エネルギー問題では、2011年3月11日の「原発大事故」という稀に見る事態によって、それまでの馴れ合い的な原子力族の利権体質が、あらわになった。
この機会に長年の不明朗な体質を、一気に転換する挑戦に取り組むべきであったが、安倍政権はなし崩し的に、旧体質の継続に逃げ込んでしまった。
国民の意思が「脱原発依存社会」に向かって合意ができつつあったのに、一部の電力企業の利益と、立地地元の利権事業者たちを守る方向に逃げたのだ。
それの影響で、将来性のまったく見えない「高速増殖炉」の無益な継続を選択し、放射性廃棄物の再処理路線の無目的な放浪に進んでしまった。
21世紀の主流となる「再生可能エネルギー」への、国家的な挑戦の機会を失して、今や欧州、アメリカ、中国に大きく遅れる事態になってしまった。
小泉元首相は、挑戦的に国の方向を転換するには、トップの決断次第で可能になると、最大限の助言をしたのだが、臆病モノの安倍首相は逃げ続けている。
原発への依存路線から転換するには、経済界の既得権勢力の多くを敵にまわす覚悟が必要であるが、その決断ができないで先送りばかりしている。
昨年の世界190カ国以上が集まって『パリ協定』が成立したが、各国での批准が進むかの様子見をしているだけだ。
日本の2030年に26%削減(2013年比)する目標には、安倍政権の具体策では、原発への依存度が22~24%としていて、国民の意向からは、大きく離れている。
その一方では[CO2排出量]が最大の【石炭火力発電】を最大限に導入する計画にしている。
しかし政権として、この石炭火力発電を無理してでも実現するには、矛盾が多すぎるのに、その対策にも先送り路線で逃げ腰のママにしている。
石炭火力発電を継続するならば、[CO2排出量]を削減するための追加の設備や施策が必要だが、国民にはキチンと説明をしていく意思もない。
石炭火力発電によって[CO2排出量]を増やしておいて、その分を最大限に「原子力発電」への依存量を増やして、[CO2排出量]を削減する魂胆である。
これが、挑戦的な『地球温暖化対策』と言い続けるのは、欺瞞も甚だしい。
石炭火力発電を削減することができない理由は、火力発電のなかで「石炭の価格が最も安い」からだとしているが、単細胞の発想しか出来ない。
近い将来において、炭素税の導入や、[カーボンクレジット制度]の活用が世界的に広がることを想定するなら、もっとも経済的に不利な路線になる。(続)