庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

大型海上風力発電の実用化に取り組み、脱原発政策の切り札に。

2011-05-31 | 快適エネルギー社会問題
菅総理は海外における演説の機会に、自然エネルギーを20%(大規模ダム式水力を除けば13%)
に引き上げることを公表した。
従来の経済産業省の計画では2030年であった目標を、2020年代のできるだけ早い時期に前倒しを表明したが、現状においては具体策がないので、曖昧な国際公約となっている。

大きな制約は発電コストの割高な現状を打破する事を、民間の技術革新に頼るしかない状況である。
中でも太陽光発電は一番に発電コストが高いので、10年後に3分1になるとの想定に頼っている。
その上に、天候に左右される電源であるために、必要なバックアップ電源(夜間や雨天で太陽光発電がゼロの時に、不足する電力を供給するために、別の発電装置を用意する。)を確保するためのコストが余計にかかる。

そこで天候に左右されるにしても、その割合が少ない風力発電が、世界的には最先端にある。
20年来の技術革新により、大型で発電効率の良い風力発電が実用化されて、世界では自然エネルギー(再生可能エネルギーの世界標準の呼び方)の主流となっている。
日本では、設置に適する陸上の土地がほぼ網羅されて、今後は海上設置か、『浮体式風力発電』を検討する段階にきている。

日本周辺の海域を利用して、風力発電を設置した場合の利用可能な発電量は、環境省の検討チームによれば、原発50基分以上の発電量を確保できる規模にある。
問題は、技術的に未開拓の分野もあって、発電コストが不明確な点である。
これは、現状の風力発電による実績コストから推定するしかないので、仮に試算をしてみる。

現在の風力発電機は大型化が進み、発電能力が1000~2000KWクラスが標準的になっている。
これらの設備を、沿岸から1~2kmの地域の浅瀬に設置して、発電した電力を海底ケーブルで陸上の送電線まで運ぶ。
この費用が、陸上設置の風力発電よりも、コストは高くなる。
さらに、風が強い時は充分な発電量でも、弱い時に出力ダウンを補うためには、陸上に蓄電池を大量に設置しておく必要がある。

現状の陸上風力発電のコストは、[10~12円/kWh]であるが、海上風力発電は、実用化の段階では、その1.5倍程度になると想定出来る。
仮に[15~18円/kWh]として、この発電コストで送電線に送れば、端末では[20円/kWh]以下に収めることは可能である。
つまり、安全性の対策を徹底した原発を運転することで得られる電力が[20円/kWh]を超えることが想定される段階では、大型海上風力発電の方が有利になる。

経済産業省は、環境省ばかりに任せておかないで、大型海上風力発電の本格的な実現に向けた、実証プロジェクトをスタートさせるべきである。
原発建設と違って、こちらは数年の間に実証出来るだけの技術の蓄積がある。
今すぐにでも、この計画をスタートさせて、原発ショックに悩む地域に朗報を提示すべきだ。