
今回ご紹介するのは映画「ナラタージュ」です。
-----内容-----
2006年版「この恋愛小説がすごい」第1位に輝いた島本理生の同名小説を、松本潤&有村架純の共演で映画化。
「世界の中心で、愛をさけぶ」などで知られる恋愛映画の名手・行定勲監督がメガホンをとり、禁断の恋に落ちる高校教師と元生徒が織り成す純愛を描く。
大学2年生の泉のもとに、高校時代の演劇部の顧問・葉山から、後輩たちの卒業公演への参加を依頼する電話がかかってくる。
高校時代、泉は学校になじめずにいた自分を助けてくれた葉山に思いを寄せていたが、卒業式の日に起きたある出来事を胸にしまったまま、葉山のことを忘れようとしていた。
しかし1年ぶりに葉山と再会したことで、抑えていた恋心を再燃させてしまう。
一方、葉山もまた泉に対して複雑な思いを抱いていた。
-----感想-----
※小説「ナラタージュ」(著:島本理生)の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
今日は映画「ナラタージュ」を観に行きました。
今日から公開の「ナラタージュ」、私は10年前の2007年に小説を読みました。
ナラタージュとは映画などで、ある人物の語りや回想によって過去を再現する手法のことです。
冒頭、社会人となった工藤泉が雨の降る夜、職場で自身が持っている懐中時計を懐かしく思うところから物語が始まります。
その懐中時計は高校時代の演劇部の顧問・葉山貴司先生から貰ったものでした。
そこから泉が過去を回想する形で物語が進んでいきます。
大学2年生の泉のもとに、葉山先生から電話がかかってきます。
演劇部の人数が少なくなっているため、後輩たちの卒業公演に助っ人として参加してほしいという依頼でした。
高校時代、葉山先生のことが好きだった泉はこの依頼を受けるとともに、再び葉山先生への想いが募っていきます。
物語は工藤泉役の有村架純さんの思いを吐露するナレーションとともに進んでいくのですが、このナレーションが演技と同じくとても静かでした。
私は「ナラタージュ」は雨の降る日によく合うイメージを持っていて、このイメージと有村架純さんの演技とナレーション、さらに松本潤さんの憂いを帯びた演技それぞれが凄く良く合っていました

泉と同級生で同じく演劇部だった山田志緒、黒川博文、さらに黒川の大学の友達で演劇経験のある小野怜二も卒業公演に参加します。
この四人で小野の部屋に集まった時、小野が注文していたピザを取りに行くことになり、お金を下ろしたかった泉も一緒に出掛けます。
二人それぞれピザなどの入った袋を持っての帰り道、小野が「重いでしょ、持とうか」と声をかけます。
すると泉は「小野君の持ってるほうが重いでしょ」と言って遠慮し、さりげなく袋の持ち手を小野君から遠くなる左手に変えていました。
私は持ち手を小野君から遠ざける様子を見て、後に付き合うことになるこの二人の破局を暗示しているような気がしました。
そしてもしこれが葉山先生だったら持ってもらったのではと思いました。
小野君は泉に好意を持っていて想いを伝えますが泉は「ごめんなさい」と断ります。
そのすぐ後、泉は風邪を引いて寝込んでしまいます。
すると葉山先生が泉の部屋にお見舞いにやってきて、何とキッチンに立っておかゆを作ってくれます。
できたおかゆを寝込む泉のベッドサイドに持ってきた葉山先生は、おかゆをスプーンで掬って「食べさせてあげようか?」と憂いを帯びた雰囲気で言います。
泉は「からかわないで下さい。熱が上がりますから」と断りますが、これは「葉山先生のそんな気遣いにドキドキしています」と言っているのと同じに見え、見ている私も胸がときめきました

さらにはすりおろしリンゴも作って食べさせてあげようとし、泉は「私の想いに応えられないのに、何でこんなに優しくするんですか?」といったことを言っていました。
葉山先生の煮え切らない返事に怒った泉はそのままふて寝しますが、葉山先生が帰る時にその後ろ姿を見ていたのが印象的でした。
本当は帰ってほしくなかったのではと思います。
高校の卒業公演の稽古では、演劇部ヒロインの塚本柚子の様子がおかしいことに泉も葉山先生も気づきます。
柚子はある場面でセリフが言えなくなり、もう一度やり直そうとしてその場面の台本を読んでいる時に手が震えていました。
私は小説を読んでいたのでなぜ手が震えているのかが分かりました。
後に起きる悲劇の前兆です。

高校三年生の時と大学二年生の時の回想でそれぞれ、泉が映画館から出てきた時に雨が降っているシーンがありました。
高校三年生の時は傘を持ってきていなかった泉が映画館の出口で立ち尽くしていると、同じ映画を観に来ていた葉山先生が後ろから歩いてきて、傘を差しかけてくれます。
そして二人は雨の中を一緒に歩いて帰りました。
「二人の距離が近すぎて、私の心臓の鼓動が、葉山先生に聞こえてしまうのではと思った」というナレーションが静かで淡々としていながら胸に迫る雰囲気があり良いなと思いました

大学二年生の時は泉は傘を持ってきていて、映画館の出口で傘を差して歩き始めます。
しかし少し歩いてから振り向いて映画館の出口を名残惜しそうに見ているのが印象的でした。
「葉山先生が歩いてこないかな…」と思っていたのだと思います。
葉山先生には美雪というかつて一緒に暮らしていた奥さんがいて、葉山先生の母親と一緒に暮らしている中で次第に精神的におかしくなってしまい、ある事件を起こします。
それ以来美雪は実家に帰り、葉山先生とは別居しています。
葉山先生の家にお邪魔した泉は、部屋に葉山先生が美雪と一緒に映った写真が写真立てに入って置かれているのを目にします。
これは葉山先生がまだ美雪とのことを完全に断ち切ったわけではないことを意味しています。
泉の怒ったのでも愕然としたのでもない、寂しそうな表情が印象的でした。
「やはり葉山先生は私の想いに応えてはくれない」という思いが湧いたのではと思います。

葉山先生の身にも事件が起きていて、別居して一切音信不通になっていた美雪との関係が変化する時が訪れようとしていました。
泉は初めて、別居している美雪との関係が今どうなっているのかを葉山先生から聞かされます。
泉は小野君と付き合い始めます。
これは葉山先生への想いを断ち切ろうとしたのだと思います。
しかし小野君が泉のことを「工藤さん」から「泉」に呼び方を変えたのに対し、泉は「小野君」のままです。
さらに小野君は泉が深夜に携帯電話に掛かってきた葉山先生からの電話に出ていたのを凄く気にしていて、「あの電話は誰からだったのか」としつこく聞いていました。
「携帯、見せて」と言って泉の携帯の着信履歴を調べる様子を見て小野君は嫉妬深くて嫌な奴だなと思いました

電話の相手が葉山先生だと知った小野君は泉を詰る言葉ばかりぶつけていて、泉が「こちらから掛けたわけではない。さらに今は小野君と付き合い始めたと言った」と言っても聞く耳を持とうとしませんでした。
ある日泉が夜道を歩いていると、知らない男がずっと後ろを歩いていることに恐怖を感じます。
助けを求めて小野君に電話すると、「俺が助けにいったら、俺のことをもっと好きになってくれる?」と言っていました。
愕然とする泉に小野君は泉の葉山先生への想いを引き合いに出し、泉が助けを求めている状況なのにまたしても泉のことを詰っていました。
嫉妬に狂う小野君にとって、泉の身の安全の確保より自身の嫉妬心を泉にぶつけるほうが大事ということであり、これは酷いと思います。
小野君は泉がずっと持っていた、高校の卒業式の日に葉山先生に渡そうとして渡せなかった想いを綴った手紙を、勝手に封を開けて読んでいました。
いくら付き合っているからと言っても封のしてある手紙を勝手に開けて読むのは最悪だと思います。
また、小野君は泉に別れたいと言われると「悪いと思っているなら手をついて謝れ」と言ったり、自身が作ってあげた靴を「靴、脱いで帰って」と意地の悪いことを言ったりします。
ところが泉が本当に土下座したり靴を脱いだりすると小野君は大きく動揺していました。
意地の悪い嫌なことを言っていましたがそれが自分自身をより惨めにしていたのが印象的でした。
「泉のことを離したくない」と別れたくない想いを露わにする小野君に対し、泉の「同じだよ。小野君が私のことをそう思ってるのと同じくらい、私は葉山先生のことを思ってる」という言葉は物凄く印象的でした。
そして小野君の想いが泉に届かないのと同じく、泉の想いも葉山先生には届かないのが辛いです。
小野君はたしかに泉のことを好きでしたが、自身の嫉妬心に勝てなかったことで苦しむことになりました。
映画には出てこないのですが小説には泉の婚約者が登場して、その婚約者は泉がこの先もずっと葉山先生のことを忘れられないであろうことを受け止めていました。
受け止められた婚約者、受け止められなかった小野君という差なのだと思います。
小野君と別れた泉は葉山先生に「最後にもう一度、葉山先生の家に上がりたい」と言います。
泉はもう葉山先生に想いが届くことはこの先ずっとなく、さらに最後の日が近いことを悟っていました。
映画の最後の場面で、小説で凄く印象的だった「それが、私が葉山先生に会った、本当に最後のときだった。」をナレーションで入れていないのが印象的でした。
ただし入れていなくても、泉の号泣を見ればもう葉山先生に会うことはないのが分かると思います。
そしてナラタージュ(回想)が終わって、思い出の宿る懐中時計が針を刻んでいたのが印象的でした。
これは小説で同じく印象的だった「いつまでも同じ場所にはいられない」という言葉が思い浮かび、泉が前を向いて歩き出せたことが分かり、私は救われた思いがしました。


TVやネットでのストーリー紹介や宣伝、そして、読書日和から得る情報によると、この小説&映画は、日本人の多くが好きそうな感じなと思います~。
そして、主演女優さんは、関西出身の方で、親しみ感じるし、女優として結構好きなので、映画、機会があったら、見に行きたいですね~。
ナラタージュと言うタイトルや色々なところから感じるのは、主人公の女性は、”一生に一度の恋”をした事実を、過去の良き思い出として、新しい人生を歩んでいるんだなと言う事。新しい人生を歩めていると言うのか。
ナラタージュと言うタイトルの意味から、自分を客観視して話せている事を感じるので、冷静に自分の過去の恋を受けとめているんだろうなと。
その恋は、甘い思いも苦い思いもあったとしても、きっと彼女の人生を豊かにしてくれる糧になったのではと感じます~♪
私も有村架純さんは好きです
演技力もあって良い女優さんだと思います。
葉山先生のことは忘れられない思い出として残っていますが、主人公の工藤泉は新しい人生を歩めています。
映画の最後のほうで、動いている懐中時計を見た時、思い出を受け止めて新しい人生のほうに気持ちを向けられている気がしました。
ビオラさんも機会があれば観てみてください