庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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原発事故の破損状況も見えない段階で安全性の確保が出来るのか。

2011-05-13 | 核エネルギー・原子力問題
原子力発電の安全性を地元住民に対して、説明出来るようになるには、今の福島第一原発の事故を、安定状態に終息する事が先決である。
安定した状態にして、原発内部の破損状況を的確に調べて、どのような事態が津波被害の影響で起きたかを、可能な限り明らかにすることである。
破損した部分を詳細に調べることで、事故時の経過が判り、対策すべきところが判明してくる。

しかし、現状では1号炉から4号炉まで、どの原子炉も終息の目途が立っていない。
1号機は終息が一番早くできる想定で作業をすすめていたが、どうやら原子炉の中核である圧力容器に漏れるところがある、との状況で終息計画も怪しくなった。
圧力容器に水を満たすことで、冷却状態を安定させる計画であったが、底の部分に漏れるところがある様で、冷却水をいくら入れても、水位が上がらない。

技術的にも破損の推定も出来ない様な、難しい状況に置かれている原子力関連の技術は、言ってみれば、開発の初期段階の未知だらけの技術分野である。
圧力容器は、厚さが30ミリメートル以上の頑丈な鋼鉄製となっているから、絶対に破損はしない様に出来ていると、製造企業は豪語していた。
しかし、容器の下部には、多数の溶接が必要な部分があって、その一部でも弱いところがあればキレツが入って水は漏れ出してしまう。
まさに、【穴のあいたバケツに水を注いで】溜めようとしていたわけである。

この様に破損している箇所も判らない状況で、安全基準の厳重な見直しができる筈がない。
地震の津波対策さえすれば、安全性は対策済みとでも言いたいのか。
非常用電源の喪失が、今回の事故の原因であるから、電源を高台に移せばよい、とか、頑丈な建屋の中に設置すれば良い、とでも言いたげな口ぶりである。

世界で最大レベルの原発大事故を起こしてしまったのに、原子力の神話の虜になった関係者は、未だにその危険性の大きさを過小評価している。
つまり、わずかなミスや見落としでも、一カ所でも弱点があると、そこから事故の原因となる破損が起きるのが、この様な大規模システムの宿命でもある。
現状の原発関係者の技術レベルでは、一カ所の故障時にも、次の防御システムが用意される、いわゆる2重、3重の『フェイルセーフ』の仕組みが、まともにできていないのが実態である、と言わざるを得ない。

さらに、放射性物質の拡散についても、今までの事故を真剣に把握していないので、各地の測定なども、後手後手に回って被害をいっそう拡大させた。
今回の事故で、300キロメートルも離れた足柄でのお茶の葉から、放射性物質が確認され、商品が売られてしまってから、慌てて回収する事態になっている。
これで、原発の運転によって、大事故時に直接被害を被るおそれの出る範囲は、半径300キロに拡大している。
今までの避難区域想定は30キロであったが、実際にはその10倍は必要になる。
【まさに想定外】。