庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

経済産業省の愚策「再生可能エネルギー発電抑制法」の軌跡。

2010-12-24 | 快適エネルギー社会問題
日本経済が自動車産業の成長による収益増加と雇用創出によって、高度経済成長を遂げたことは周知のことである。
今後も日本の自動車産業が世界の先端で収益を上げる産業でいられるかは、ここ10年くらいの適切な政策支援が不可欠であると、12月21日のブログに書いた。

自動車産業に匹敵するくらいの重要な【次世代のグリーン産業】として、『再生可能エネルギー発電産業」が、いま正念場を迎えている。
この分野で世界の先端を進めるかどうかで、日本経済の将来が大きく影響をうける。

実は、この産業が世界の最先端に躍り出るチャンスが、1998年の「京都議定書の締結」の時点にあった。
気候変動対策の重要な国際条約としての「京都議定書」は、温室効果ガスの削減目標を、先進主要国が義務として負う、画期的な条約である。
しかし、アメリカが離脱したことによって、「京都議定書」の不公平な面が強調されて、日本にとっては悪平等条約の様に宣伝されてしまった。

平等性も重要だが、高い目標に沿って果敢に技術開発と事業化に取り組むことは、先進国にとっては、大切な役割である。
同時に、自国の産業構造の転換にも役立ち、国益に沿う潮流にのる絶好のチャンスでもあった。
しかし、日本の旧産業界は、一様に「再生可能エネルギー」は未熟な産業であって、先行投資をするのは割に合わない、として優遇する政策に後ろ向きの姿勢に終始した。

2000年代の初頭に成立した「自然エネルギー促進特別措置法」は、再生可能エネルギー発電を既存の電力会社に買い取りを義務付ける、当時としては世界の先端を進んだ政策である。
しかし、この法律制定の最終段階において、既得権を持った電力業界関係の猛烈な抵抗があって、法律の本来の狙いをナイガシロにする「骨抜き」が実施されてしまった。

それは、再生可能エネルギー毎の電力の買い取り価格を決める方式に、「市場原理による買取り価格」の変動価格を採用してしまったことである。
同時に、その買取り義務量を電力業界の抵抗に沿って、義務量を最小のレベルにしてしまった。

具体的には、全電力量の1%程度の再生可能エネルギー電力(自然エネルギーとも呼ぶ)を、各電力会社が買取れば良いとして、それ以上の義務付けがないことになってしまった。
結果として、当時の技術水準で、一番、発電コストが安い風力発電のみが、わずかな優遇価格(通常よりも1~2円/kWh上乗せ)で買取られる限定的な効果しか生まれなかった。

発電コストが割高な、地熱発電、潮力発電、バイオマス発電などは、どこの地域においても、まったく採算が取れない程度の買い取り価格になるため、新規の建設計画はとまったに等しい。
【自然エネルギー促進法】と言いながら、実質は『風力発電以外の再生可能エネルギー抑制法』
を10年近くに渡って維持した経済産業省は、日本の次世代産業の育成を抑えて来たのである。

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