なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

やはりきちんと注射してなかった

2014年06月24日 | Weblog

 89歳男性が数年前から糖尿病で通院している。県境に近い隣町で独り暮らしをしていた。そこの診療所から、血糖コントロール不良で紹介された。インスリンを導入して、自己注射にした。ペン型だと十分に押せないので、当時高齢者で時々使っていたイノレット30Rを朝夕注射としていた。血糖コントロールは改善せず、低血糖になっても危ないので朝22単位の夕10単位の指示だった。通常は経口血糖降下薬と併用だが、何を処方しても「具合が悪くなるので飲んでない」と言われて、インスリンのみという変則的な治療だった。

 HbA1cが10%以上になり、12%、14%とどんどん上昇してきた。自覚症状は、自称なしだった。口渇や頻尿を尋ねても、簡潔に一言「ない」と言う。食事は好きなように食べているらしいが、それは容認せざるを得ない。認知力が低下していると思われ、インスリン注射がきちんと行われていないと判断された。一度入院してもらい、規定通りインスリンをすると血糖がどうなるかみたかったが、頑として入院は拒否する。

 そのうち一人では通院できなくなり、娘さんが連れてくるようになった。娘さん宅に泊まることもあるという。娘さんはずっと同居でいいというが、患者さんはすぐに自宅に帰ってしまう。何でも、飼っている猫たち(正確には野良猫に餌を与えているだけ)が心配というが、猫よりご本人が心配だった。

 困ってはいたが、具体的にはどうしようもなく、受診するたびに入院を勧めては、拒否して帰るということを繰り返していた。そのうちにやっと娘さん宅に同居するようになった。インスリン注射を娘さんにしてもらうように言ったが、本人が自分ですると言ってきかなかった。娘さんとしても、父はちゃんと注射しているという気持ちがあって、介入を嫌がっていた。前回HbA1cが17%でも入院を拒否して帰った。様子がおかしい時は、救急車で連れてくるようにと娘さんに伝えていた。

 それからは、娘さんが注射するところを観察して指導するようになった。すると、どうも注射しきっていない、つまり最後まで押し込まないでやめてしまうのに気づいた。テレビを見ながら、押していて最後まで注射したかどうか確認していないという。また、きちんと朝夕注射をしているわけでもない。ようやく、娘さんが注射をしてくれるようになった。今日はHbA1cが14%と、1か月で3%低下していた。

 朝は娘さんが注射できるが、患者さんは午後5時ごろ夕食を食べて7時には寝てしまうので、それより娘さんの帰宅が遅いと夕の注射はできないという。夕の分は食後でもいいことにして(まだ起きていれば食後に注射する)、すでに寝てしまった日は夕のインスリンなしでもいいことにした。とりあえず朝のインスリンだけでも確実にできれば以前よりずっといい。(娘さんが注射するならペン型に変更しようというと、慣れているのでイノレットでいいという)

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