湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

星のおじさま

2005-09-19 20:44:34 | 湘南ライナーで読む


「館長くんてさ、星の王子様だよね」
突然、そんな声をかけられたのは20代前半の頃のことだった。
前の職場で、しかも別のセクションの役付者Kさんから。
「はぁ?」
「読んだことない?」
「はぁ。でも、王子様って…」
「うん、じゃなかったら、その作者のサンテグジュペリに似てるんだよね」
「はぁ、ありがとうございます」
何のことだかサッパリわからなかった。
でも、だからといって『星の王子様』を読んでみようとも思わず、今日になってしまった。
それが、以前興味深く読んだ『ハワイイ紀行』の著者である池澤夏樹氏による新訳が出たというので思い切って読んでみた。
読んでみたら、面白かった。後半はワクワクしてきて、読みながら顔がニコニコしてきてしまって、一気に読んでしまった。
でも、考えさせられた。考えてわからなくなっちゃったところもあった。
でも、ハッキリわかったのは、20代の頃のあのKさんの一言が単なる勘違いであったこと。
Kさんにとっては僕がどこか他の星からやってきた宇宙人という印象だったのかもしれない(“新人類”世代ではなかった)けれど、僕は星の王子様のように、サンテグジュペリのように、ピュアではなかった。恥ずかしいくらい似ても似つかない。
本当のことをいえば、ずっと読むのが怖かったのだ。
「似ている」といわれた人物が、どんなキャラクターなのか知るのが怖かったから。
勘違いとはいえ、決して悪い意味での勘違いでなったことがわかっただけでも、よかった。
もう長いこと会っていないけれど、Kさんの中では僕は今でも星の王子様なのだろうか。
すっかり『干しのおじさま』になっちゃったけど。