なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

無気肺

2024年04月28日 | 呼吸器疾患

 4月12日(金)の夜間に隣町のグループホームに入所している96歳女性が酸素飽和度低下で救急搬入された。

 当直は外部の病院の先生(外科)で当方は内科当番だった。連絡を受けて、点滴の指示を出した。13日(土)は当直だったので、午後から病院に来て診察した。

 3月から酸素飽和度低下が続いていた。頻呼吸にさせて酸素飽和度を上げて、その時のいい値を記載して、そのままホームで経過をみていた。

 普通病院を受診させると思うが、患者さんは酸素飽和度低下時も症状はなく、発熱もなかったので、様子をみていたらしい。家族には、ホームでは在宅酸素療法(HOT)はできませんと説明されていた。救急要請した日は、どうやっても酸素飽和度が上がらなかったらしい。

 胸部X線・CTでは左肺に浸潤影とも無気肺とも浸潤影ともとれるような陰影を認めた。血液検査(時間外は簡易検査)で炎症反応が陰性で、当直医は無気肺としていた。酸素吸入だけ指示して入院としていた。(食事はとれる)

 

 翌日病室に見に行くと喘鳴が聴取された。喘息の既往もなく、喫煙歴もなかった。心不全でもない。ステロイドを土日に点滴静注することにして、気管支拡張薬とLT受容体拮抗薬の内服も出した。認知症で吸入は難しい。

 その後喘鳴が出没したが、消失していった。抗菌薬(セフトリアキソン)を投与していたが、血液検査再検でも炎症反応は陰性で中止した。

 いつもの呼吸器外来に来ている先生(大学病院から)に相談したが、「何ですかねえ」といわれた。大動脈近傍に腫瘍の疑いがあるかもしれないともいわれた。いい痰はとれないが、喀痰細胞診を提出した(陰性)。腫瘍マーカーはPRO-GRPが正常域をわずかに上回ったが、小細胞癌とも思えなかった。

 4月24日に胸部CTを再検すると、左肺の陰影は軽減して、左肺の容積が広がっていた。ところが、今度は右肺下葉背側に浸潤影様の陰影が出現した。air bronchogramも伴う。血液検査では炎症反応は陰性だった。

 呼吸器外来の先生にまた相談すると、「これは無気肺ですねえ」ということだった。体格のいい超高齢者で呼吸自体は弱いといえば弱い(低換気)。気管支の中枢側で不完全な無気肺になると、末梢の気管支が描出されるので、浸潤影とはいえないそうだ。

 去痰薬の投与、ネブライザー吸入、体位交換による去痰を図るしかないが、薬以外はうまくいくだろうか。

 

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