庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

国の方針と電力企業の経営判断の建前はくずれ、地域の意思決定で。

2011-05-08 | 快適エネルギー社会問題
中部電力管内を原発ゼロの地域に転換する。
これが21世紀の日本のエネルギー政策の転換を発信するモデル地域とすべきである。
浜岡原発の全基停止は、菅内閣の英断であるが、その流れの底流は整ってきていた。
地震発生の科学的な予測のレベルが上がり、福島第一原発の大事故によって、原発安全神話は完全にくずれていた。
そして、節電技術の進化とともに、国民全体には電力消費を節約する機運が受け入れられる社会情勢となっていた。

原発問題の波及はこれからの対応次第で大きく影響される。
現在、定期点検や修理の為に停止している各地域の原発を再稼働させる動きは、期限が迫っているので、地域社会の意思決定として大きな問題となる。
中部電力管内の様に、原発発電をゼロにしても、今年の夏場をしのげる見通しが立っている地域は、大きな論争は起きない。

しかしながら、九州電力、中国電力、四国電力、北海道など、停止中の原発を再稼働する動きに対して、安全性を確実に出来ないうちは、再稼働を認めない地元自治体がほとんどである。
福島原発で起きた、非常用電源の全喪失に対する改善策は、緊急対策の措置で出来る。
しかし想定した地震の規模が甘く、津波被害に対する備えは非常に脆弱であって、その対策には、3年程度を要する事が懸念されている。

ここで大きな論争点は、再稼働を認めないで、電力供給が減る分を地域の節電、計画配電(輪番で企業活動を休止や土日運転、夜間運転に振り替える。)によって、この夏場をしのぐ方策がある。
イヤ、非常用電源確保などの当面に必要な安全対策によって原発を運転再開して、停電や強制的な節電をしないようにして、経済活動を優先すべきだ、という主張も多い。
「節電による安全優先」と「エネルギー確保の経済優先」、この二つの方向への決断が迫られる。
問題点は、国の基準に沿えば、運転再開を認めるのか。
それとも、地域社会の承認、理解を優先するのか。
法律上のタテマエとしては、民間企業の電力会社の決定事項で、各地域の電力供給の責任を負った電力会社が、事故のリスクを判断して原発を安全に運転する。

だが、福島原発の大事故で、この建前はくずれた。
産業界の要請と裏工作によって地震と津波の想定を甘くして、表面的には電力会社に原発運転を任せて来た仕組みは、明らかに破綻している。
電力企業に任せると、最悪の事態になると、すべての被害は地域社会におよび、風評被害も含めると、全国民に及び大きな負担を背負わなければならない。

確実な安全、想定される異常事態にすべて対応出来ている状況は、当面は期待できない。
それでも、原発の運転を認めるという合意は、どのようにして成立していくのか。
今まさに、国民主権、地域社会の安全、安心を土台とした意思決定の仕組みが、求められている。
日本の民主主義、地域社会の方向が問われる状況で、エネルギー面での意思決定が問われている。