庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

消費者が歓迎する高付加価値による価格上昇は経済効果が大きい。

2011-05-06 | 快適エネルギー社会問題
エネルギーや電力の価格が上がると、経済活動の足を引っ張り、国民生活に悪影響を及ぼす。
これが日本の産業界の常識として、長い間、定着してきた。
それは、安いエネルギー価格によって支えられた産業を、日本の経済成長、輸出立国の基盤としてきた成功体験に基づいている。

しかし、エネルギーや電力も商品の範疇であって、値上がりが確実に悪影響となる、という結論は誤りである。
商品の付加価値が向上することで、その価格が上がったとしても、消費者が納得して受け入れていけば、需要は継続的に生まれるので、なんら問題はない。
むしろ、付加価値の高い商品に移行する事は、先進国においては歓迎すべきことで、それによって経済成長や雇用の創出に好影響をもたらす場合が多い。

この辺の理屈は解りにくいが、値段の上がっても経済にとって良い効果を表す事例を説明しよう。
1970年代において、自動車の普及が急速に進みだした時期の、自動車の排気ガスの人体に及ぼす被害が大きな問題となった。
その時にアメリカは、排出ガスの有害成分を、10分の1以下に規制する自動車排ガス規制法を制定した。(提案議員の名前をとってマスキー法と呼んだ。)

日本においても、同様の排気ガス規制を『日本版マスキー法』として、後追いで制定し、期限を区切ったこの規制に適合しない自動車の販売を禁止した。
技術的に不可能と大騒ぎをして自動車企業が多かったが、生き残りをかけて技術開発に邁進した結果、期限ギリギリに、どうにか規制をクリアーする技術を間に合わせて、ユーザーに提供できる様にできた。

詳細は省略するが、とにかく、新技術を特急で開発したので、規制をクリア―する為の設備投資や部品の追加で自動車の製造コストはかなりアップした。
このコスト上昇分は、企業努力と商品価格の値上げで何とか消費者が納得する範囲にとどめたので、
販売台数はその後も順調に伸びていった。
むしろ規制値をクリア―する為には、製造品質を上げることや、耐久性を大幅に伸ばすことが必須となり、その技術向上が日本の自動車産業の成長を加速する事に貢献した。

この事例は、社会の進展によって要求される「高付加価値」(排気ガスをクリーンにする価値)を企業が技術革新によって乗り越え、その技術のコストアップ分は商品の価格の上昇によって投資分を上回る収入を得ることができた成功例である。

つまり、価値が上がる商品を創り出すことは、技術革新を誘発して、その影響は広く及ぶことで、全体としての経済活動、雇用の創出につながる。
今の時代では、原子力発電【不安を伴う電力】から、安全で安心な『快適エネルギー電力』を主力とする「高付加価値」のエネルギーに転換する事は、価格が上がっても消費者が納得して消費を継続することで、むしろ経済の成長に貢献し、技術革新を誘発する効果がある。(以下、次回に)