読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

「星のしるし」柴崎友香

2014-08-17 22:51:14 | 小説
今回ご紹介するのは「星のしるし」(著:柴崎友香)です。

-----内容-----
UFO、占い、家族…
30歳を前にした会社員・果絵と周囲の人々をつなぐ、いくつもの見えないしるし。
悩みがないわけじゃない。
でも、いいあらわせない大切なものが輝きはじめる。街と人々をやさしく包みこむ、著者の新たなる傑作。

-----感想-----
主人公は野村果絵(かえ)。
今年で30歳になる29歳です。
時期はお正月で、カツオと皆子とともに、奈良県と京都の境目にあるファミリーレストランで待ち合わせていました。
皆子は果絵と同じ29歳で、カツオは20歳の貧乏学生です。
会話の中で占いの話になって、皆子は自身のことを占ってもらうことにします。

果絵の会社には女性が六人居て、その中の最年長に柿原さんという人がいます。
この人は果絵に「ライフカウンセリング」というパワーストーンを使ったヒーリングを勧めてきていて、この作品には占いやヒーリングといったものがよく出てきます。

カフェ「スターバックス」の騒がしさの表現は上手かったです。
こういうのを「ガヤガヤ」というのですが、その表現は使わず、店員さんの声とお客さんの声をそれぞれ描写して、間接的に「ガヤガヤ」を表現していました。

皆子には岡ちゃんという、果絵と皆子の同級生でもある夫がいます。
果絵にも朝陽(あさひ)という彼氏がいます。
ほかにも果絵たちの2つ下の直美など、何人かの人が登場します。
ただあまり人物像は深く描かれていなくて、軽くサラッとした登場になっているのが特徴です。
会話を読んでいて、これは誰の言葉だろうかと分からなくなることがあります。
しかしそれでも会話自体が他愛ないものであるため、問題なく読んでいけました。

果絵は柿原さんに勧められたライフカウンセリングに行きます。
パワーストーンを使ったヒーリングの施術を受けていましたが、意外と体の疲れが取れるような効果はあったようです。
ただ私はパワーストーンには懐疑的です。
パワースポットであれば、明治神宮の神聖な空気の凄さを知っているためそれなりに信じていますが、石だとあまり信じる気にならないです。

また、果絵は今度は占いにも行きます。
先にその店に行ってはまった様子の皆子に連れられて行きました。
この占いは手相を見て占うお店だったのですが、いかにも占い師という出で立ちの人ではなく、柔らかい物腰の洒落た感じのお姉さんが出てきたのが意外でした。

果絵の母の様子が何だかおかしくて、もしかして初期の認知症かなと思いました。
何かをし始めるとそれまでやっていた別の何かをすっかり失念してしまったり、妙にボーッとしたりといった場面がありました。
ただ後半は問題なく一人で徳島に行ったりもしていたので、単にこういう性格なのかも知れません。

また、朝陽が果絵の彼氏であることは最初は示唆だけされて、読み進めていくと確定しました。
最初から彼氏として登場させるのではなく、示唆だけでの登場なので、読むほうは「この人は彼氏なのか?」と考えながら読んでいきました。
柴崎友香さんの作品ではこういう描写をしていることがあります。

占いについて、「だけど、こういうことのために、みんな占いに行くんだろうということは、うすうすわかっていた」と果絵が心の中で言っている場面がありました。
これは、占うというよりは、自分のことを理解し、慰めてもらいたいという気持ちのほうが強いということです。

また朝陽の「占いはカウンセリング。人生相談やって。話聞いてもらうことに意味があんの」という言葉も印象的でした。
私も占いにはカウンセリング的な意味合いもあるのではと思います。
さすがに占い師とカウンセラーを同一視はしませんが、どちらも人に相談するという共通点があります。

物語の終盤に石切神社というのが出てきました。
病気平癒を祈願する神社として人気があるとのことです。
そこで「お百度」をやっている人達がいました。
皆子はそれについて「自分でどうにもなれへんことがあって、できることはこれぐらいしかなかったら、やるんちゃうかな。わたしも、果絵さんも」と言っていました。
私もたぶん、やると思います。
最後は元を担いでみたり、神様に頼んでみたりすると思います。

全体的に占いやパワーストーンによるヒーリングなど、神秘的なものが物語に大きく関わっていました。
そういったものを試しつつ、果絵は極度に傾倒することもなく、自分を見つめられていたのではと思います。
淡々としつつもなかなか興味を惹く物語でした。


※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。

※図書ランキングはこちらをどうぞ。