自宅のベット脇で倒れて動けないという86歳男性が救急搬入された。大腿骨頸部骨折かと思ったが、それはなかった。特に麻痺もなく、難聴はあるが、意識は清明だった。39.7℃の発熱があった。奥さんの話によると、ふだんは杖歩行だが、自宅周囲の散歩はできるそうだ。奥さんが外出から帰って、倒れて起き上がれなくなっているのに気付いて救急要請した。トイレ(排便)を使ったらしく汚れていたという。午前中に寒気を訴えていたらしく、気候の問題かもしれないが、悪寒があったととらえていいのだろう。
診察では心肺には異常を認めなかった。腹部は右下腹部に圧痛があり、反跳痛もあるようだ。デファンスはたぶんない。肺炎はなく、尿混濁もなく、肝機能障害もない。造影CTを撮ると、パッと見には大きな異常はないように思われたが、矢状断と冠状断で詳しく見ると、虫垂壁が肥厚していた。その周囲の脂肪織に炎症像(dirty fat sign)もある。発熱の程度からは穿孔による腹膜炎を予想していたが、破れてはいないようだ。放射線科医に画像所見を確認してもらって、外科医に診察をお願いした。入院患者さんのCVカテーテル挿入で放射線室に降りてきたところを、つかまえてお願いした。仕事が立て込んで忙しところに依頼してしまったことになる。
この方は3年前に胃癌が発見されたが、東日本大震災があって手術が延期になった既往があった。2か月遅れて行われた手術は治癒切除になった。その後外科の外来でフォローしていて、今年の4月にもCT検査をうけて再発なしと診断されている。ただ、術後に誤嚥性肺炎になって、しばらく人工呼吸器管理になっている。今回ラパロで虫垂切除を行うというが、術後管理が大変かもしれない。
内科外来に93歳女性が呼吸困難で受診した。下半身に浮腫があり、喘鳴が聴取された。胸部X線・CTで中等度以上の両側胸水貯留がある。循環器科医にお願いして、心エコーでみてもらった。EFは50%くらいで、意外に良かった。心電図で心房細動になっていて(以前はなかった)、それとCTで見ると冠動脈3枝の石灰化が目立つ。年齢を考えると、すみませんねえという依頼だが、循環器科のCCUに入院になった。