湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

1964年にタイムスリップ

2010-03-01 20:39:33 | お休み日和


昭和39年に開催された東京オリンピックで、女子バレーボールの決勝戦が行われた『駒沢屋内球技場』である。
そう、日本代表が『東洋の魔女』と称され金メダルを獲得した舞台だ。外から見たことはあったが、昨日初めてその内部への潜入に成功した(本当はただFリーグ最終節 を観戦しただけ)。
いや、実に雰囲気がいいですね。国立競技場代々木体育館東京体育館 、駒沢体育館などあのころ建てられたコンクリートものは、どれも昭和の香りに満ち満ちている。いくらペイントしなおしても、全体に暗い印象がある。幾多の名勝負が繰り広げられてきたのだという重みと、いや本当にそんなことがここであったのかよという不思議な思いも同時にこみ上げてくるのだ。
椅子に腰を下ろしてみよう。直接お尻で昭和を実感できる。小さくて硬くて冷たい。観るものに対するホスピタリティがゼロである(笑)。公共施設に“サービス”という概念などない時代だったのだ。観る側だって、それが当たり前だと思っていたから文句も言わなかったのだろう。それより、目の前で展開される熱戦に夢中になっていたに違いない(実際、昨日は僕もゲームが始まったらここにいることを忘れていた)。
市川崑監督の記録映画『東京オリンピック』(東宝DVD)にも女子バレーの決勝の模様が収録されており、白熱する試合を見つめるスタンドが確認できる。ついでに、ここでのスタンドの薄暗さが今も健在であることもわかる。
さて、空調も効きが悪いのかちょっと冷えてきたのでトイレへ行こう。おぉ、男子トイレには懐かしい朝顔が並んでいる。水道管などもおそらく当時のままだろう。手洗い場には、固形の石鹸がネットに入れられている。施設が昔のままだとしても、液体石鹸のボトルくらい導入することだって可能だと思うが、これは慣習を励行しているのか。それとも担当者のこだわりか(笑)。


さらに、この建物に入って見渡してみると、どうしても気になることがある。
ガラス張りの壁面だ。ガラス面に誰かが慌ててペンキを塗ってしまったような跡が見える。


慌てて塗ってしまったらしい(笑)。
もともと「摺りガラス」仕様で外光を取り入れる設計だったのだが、竣工後競技者にとって眩しいことが発覚、急いで塗ったとのこと(そういえば学校の体育館でも球技はカーテンを閉めて行われる)。その跡が今でも生々しく残っているというのだから面白い。
今の技術で新しい素材に張り替えることも可能だろうが、昭和遺産として、このまま遺してほしいものだ。「2番じゃだめなんですか」的な仕訳論理で、予算は回ってこないか。なら安心だ(笑)。






ちなみに、この本によると、設計は「ソニービル」「東京芸術劇場」などでおなじみの芦原義信建築設計研究所とのこと。陸上競技場や象徴ともいえる管制塔の設計者とは異なるために統一感がないとも書かれている。その陸上競技場が映画『東京オリンピック』のタイトルバックに登場している。