なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

誤嚥性肺炎の外来治療

2012年11月09日 | Weblog

 3日前に、施設に入所している72歳女性が前日からの発熱で受診した。精神遅滞の方で、寝たきりで胃瘻による経管栄養を受けていた。胸部X線でわかりにくなったので、胸部CTで確認すると左下肺野(心陰影の背側)に浸潤影を認めた。室内気で酸素飽和度は97%でバイタルサインも異常なかった。外来治療にするか入院治療にするかの選択だった。

 その日は内科新患外来を診ていたが、忙しかった。できるだけ外来治療でいきたいという、こちらの事情もあった。化学療法学会の誤嚥性肺炎のランチョンセミナー(化学療法学会では教育セミナーという)で、アベロックスによる外来治療というのがあった。販売しているバイエルの提供なので、アベロックスを使ってくださいというお約束ではある。誤嚥性肺炎を全部入院治療にするというのは大変なので、症例を選んで外来治療を試みるというものだった。

 実はそれ以前から当院では、軽度の誤嚥性肺炎には嫌気性菌をカバーするアベロックス内服がいいのではないかと考えて、数例実際にそれで治療していた。幸い全例うまく軽快治癒できている。入院しても不穏がひどく点滴静注が困難なため、やむを得ずにアベロックス内服というのもあった。

 今回もアベロックスを処方して(粉砕して胃瘻から注入)外来治療としてみた。翌日まで発熱があったが、翌々日から解熱していた。3日後の今日検査してみると胸部X線で陰影の悪化はなく、炎症反応も改善していた。外来治療継続でいけると判断して、アベロックスを追加処方して、また来週受診とした。

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ほとんど老衰

2012年11月08日 | Weblog

 90歳男性が亡くなった。認知症でグループホームに入所していたが、2か月前に誤嚥性肺炎で入院した。抗菌薬でなんとか治癒したが、嚥下障害ででなかなか食事がとれなかった。家族は経管栄養は希望せず(病院としても勧めないと伝えた)、しばらく点滴で経過をみていたが、途中からソフト食(ほとんどムース状のもの)が食べられるようになった。

 退院して施設に戻ったが、2週間して誤嚥性肺炎で再入院した。最初の抗菌薬が効かず、変更してから軽快した。やはりしばらく食事摂取できなかったが、また食べられるようになった。しかし痰を頻回に吸引する必要があり、施設では過ごせない状態だった。どうしたものかと思っているうちに、また食べられなくなった。患者さん自身が手を振っていらないと意思表示した。また点滴を開始したが、血圧が低下してきた。2か月前に比べると、すっかりやせてしまい、ふたまわりくらい小さくなっていた。軽度の誤嚥性肺炎は常にあるが、老衰と表現するのが、適切だった。

 家族には点滴を継続して経過をみるが、いつ亡くなってもおかしくない状態と伝えた。先週末を乗り切って、今日の午前中に心肺停止となった。家族が来るのを待って死亡確認した。

 このような経過で亡くなる高齢者が増えている。最期まで食事をとれる範囲でとって亡くなっていくのは、自然でいいのではないか。

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気管支拡張症に気管支拡張剤?

2012年11月07日 | Weblog

 93歳女性が一昨日の夜間に呼吸困難で救急搬入されていた。呼吸器科がないので、当直の外科医が初期治療をして入院させた。呼吸器科がないので、内科系の当番が消化器科医だったので、翌日その先生が担当になって、治療の相談を受けた。診察すると喘鳴が中途うふぉに聴取される。胸部X線・CTで明らかな肺炎の浸潤影はなかった。白血球数が10000でCRP5と炎症反応が上昇していた。

 もともと当院の呼吸器科がなくなるときに、内科クリニックに紹介されていた。病名は気管支拡張症で、今回のCTでも気管支拡張像が確認された。処方はクラリス200mg/日がだされていた。それから6年間は特に問題がなかった。当院に搬入された日の日中にそのかかりつけクリニックを受診して、抗菌薬(ジェニナック)が処方されていた。私は化学療法学会に入っていて感染症科寄りなので、DPB以外の慢性呼吸器疾患にマクロライド少量長期投与するのは批判的な方だ。

 病態としては喘息性気管支炎というべきものだった。抗菌薬(ロセフィン)と喘息発作に準じてステロイドを短期間使用することにした。デカドロン2mg(1.65mg)を1回点滴静注すると喘鳴が大分軽くなったので、同量を3日間のみ使用することにした。気管支拡張剤(テオフィリン)も内服とした。気管支拡張症に気管支拡張剤を投与するのかということになるが、実際はCTで見える拡張した気管支ではなくて、末梢の気管支が攣縮しているのだろう。

 解熱して喘鳴が軽快して食欲良好となったので1週間くらいで退院にできそうな見込みとなった。継続してテオフィリン製剤を投与したら保険は通らないので、退院時には中止にする。

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ひどい貧血

2012年11月06日 | Weblog

 41歳女性が両下肢のむくみを訴えて、内科新患外来を受診した。顔面というか、全身蒼白だった。血液検査でHb4.6g/dlと著名な貧血だった。MCVは77で、血清鉄と血清ファリチンが一桁になっていた。歩くと息切れがするが、仕事(居酒屋かスナックらしい)は続けていた。食欲はあり、特にタール便はなかった。もともと生理出血が10日続くが、先月はかなり出血したという。消化管出血よりは過多月経による貧血のようだ。生理の時以外に出血がない。子宮筋腫を疑って婦人科外来に紹介すると、子宮内膜症か子宮癌が疑われ、細胞診の結果待ちとなった。

 ここまで貧血がひどいと鉄剤だけで経過をみるのはまずい。入院して最小限の輸血をすることにした。鉄剤投与も静注から開始した。輸血後に消化管の内視鏡検査を行うことにした。

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残胃癌でした。

2012年11月05日 | Weblog

 内科クリニックからFAXが来た。1週間食事摂取できない98歳男性の紹介だった。老衰?とあった。家族は入院治療を希望しているという。さっそく来てもらった。年齢の割にはしっかりしていて、難聴はあるが、ちゃんと会話できる。先々月までは畑仕事をしていたという。嚥下障害ではない。何か胃腸に器質的な疾患が発生していると思われた。

 スクリーニングで腹部エコーを行うと、肝臓全体に腫瘍があった。原発ではないようだ。胸腹部CTで左胸水があった。11年前に胃癌で遠位胃切除術を受けた既往がある。残遺壁上部が全周性に肥厚していた。肝臓の多発性腫瘍とリンパ節腫脹があった。あまり苦しい検査はうけさせたくないという家族の希望があったが、診断のために上部消化管内視鏡検査をさせてもらうことにした。食道胃接合部が狭くなっているようだ。遠位胃切除術後の残胃でビルロートⅡ法の再建だった。噴門を取り巻くように全周性の不整な隆起があり、残胃癌だった。生検を行って終了した。つまり、残胃癌で多発性肝転移・腹腔内リンパ節転移があり、癌性胸膜炎もきたしている。残念なことに噴門に狭窄があり、水分と柔らかい食物は何とか通るだろうが、ある程度大きさのある食物は詰まってしまう可能性がある。

 連れてきた長男(といっても70歳台)に病状を説明した。兄弟は全部で7人いるが、食事を摂れなくなってからは、(原因にかかわらず)最期は苦しまないで終わらせたいという相談していたらしい。点滴をして少しだけ経口摂取してもらいながら、1か月くらい病院で過ごせればいいと思った。

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糖尿病性ケトアシドーシスが入院していた

2012年11月04日 | Weblog

 病院から電話がきた。一緒に診療している内科医からで、朝に糖尿病性ケトアシドーシスの患者さんが入院したが、治療について相談したいという。外科医からの転身なので、あまり経験がないので、治療を確認したかったようだ。30歳台後半の男性で、大学からの応援医師の外来に通院していた。治療に対して熱心ではなく、中断してしまう人だった。担当医から対応について相談を受けたことがあった。きちんと治療を受けたがらないという問題と経済的な問題があった。

 本来はインスリン強化療法が必要だが、1日何回も注射してくれない。やむを得ず、持効型のレべミルだけは継続するという方針になっていたはずだ。2か月おきに通院はなんとか継続していたようだ。予約日に来院せず、予約日からしばらくたってから、インスリンを取り来た時に処方した記憶がある。血糖が1000で、生理食塩水の点滴静注と速効型インスリン(ヒューマリンR1単位/ml)の点滴静注をして、血糖が200台になってきたという。意識も回復していた。グルコース入った維持輸液(ソルデム3A500ml)にヒューマリンRを5単位混合した点滴に変更して、脱水を補うようヴィーンF500mlを側管から入れて経過をみることにした。血糖測定でヒューマリンR皮下注での補正も合わせて行うことにした。

 明日からは食事を出して、インスリン強化療法を開始する予定とした。患者さんが受け入れるかどうかはわからないが。

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ほどんど小児科の受診

2012年11月03日 | Weblog

 今日は内科日直だった。午前中は開業医がやっているので、普通は昼前から患者さんが来るが、今日は午前中から小児科の受診が多かった。何故か高齢者の受診がなく、内科でも若年者のみだった。内科の入院もなし。珍しく救急車の搬入依頼もなかった。15歳男子中学生が1週間続く、咽頭痛と発熱で受診した。溶連菌感染と思われたが、炎症反応はごく軽度上昇のみで、肝機能障害を伴っていて、おそらくEBウイルスによる伝染性単核球症のようだ。

 入院は小児科で2名。1歳3カ月に女児が5日前から咳と発熱が続き、内科小児科医院を2回受診していた。症状が続いて当院を受診した。胸部X線で左上肺野と心陰影背側に肺炎に浸潤影がありそうだった。もう一人は13歳女児で生まれつきの障害がある子供だった。感染症にかかったり、ストレスがかかると食事が取れなくなって入院を繰り返していた。今日はいつもの入院する時ほどではないが、母親はこうなると数日点滴しないと改善しないという。病棟を診に来ていた小児科医にお願いした。

 大学から日当直で来るはずの外科医が来なかったために、大学病院に連絡して、別の外科医が来ることになった。たまたま外科で受診する患者さんは少なかったのが幸いだった。今日の当番だった外科常勤医がカバーしていた。

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食べられない高齢者、高血糖の高齢者

2012年11月02日 | Weblog

 80歳女性が1週間前から食べられなくなって受診してきた。腰が90度以上曲がっているので、胸の下はわすかに腹部があり、すぐ骨盤になっている。やせて骨と皮状態で、外見は実年齢よりさらに5~10歳年上に見える。今時の高齢者はもっとはりがある。普通の単純X線は撮影困難で、胸腹部CTで検索したが、通常の角度ではないので読影がむずかしい。肺炎はなかったが、消化管の検査はできればやりたくない、というかできるかどうかわからない。とりあえずは入院して点滴で経過をみるしかないが、それでも食べられない時はどうしたものだろうか。

 1年半前に高血糖高浸透圧症候群で入院した86歳男性が、また血糖800と高値になって、多飲・多尿・体重減少をきたして、通院している内科クリニックから紹介されてきた。血清ナトリウムとBUNも高かった。入院して点滴とインスリン注射を開始した。これまで何とか経口血糖降下剤で治療していたが、今回はインスリン自己注射にするしかない。当然認知症のある患者さんができるはずもなく、同居の嫁にしてもらうしかない。入院早々に廊下まで歩いてきて放尿したと病棟看護師がら言われてしまった。

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脳梗塞ではなくて貧血

2012年11月01日 | Weblog

 内科医院から脳梗塞疑いで85歳女性が紹介されてきた。神経内科に依頼があり、救急搬入された。言語障害、つまり呂律が回らないということだった。来てみると著明な貧血があり、Hb4だった。バイタルに問題なかったので、点滴(ソルラクト)をしながら、血液検査の結果が出るまでに頭部MRIが行われたが、脳梗塞はなかった。消化管出血が疑われて、輸血の準備をしながら、緊急内視鏡が行われた。結局出血性胃潰瘍で消化器科に入院となった。貧血がひどく、しゃべり方もおかしくなっただけだった。ここまで貧血がひどいと顔色をみただけでわかりそうな気がするが、検査なしで身体診察と訴えだけで判断するのは難しいのだろうか。

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