安倍首相の施政方針演説は、3年前の政権発足時に比べると、違う人が政権を担っているのではないか、と思えるくらいに豹変している。
しかし、実際の政策段階の話になると、3年前の時の様に「この道しかない」とわき目も振らずに、超金融緩和による株高政策まっしぐらと変わりがない。
お題目の超金融緩和による市場への資金を豊富にすれば、企業の投資が活発化して、設備投資が活況と呈して、景気が上向くので消費マインドも上がる。
だが、現実に3年経っても、企業の新規投資は国内には向かない。
この道しかない、と言いきっていたのを、今度は多様性を大事にしてのイノベーションが起きることを期待する路線に、言葉だけは乗り換えた。
しかし、多様性の重視と言うのとは正反対に、独断的な価値基準を押し付ける体質は、まったく20世紀の遺物、イヤ太平洋戦争以前の国粋主義に近い。
お国の方針に異を唱えるモノは、排除の対象にしか思わない思考が、与党、自民党の思考停止を招いて、活性化を抑えているのが分からない様だ。
安倍政権のお友達内閣の方針に異論と唱えるなど、ご法度の潮流である。
安倍首相の2015年初頭の施政方針演説では、「改革断行」の言葉が目だっていたが、「多様性」や「イノベーション」の言葉は、見あたらない。
ホンの一部に、「日本を世界で最もイノベーションに適した国」にすると宣言しているが、「日本から医療のイノベーションを起こします。」とあるだけだ。
これは、[iPS細胞]の応用発展を意味しているが、基本の研究や技術は、国の功績でもなく、むしろ中央集権の弊害を乗り越えてきた非主流の研究である。
主流の研究や技術開発に、反旗を翻して果敢に挑戦してきた「研究:開発」こそが、次世代のイノベーションの芽になることを、安倍首相は知らないのだ。
それで、やっとのことで、多様性が重視される環境が必要と気がついた様だ。
それまでの様な、「独裁的な環境」、「中央集権による集中の効率化」を強めることが、多様性を損なう最大の害毒である。
いろいろが発想とアイデア、そして、主流の研究や技術に反骨精神で取組む研究や新規事業への挑戦こそが、イノベーションを生み出す源泉なのである。
自民党の主流を歩いて、若いころから御神輿に乗る習性がついた人には、残念ながら多様性もイノベーションも、縁が一番遠いのが現実である。
ならば、二世政治家でもせめて「挑戦する意欲、姿勢」だけはもてるから、回りにお友達を集めるのではなく、異色の多様性ある人材を登用するのだ。(続)