月曜日の夕方にめまい・ふらつきの80歳女性がクリニックから紹介されてきた。救急当番は内科の若い先生だった。
当院の神経内科にパーキンソン病・糖尿病・高血圧症で通院していた。その日は午前11時から友人たちとカラオケをしていたそうだ。12時ごろに歌おうとして起立したところ、ふらつきを感じた(歩行はできる)。その後午後3時までカラオケをしていたが、ふらつきが続いたので、友人といっしょにクリニックを受診した。
脳梗塞疑いとして当院にそのまま救急搬送になった。意識は清明。ふだんから上肢の振戦はあるが、ふらつくことはなかったという。
脳梗塞疑いとして頭部MRIを行うと、脳梗塞ではなく、脳出血(右被殻出血)だった。改めて頭部CTで確認すると、普通にだれが見てもわかる脳出血が描出された。
午後5時に診療材料委員会をしている時に若い先生から連絡が来て、脳出血の患者さんをどこの病院に送りましょうかという。まず地域の基幹病院脳外科に連絡して、受け入れできなければ他の2病院に連絡するように伝えた。(診療材料委員会では院内にある個人防護具PPEの在庫をチェックしていた)
救急室に行くと、診療情報提供書を書いていた。基幹病院で受け入れ可能という。若い先生はその日はそのまま当直だったので、ちょっとのんびりした雰囲気だった。先方は待っているので、急いで救急車を呼んで搬送してもらった。
脳出血は頭部CTで診断がつくので、通常は頭部MRIまでは行わないで脳外科のある病院に搬送になる。今回はMRIから行ったので、超急性期脳出血のMRI像が描出された。
左から、拡散強調画像で高信号、FLAIR像で高信号、T1強調画像で軽度低信号(水より少し高い)、T2強調画像で中等度の高信号(水よりは低い)になる。(「ユキティの「なぜ?」からはじめる救急MRI」熊坂由紀子著 MEDICAL VIEWによる)
頭部CTでわかりにくい微量~少量のくも膜下出血は頭部MRIのFLAIR画像で診る。脳出血でもFLAIR画像でみれば、わかりやすい。拡散強調だけだと脳梗塞と勘違いしてしまいかねない。
後で頭痛があったか確認すると、頭重感程度だがふだんはない頭痛あったのだった。頭痛があれば脳梗塞ではなく、脳出血疑いになる。