
この同じ制度の埼玉県も追従して、始める計画である。
前回に説明した様に、肝心の初期配分については、過去の実績を基準とした一律の削減、(オフィスビル等は8%、工場等は6%)を、2010年~2014年の5年間の平均排出量とした。
この方式はヨーロッパで始められた「グランドファザリング」と呼ばれ、権限のある自治体や政府が、上からの命令で配分することを基本としている。
本来の「アメリカで始めた排出量取引」は、初期の配分の排出許可枠を「有償で購入」すること(オークション、入札方式)が基本である。
この有償の価格は市場原理できまり、削減に必要な技術手段への投資を誘導する制度である。
「グランドファザリング」で無償の初期配分をすることは、企業にとって排出削減の技術に投資をするインセンティブ(動機・メリット)を弱める効果になってしまう。
むしろ、排出源となっている事業所を他の規制のない地域に移転する動機を強めてしまう。
なぜ、この様な明らかなデメリットがあるにも拘わらず、採用したかを推定すると、
①企業の負担は「オークション」に比べて少ない。その結果、反対活動の抵抗が弱まる。
②政治家にとっては、抵抗の少ない制度で、政治的な実績を作り易い。
つまり、効果は少なくなっても、政治的に実績を作るには、この「グランドファザリング」方式による「排出量取引制度」を、どこよりも早く実現した、という功名心が働いている。

これが首都圏で排気ガスの汚染物質に悩まされていた住民から大きな賛辞を受けて、東京都知事の名声を大きくあげた。
首都圏の周りの県も、遅れじとばかりに同様の排気ガス規制条例を作り、一気に首都圏の大気汚染の減少をもたらした。

それでも、何もやらないよりはマシとして、問題が起きてから、それを改良していけば、実効性のある制度に育つ可能性もある。

その影のブレーンである「守旧派産業界、代弁官庁」の、自省の権益と天下り先確保の思惑にホンロウされない様な、しっかりした理念を持って【KM】で臨むべきであろう。
