日本のエネルギー政策は、中央集権体制に沿って、霞が関とそれに連なる電力関連企業の利害によって方針が決められ、それによって全国の９電力（沖縄電力を除く）に経営を左右してきた。日本中に原子力発電を広げて、電力会社の義務であるかの様に、無理やりに立地をさせてきた、「原子力族」の利害だけが優先していた。
福島第一原発の大事故によって、中部電力の一番危険な「浜岡原発の全基停止」は、転換の大きなきっかけになる。
中央の政府は、浜岡原発の停止を要請しただけである。
中電は地元自治体の懸念を受け入れて、全基停止の措置を講じることで、今後の２年間は原発による発電はゼロで、一切の電力を賄う。
３年目になって、やはり原発が必要だから稼働を開始するかどうかは、地域社会の判断に委ねることになる。
この事態は、全国のほかの地域社会に、否応なしに選択を迫ることになる。九州地区、北海道地区は、原発の再稼働を認めないか、事故のリスクを負ったまま、原発の運転を認めて行くのか。
中央政府は、他の地域の原発の運転を続けることは認めるが、再稼働を命令する事はない。
地域社会は、自分たちの経済活動と原発の事故リスクを、自らの判断によって選ぶべきである。
地域主権やら地方分権の言葉によって、机上の論争を続けている状況ではなくなった。
九州、四国、中国地方のエネルギー選択、北海道の将来を、遠く離れた霞が関と永田町の議論に委ねることが、まったく意義のない状況になっている。
東北地区は今回の大地震災害による復興計画の実施において、中央政府の全面的な支援が必要であるから、密接に連携をすべきである。
出来れば、仙台に東北復興庁を設置して、関連する予算と権限を委ねる「地域主権実行特区」として、ほとんどの機能を移転するのが良い。
そして、北海道、四国、中国、九州の各地域は、総合力を発揮できるように決めて行く組織を作り、電力問題を中心とした地域主権の先行実施に、動きだすことである。例えば、九州だけでも、ヨーロッパの一国と同等以上の経済規模であり、エネルギーの需給量は、相当の規模となっている。
中央統制による原子力族の管理を離れれば、原発の今後をどうすべきかは、九州全体の住民の意思によって選択するのがベストである。
今回の【原発大事故によるエネルギー敗戦】によって、大規模集中型、中央集権の腐敗、癒着体質の弱みが原因となって、日本の活性化を妨げていることが明確になった。明治維新の時は、欧米の強国に属国にされない為に廃藩置県を行って、強力な中央集権体制を造ることによって、富国強兵政策を選択した。
２１世紀の今は、地域に挑戦的な活性化策を委ね、エネルギーの自立的選択から始めるべきである。