
「『こころ』って、やっぱりあの『こころ』ですか?」
「そう、あの『こころ』」
「でも、なんであの『こころ』なんですか?」
「いやあ、姉さんがあの『こころ』が好きでね(笑)」
いつも入口のレジの所に座っているお父さんが、眼鏡をはずしながら答えてくれた。
最近また通っている東大前の古い喫茶店『こころ』。今日は、読み始めたあの『こころ』を手にウインナーライス&コーヒーだ。
実は、先日書店で面白い『こころ』を発見した。なんと、横書き。
つまり、書籍化されたケータイ小説のスタイルの『こころ』なのだ。
これは素晴らしい。ケータイ小説や横書きの是非はともかく、この発想には素直に感心した。文学的なものに無関心な層にとっても、とっつきやすそうではないか。
その場で手にとって冒頭を読んでみると、おや面白そう。即購入してしまった(笑)。いや、さすがに買ったのは、従来型の文庫本だけどね。
実はお恥ずかしい話、夏目漱石の著者は読んだことがない。『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』すらも。特に理由はない(笑)。たぶん、そのあたりはケータイ小説世代と変わらないと思う。
でも、そのケータイ小説を機に読んでみたら、実に面白い。
残念ながら大好きな「昭和」以前の話だし、想像はつかないはずなのだが、描かれている舞台も人物も懐かしい。そして、見事に美しいのだ。
こんな感想を抱くなんて、単にジジイになった証拠かもしれないけれど。
しかも、『こころ』で読むあの『こころ』。コーヒーは、いつもより何倍も懐かしい香りが漂ったことは言うまでもない。
※正しくは『こゝろ』です。