湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

バックオーライ

2009-02-19 22:58:20 | 思い出日和


駅から徒歩圏内に住んでいたので、なかなか路線バスに乗る機会がなかった。
子供の頃、母親の実家に行く時にはバスを使った。年に何度かのこのチャンスに、僕は必ず運転手さんが見える席を選んだ。
駅前のごちゃごちゃした商店街を抜け大きな街道を横切ると、また狭い道が続く。角を曲がるときなどは、いったん反対側の塀に鼻先がぶつかりそうなくらい飛び出しておいて、運転手さんは一気にハンドルをグルグル回し始める。体を大きく揺らしながらのハンドルさばきから、一瞬たりとも目が離せない。
乗用車のハンドルは運転手に対して斜めだが、バスの場合は床面とほぼ平行である(ように見えた)。その細く黒いハンドルに、上から被せるように置かれた白い手袋が眩しかったのを覚えている。
そして、クラッチを踏みながら、床からニョッキリ出ている長い棒状のギアをガリガリやるのだ。何度も、何度も。
古いバスだ、いま思えば、なかなかうまく“入らなかった”のだろう。でも、その仕草さえ職人技のようで、僕を虜にした。
急カーブがあったり、木が道路に出ていたり、狭い所で対向車とすれ違ったり、終着のバス停まで運転手さんの奮闘は続いた。まだ、ボンネット型のバスが走っていたころの話だ。
だが、運転手さんは何事もなかったように、いつでも笑顔で僕を見送ってくれるのだった。

写真は相鉄の観光バス。観光バスになると、なぜか一番後ろの席が好きだった。の割には、浮かない顔(笑)。
スライドさせる窓が懐かしい。屋根のウインカーがカッチョイイ!