(前回からの続き)
前述のように、フランス(およびドイツなど一部を除く全EU諸国)は、EU共通通貨ユーロを手にしたのをいいことに、その「強さ」に20年あまりも安住した(輸入代替や輸出振興を怠った)結果生じた対外収支(および財政収支)の大赤字と、これがもたらすインフレ(ユーロの弱体化)に苦しむ羽目になりました。でようやく目覚めたか、その改善に向けて輸出強化に乗り出して・・・って、いまさらメイド・イン・フランスの何を売るのかと思ったら・・・やはり武器・兵器の類だったわけですね。その対外セールスの勢いは、GDPで世界7位の同国を世界2位の武器輸出大国に押し上げるほどのスケールであるのは前述したとおりです・・・
でそのあたりは・・・同国製の武器を買う側からみると分かってくるというものです。たとえばインド・・・はいま世界一の武器輸入国で、フランスはここのところ同国への売り上げを増やすことに成功してはいます・・・が、インドはフランスと同様の貿易・経常収支の大赤字国(世界ワースト3位!)だから(通貨安→インフレの抑制等の必要から)これ以上、(つまりフランスの赤字額を目に見えて埋めるほど多額の)武器類を買い増す余裕はないはず。
となると次の期待は、その購入原資となるオイルマネーで潤う中東諸国になりそうです(実際、2013~2022年の最大の輸出先はUAEで、以下、エジプト、カタール、インド、サウジアラビアと、上位5か国中で同エリア国が4つを占める)。しかし、かの国々がフランス製武器をさらに買うために必要なマネーを得るには、原油(や天然ガスなどのエネルギー)の価格がさらに上がる必要がある(販売量の増加はそうは望めない)ところ、かりにこれが現実となっても、今度はフランスの対外収支がそのエネルギー価格の高騰によっていっそう悪化し、せっかくの産油国相手の武器売り上げ増分が打ち消されて・・・といったことになるでしょう・・・
であれば、頼みはそれら以外の、対外収支等が安定した先進国・・・などですが、アメリカや英国やドイツなどはいうまでもなく武器の自給国・・・であるばかりかその輸出マーケットではフランスとバッティングし合うくらいだから、これらの国々が「F-16」に替えて「ラファール」(戦闘機)を大量購入するわけがありません・・・
・・・となって最後?は・・・世界一の貿易黒字国である中国。当然、おカネはたくさん持っているでしょう。ですが、いうまでもなく、かの国は現在、ウクライナに侵攻中のロシアを支える?側、つまりフランス・・・やアメリカなどで構成されるNATO(加盟国)とは潜在的・軍事的に敵対する側に位置づけられています(?)。そのうえ、少し前からアメリカは様々な面で中国との対立を深めています。となると(本音は逆だが建前上は)フランスが中国を相手とした軍事ビジネスを拡大するのは(同盟国アメリカへの遠慮等もあって?)難しそう・・・
以上(の輸入側の事情等)から、フランスの武器商法はうまくいくはずがない―――同国の国際収支の均衡・経済プラス成長・インフレの抑止等に寄与し得ない―――といい切れるわけです。かといって非軍事セクター(自動車等の輸出など)で黒字を、というのもまた無理なことは上述のとおり。よって、フランスの赤字体質はもはや改善が望めず、これが類似体質の他のEU諸国とともにユーロの信認低下に手を貸すことになって・・・自国ばかりかEU圏全体がインフレへ、となっていく以外にないでしょう・・・