(前回からの続き)
今般の与党自民党の新総裁の決定で、近いうちの解散総選挙(衆議院議員選挙)が取り沙汰されています。でその衆院選での関心事は・・・本稿の文脈からすれば、たったひとつです。つまり・・・「アメリカ&ドルの支援」を「本当の目的」としている日銀の現行金融政策「円安誘導」が信認されるか否か、ということ。そこは、同政策が2012年12月から現在までの自民党政権(を表向きの看板にした政府[官僚機構])のもとで行われてきたため、次回の選挙における自民党の勝ちっぷり(あるいは負けっぷり)によって判断されるでしょう。つまり、自民が勝てば円安誘導は信認、負ければ不信認、です。この点、そんな判断を下すのは有権者や本邦メディア・・・などではなく株式市場参加者(とりわけ外国人投資家)で、彼ら彼女らが自民党勝利つまり円安誘導が信認されたとみなしたなら、選挙直後に株高円安、逆の場合は株安円高、となるはずです・・・
まあそのあたりは、こちらの記事に書いた前回の衆院選(2021年秋)の前の状況と似ていますね。そこでは「自民党が勝てば物価は一段と上昇するだろう」と予想しましたが、実際、自民党が勝った・・・ことで同党政府が進める円安誘導にも国民の了解が得られたとして日銀が結果的にこれを強化した(より正しくは、この間、米FRB等が利上げを進めたなかで日銀は超低金利を維持した)ために円安がさらに進んで輸入インフレが喚起されて物価が上がったわけです。となれば同じ理由から今回も「自民党が勝てば物価は一段と上昇」することでしょう・・・
が・・・今回は、その自民党の旗色は悪いといわざるを得ないでしょう。前回選挙以降にさらに進んだ政策的な円安が先述した「マイナス」(超マイナス経済成長、実質賃金の2年以上にわたるマイナス、等々)の苦しみを国民の大多数に強いてしまった・・・うえ、前述した現「岸田政権」の低支持率などから推測されるように、有権者の多くもそれが自民党が進める円安のせい・・・で、この苦しみを緩和するには円高による輸入物価の引き下げが有効・・・だと気づきつつあるからです。であれば、旗色の悪さは自民党・・・もそうですが、むしろそれ以上に政府・日銀(の現行金融政策「円安誘導」)になってしまいます。
で、この何がマズいか、ですが・・・そうした国民の思いが円高環境を求めて日銀にもう一段の金融引き締めを働きかけることになりますが、実際に円高になると、前回記事で論じた政府の円安株高路線が動揺しかねない(円高株安・外債安になってその間に「政府」[公的年金基金や政府系金融機関等]がしこたま勝ったこれらに巨額の評価損が発生しかねない)・・・ことに加え、上述「本当の目的」であるアメリカ&ドルの支援がますます困難になってしまう―――日米金利差がいっそう縮小してアメリカ&ドルに向かってほしいマネーがさらに減少し、かの国の「金利」を押し上げかねない―――わけです・・・
以上からすれば、政府・日銀としては、前回選挙に続いて今回も自民党に勝ってもらいたい(日本株「買い」と市場が判断できるくらいに自民に勝ってほしい)―――そうなることで対米支援策としての円安誘導に引き続き「お墨付き」を得たい―――ところでしょう。そこで、どうするか、ですが・・・