(前回からの続き)
前述のように、このたびの日銀総裁人事をめぐる動きからは、本邦政府のスタンスが現行金融政策の相当な転換・・・で結果として対ドル為替レートが円安から円高になっていくことを受容する方向に変わりつつある様子も窺えます(?)。で、それが何を意識したものか、といえば日本・・・ではけっしてなくアメリカでしょう、やはり・・・
本ブログでは以前から、日銀の現行政策「異次元緩和」(長短金利操作付き量的質的金融緩和)の目的は「表向きの目的」「本当の目的」「本当に本当の目的」の三段構えになっていると指摘し続けてきました。となると、ここで最重要なのは当然「本当に本当の目的」になります。これは、毎度の繰り返しになりますが、「本当の目的」に基づいて支えてあげている・・・かのように思わせてインフレを喚起させて自壊に追い込むこと・・・ってアメリカを、でしたね・・・
で、アメリカがそんな目論見のとおりになってきた、すなわち、かの国はついに真性インフレ状態(実質マイナス金利[長期金利-インフレ率<0]から脱却できず、その状態が永続すること)に(遅くとも2020年の夏あたりには)陥ったわけです。ここは現在進行中(で間もなく終了[せざるを得ない]見込み?)の米FRBの利上げによっても実質マイナス金利状態がちっとも解消されないところにも現れています。さすがにそこまで念入りに見極めれば、やはりアメリカは「仕上がった」(もう二度とインフレの鎮圧はできない)と見切っていい頃合いでしょう・・・
となってくると、上記政策の(本当に本当の)所期の目的はみごと(?)達せられた、ということで、同政策はさっさと手仕舞って「出口戦略」へ、となるのが自然な流れというもの。ちなみに・・・金融用語的に出口戦略とは金融緩和を終えて利上げ等を進めることをいいますが、ここでいう出口戦略とは・・・アメリカのインフレ堕ちの巻き添えをわたしたちが食らうことのないように戦略的に動くこと・・・といった感じになります。
そのために、まずは、かの国と同様のインフレ、もっと具体的にいえば原油・・・をはじめとするドル建てのエネルギー価格急騰のダメージ緩和に向け、それらの円建て価格が上がらないようにする(むしろ下がるくらいにする)ような金融政策誘導が必須・・・って、端的には金融引き締め―――現在0.5%(/年)の長期金利の許容上限の引き上げ等―――で(日米金利差を小さくして)円高に導くことが求められるはず。
本ブログで何度も述べているとおり、アメリカのインフレとはドルすなわち基軸通貨・・・というより「石油交換券」の価値劣化だから、それに反比例して石油のドル換算価格は上がっていく(しかない)わけです。もっとも、その害悪はドル価格の上昇の度合い以上に円がドルに対して価値を高めていけば食い止められるため、そうしましょう、ということ。こうしてアメリカはエネルギーインフレに沈み、いっぽうの日本は沈まずに済む、という次第。おそらく政府が日銀に暗に求めたのはそのあたりの政策運営方針ではないかと・・・(?)