庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

デフレ脱却の方策の賃金交渉を資本家代理の経営者とするのか。

2016-02-19 | 経済問題

経済成長の原動力には消費購買力の増加が必須であると、経済関係者が言い出すのが遅すぎる。

昨年の段階では「賃金交渉に政府が関与する」のは、理論的におかしいとマスメディアで論じた「石頭経済関係者」のお粗末よりも、少しは進歩してはいるが。

今ではメディアでも「官製春闘」などと新造語を作り出す流れになった。

経営団体側の経団連幹部官僚と、組合側団体の連合幹部は、春闘相場を作り出す大手企業の賃上げ動向に注視している。

しかし、大手企業の賃上げ次第に左右される「給与増額」の相場形成に、経済の復活の復活を託すことには、安倍政権もマスメディアも疑問の声をあげない。

 

日本社会全体の経済動向が、一部の大手企業経営者の判断に左右されるとは、おかしいと思わないほどに、経済運営関係者の感覚は衰えてしまった。

大手企業の経営者は、「グローバル化された資本主義経済」では、【富裕層の資本家の意向】に添わなければならない運命にある。

ということは、世界の経済の運命は、【1%の富裕層の資産を増やす目的】に向けて判断がされるのだ。

結局、働く人の給与増額は最小限度に抑えることに流されるのである。

資本主義経済は「賃金デフレ」を起こして、デフレの長期化に陥る運命にある。

 

デフレ経済が広がって、経済成長を停滞させる国が増えると、結果的には「1%の富裕層の資金」も利益を生まなくなるのだが、当面は困らない。

経済成長率の高い国への投資や、マネーゲームで稼ぐ力が残る限り、先進国への投資は控えて、《資本収益率(r)>(g)経済成長率》の原則に沿って行けばよい。

ほとんどの国の経済成長が衰えた段階で、やっと先進国への投資を検討する。

日本社会のように人口減少が進み出し、節約志向も高い国民性の国には、投資を増やす効果は最小の可能性しか残らない。

だから日本の大企業に、「賃上げの相場形成」を期待する方が、間違っているのだ。

 

経団連に加盟している大企業の従業員の給与が上がっても、下請け的な関連企業が、発注元の大企業の賃上げ額よりも「高い賃金上昇」の実現性はない。

上部の賃上げ率よりも常に低めの実績しか出せない、「日本社会の上下関係が染み込んでいる取引慣行」を抜け出すことは、不可能な課題である。

安倍政権がいくら「国民に挑戦」を呼びかけても、無理な幻想にすぎない。

上から順番に「給料が上がることで次々に下を引き上げる」いわゆる【トリクルダウン効果】は、グローバル経済では起こり得ない構造になっているのだ。

このように「世界経済の原理と構造」が変化しているのを直視すれば、選ぶべき政策手段は、政府の介入による「下からの給与増額のボトムアップ」しかない。

このような発想に大転換しなければ、デフレ脱却は不可能な挑戦に終わる。(続)


経済政策の根幹は超金融緩和で市場にお金ではなく・ひとに 

2016-02-19 | 経済問題

日本の経済政策では、1990年代のバブル崩壊以後の国策の選択では、何度も誤った選択を繰り返してきた経緯がある。

自民党政権と経済産業省の幹部官僚には、大きな責任があるのだが、責任を少しでも負わされたのは「自民党の政治家」だけであった。

経済政策の迷走ぶりと消費税増税の5%では、国民からの審判によって。橋本政権は退陣を余儀なくされている。

小泉政権では、既得権構造の破壊への挑戦によって、「ぬるま湯に浸りきった道路族」を破壊し、ルーズな金融業に「ぶら下がった郵政族」の退出を実行した。

少しは筋肉質に改善できたが、強大なる官僚機構の癒着ぶりは健在だ。

 

その最たる分野は「電力族・原子力族」だが、民主党政権の誕生と「原発大事故」をきっかけとして、やっと「原子力村」の解体に進み始めた。

しかし、安倍自民党政権の復活によって、電力族の復権が進行し始め、21世紀の新産業の要である「再生可能電力」の新事業の活発化は、制約が多すぎる。

民主党政権時代に世界の潮流から遅れていた「電力事業の小売分野の自由化」は、2016年4月から始まるが、送電線事業の近代化とイノベーションは未知だ。

原子力発電や石炭火力発電を「ベース電源」と規定しているような国策では、思い切った「再生可能電力事業」への投資は、控えざるを得ないだろう。

 

このような生ぬるい国策しか選択できないベースには、経済政策の基本における「消費購買力」の増加に向けた「確立した国策」が不在だからである。

1990年代のグローバリゼーションの進行に伴って、日本政府のとった国策では、「国際競争の中で生き残るには価格競争力」が要と想定した。

しかし、「大量生産による低価格普及品」の分野では、新興国の台頭による「圧倒的な低賃金」に押されて「海外生産に移転する潮流からは逃げられない。

国内生産での低賃金に抑制する「企業寄りの都合」を優先したために、非正規雇用の枠をなし崩し的に広げてしまったことで、4割の人が低賃金になっている。

このことが、消費購買力を引き下げて「長期デフレ経済」に落ち込んだのだ。

 

今の段階になってやっと「同一労働同一賃金」を言い出すようでは、経済政策の根幹が「わかっていない経済音痴」であったことを認めているのだ。

経済成長の根幹は、「人が働く価値を高める」ことにある。

これは、働く人の「生産性を上げて給料を増やす」ことに他ならない。

価格競争力を重視していては、経営者はすぐに人件費削減に走り、「手っ取り早く給料ダウン」を狙う。

正社員の「給料を下げるのは至難の技」だから、「給料の安い非正規社員を増やす」経営に突っ走り、自社の経営は改善しても、日本全体が不況になる。

何を優先すべきかは明らかで、超金融緩和などは「ぬるま湯政策」に過ぎないのだ。(続)