあらためて実感される出来事だと思います。ですが、これをひとつのきっかけに、石油売買においてドル以外の通貨がますます使われるようになっていくかも。そうなったら、ドルは・・・
米ドナルド・トランプ政権は今月5日、イラン核合意(2015年7月に同国と米英独仏中ロが合意したもの)からの離脱にともなうイランに対する経済制裁の第2弾を発動しました。これはイランの生命線である石油輸出を妨害することでダメージを与え、(アメリカによれば)同国が進めているとされる核開発を断念させようというもの。アメリカは、イランが外国との石油売買に関連する金融取引ができないよう、国際銀行間通信協会(SWIFT:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)に対して、アメリカが制裁の対象にしたイランの金融機関向けのサービスを止めるよう求め、実際にSWIFTは5日、これに従って同国の銀行の一部に対してアクセスを停止すると発表しています。
Wikipedia等によれば、SWIFTとは、世界各地の金融機関同士のあらゆる通信にクラウドサービスを提供する非上場の株式会社で、現在、200以上の国や地域で1万社以上の金融機関が参加し、国家間の決済に不可欠な通信ネットワークを提供するものです。イランとの各種取引を行う企業はこのSWIFTを利用しているわけですが、アメリカがこれをストップせよ!といってきたことになります。これに反して同取引を続けることもできそうですが、そうするとその企業はアメリカでの商売が許されなくなったり、制裁金を課せられたりするリスクが生じるもよう。となるのはイヤだから、企業の多くはイランとの取引は手控えよう、となってイランは石油輸出や外貨獲得等ができなくなり、窮地に、というのがトランプ政権の目論見みたい・・・
とまあ、イランが核開発を継続しているという確たる証拠が乏しい(?)なか、イランはもちろん欧州各国や日本などといった同国の貿易相手国にとっても、このアメリカの措置は何とも理不尽に感じられるところ。これでは何のための上記核合意だったのか、となってしまいます。けれど、これに逆らってイランとの付き合いをやめないと今度はアメリカ市場から追い出されかねないわけで、結局は大半の企業等がSWIFTの利用を断念することになるのでしょう・・・(?)
他方、これを契機に欧州ではアメリカから独立した国際決済システムを構築する構想が浮上しています。これはEUが特別目的事業体(SPV)を設立し、イランが石油と外国の輸入品とを交換できるバーター取引ができるようにしようとするものです。具体的には、イランの石油を輸入したA国の企業が、イランに車を輸出したB国の企業との間で資金の精算を行うことでイランとの間でおカネのやり取りは発生させないようにする、つまり米ドルを石油取引の決済通貨に使わないという仕組みになります・・・