安倍政権のデフレ経済対策の欠点は「働くひとの立場」になって、経済を考えていないことにある。
市場にお金を潤沢に供給すれば、最終的には臨時雇用的な「非正規社員」にも、給与の増額が行き渡ると、安易に考えていたようである。
その安易さが、「雇用者が増えても実質賃金」は低下して。マイナス成長のおちこんでしまった。
世界の先行き情勢が不安定になる状況では、企業の現状の収益が出ていても、いつ赤字に転落するかもしれないから、正社員を増やすことはしない。
業績が低下したらすぐに人員削減ができるように、「非正規雇用社員」を増やすだけで当面をしのいで済まそうとなる。
そのために、「非正規雇用社員」の割合は増える一方で、これでは「成長戦略」をいくら計画しても、絵空事になってしまうのだ。
そもそも正社員として雇用して、人材育成の時間と費用を負担しないで済まそうとする企業姿勢の経営では、次世代の成長の芽吹きになる人材は育たない。
「価格競争至上主義」の経営ならば、できる限り安い人件費におさえようとして、
仕事をマニュアル化して、働くひとを「設備扱い」にする。
余計なことには頭を使わせないように「ひとの能力を制限する」扱い方だ。
これで、日常の仕事をこなすだけの職種のひとばかりになれば、正社員も決められたことしか作業をしないようになる。
多くの企業が「正社員としてひとを育てる経営」を省略してきたことが、「次世代の革新業務」を生み出すことをしなくなっている。
日本の活力を生み出す元の「企業への忠誠心」も育つ機会が、全くない社員ばかりを増やしてきたので、「斬新なアイデア」も生み出せず、同じことの繰り返しだ。
「経済活動」の根源は、ひとの能力を最大限に引き出して、製品やサービスの付加価値をあげることによって、成長するのである。
それを、単純な労働としてしまう「モノ扱い」するように「人扱い」のはっそうしかできないので、お金さえ潤沢の市場に供給することばかりを優先していた。
企業はお金の余裕ができても、人に投資をしないだけでなく、新規設備への投資をしようともしない。
余剰資金は、海外の資本収益率の良い事業にしか使わず、正社員の給料を申し訳程度にベースアップして、安倍政権への協力ポーズだけをとっている。
省力化やコストダウンの為の設備投資をしても、社員の能力を伸ばす目的の人材育成投資は最小限しかしない。
そして、省力化出来ない残った仕事だけは「安い費用で雇える派遣社員」でカバーして、使い捨てのように人を扱っている。
これで「一億総活躍社会」の実現とは、考え違いも甚だしい。