安倍首相の経済の認識は、都合の良い数値指標だけを採りあげて、政権の経済政策の成果と誇る様だが、大多数の働く人の生活の実情が掴めていない様だ。
大企業に働く人の給与増額は、春闘の機会に統一的な運動で実現できるが、中小企業の従業員、非正規雇用社員、パート従業員には恩恵が届かない。
経済の好循環を目指すと言い出しているが、循環する様な経済構造にはなっていないのが実態であることに、気がつかないのが嘆かわしい。
大企業の労組も、自分たちの給与の増加だけでは、大企業労組エゴと言われかねないのを懸念し始めた。
系列の下請け企業の従業員や、非正規雇用の社員の賃上げも要求するとしているが、どこまで実現性があるかは疑問である。
大企業は取引上の優位な立場を利用して、下請け企業の納入価格を据え置きにするのが通例である。
それどころか、毎年の様に、納入価格の低下を要求するのが常態化しているので、下請け企業の苦労は並大抵のものではない。
生産性を上げるのが、受注を継続するためには必須であり、それが追い付かない場合は、従業員の給与を下げる方向に行ってしまう。
そうは言っても、正社員の従業員の給料をダウンさせるのは、通常では困難だから、できるだけ臨時雇用的な派遣社員やパート従業員に切り替えている。
こうして相対的に下請け企業の正社員は減り続け、生産力の大半を非正規社員に依存する様にならざるを得なかったのである。
それに呼応して、非正規社員の職種を広げる様に【規制緩和を実施】し続けて、ついに4割に近い人が非正規の状態で働かざるを得ない状況になった。
大企業が儲けることを優先したために、下請け企業の体力が衰えて、それを補う非正規社員を低い待遇のママに増やし続けてきたのが、デフレの原因である。
それに対して、安倍政権は、【大企業の利権集団にすぎない経団連に賃上げのお願い】をしているだけで、これで「経済の好循環を期待」するのは幻想だ。
資本主義経済の市場競争原理を重視するだけでは、一番の弱者である非正規従業員の待遇改善と給与の引上げに、具体的な政策手段を用意できていない。
その様な実情に対して「政策手段の真剣な創出の努力」を全くしない状態で、「次期選挙を目当てに聞こえの良いスローガン」だけを打ち上げている。
「同一労働・同一賃金」との美辞麗句を掲げる安倍首相の蛮勇にシラケル。(続)