こんにちは、忍んでます、ナケミンです。
5/24(水)放課後に行われたシノビガミオリジナルシナリオ「胡乱なる彼岸花」のプレイ報告です。以下の文章には、多大な脚色が含まれておりますことをご了承ください。
「……とまあ、色々と説明したけれど、要するにこの”キリヒト”の首を持ってきてほしいんだよ」
やはり、食えない男であります、と『猫杓子 一辺刀』(PC2、ぐれそさん)は思う。目の前で人懐っこい笑顔を浮かべ忍務の依頼をするこの男『富美山 胡乱』を、猫杓子は不得手に感じていた。
彼が持ってきた話は、キリヒトなる忍者が斜歯忍軍の研究所一つに立てこもり、防衛機構を操作して完全に籠城している。これを捕縛、あるいは殺害せよ。というものであり、忍者としては至って普通の忍務であるが___
「それで、なぜ私達にこの依頼を?まさか、同じ流派のよしみというわけでもあるまい」
猫杓子の師、『ジョブズ』(PC1、市松の人)が尋ねる。表の世界では企業を経営している彼の言葉には、不思議と人を惹きつける力がある。そして、その内容もまた正論であった。ただの忍者一人であるならば、容易に動かせる斜歯の下忍を大量に向かわせるほうがよほど効率的であろう。その問いに対して、初めて胡乱は笑みを消した。
「ああ…それというのも、一辺刀くん、きみの因縁に関する話だ。この”キリヒト”について調査がされたんだが…20年前の事件、君の両親を殺害した下手人である、って線が浮かんできた」
両親の仇。そう聞いた途端、猫杓子は体温が数度上がったように錯覚した。
猫杓子の両親は、彼がまだ目も開かぬ赤子であった頃に殺された。当然その時の記憶などはない。しかし、両親以外に身寄りの無かった猫杓子にとって、両親の仇という明確な対象への怒りは、生きるための原動力であり、齢二十にして彼を公安隠密局に所属せしめた強い意志の根幹であった。
「……分かった。受けよう」
ジョブズもまた、感情の起伏を隠しきれない様子で答えた。指矩班に所属し、二十年前の事件を調査しに訪れた彼こそ、その時見つけた猫杓子を引き取り、親として育てた男である。件の襲撃に関しては、猫杓子と同じく思うところがある。
依頼の話がまとまり胡乱が去った後、大丈夫か、とジョブズは猫杓子に声をかけた。意識しないうちによほど深刻そうな表情になっていたのだろう。猫杓子は慌てて、大丈夫であります、と出来る限り平静な調子で応えた。
「林檎に変身するような気持ちでいろ。なんでもできるぞ」
決め台詞のつもりなのであろう、頓珍漢な言葉を聞いて、猫杓子は眉をひそめた。
メインフェイズの内容はざっくり!
第一サイクル…サイクル終了時にダメージを与える用のエニグマが余裕の解除!最適行動!
第二サイクル…胡乱が真犯人でラスボスだってバレたよ!PC1の秘密にはあなたは犯人だよっていうダミー情報まで仕込んでいたのに!
第三サイクル…手番を2つ使って、装備忍法【目付】の効果により、胡乱の奥義情報がバレたよ!ちなみにPC2の秘密は現状抜かれてないよ!PC2の秘密には隠しプライズ「彼岸花」が隠されてたけれど、シナリオ中最後まで登場しないよ!
研究所の最奥、鋼鉄の扉が大きな機械音を響かせて横に開く。身長ほどもある、緑色の液体で満たされた培養器が立ち並ぶ部屋。その中心にいたのは、白衣に身を包んだ狂的科学者___富美山 胡乱であった。戦闘態勢を取る猫杓子たちを、胡乱は手で制して口を開く。
「ここに来た、ということはすでに僕の真意は知っているんだろう?『彼岸花』……一辺刀くん、君の家系に伝わる秘具だ。僕はそれが欲しいだけなんだ。渡してくれれば、君の両親の死に対しても十分な賠償はさせてもらおうじゃないか。お互いに無益な血は流したくないだろう?」
猫杓子は混乱していた。二十年追い求めた両親の仇が目の前にいる。真犯人ではないが、仇であるという気持ちで自分を育ててきた師が隣りにいる。そして、仇を前にして、激情に駆られることもない自分がいる。両親の顔すら覚えていないのだ、無理も無いことである。だが、胡乱を倒す。その【使命】を忘れることはできない。
「自分は…自分は、お前を許すことはできないであります。富美山 胡乱!覚悟!」
その言葉を聞いた途端、胡乱の人懐っこい笑顔が、獰猛で邪悪なものへと変わる。この表情こそが、胡乱の本性を如実に表していた。
「ふふ、交渉決裂か。だがこれくらい、予想の範囲内だ。そして予想していたということは……対策も立てられるということだ!」
胡乱が手元の機械を操作した途端、背後の培養器のガラスが2つ割れ、緑色の液体とともに、人とも、物ともつかない肉塊____妖魔『魔像』が2体、ずるずると這い出る。魔像は敵を探すかのように一度動きを止めた後、瞬時に弾速を超えて加速し、猫杓子とジョブズ、それぞれに襲いかかる!
クライマックス戦闘はあっさり!
GM「魔像くんは生命力4か…3対2だし、生命力3にしとこ」
第一ラウンド…PC2「範囲攻撃」PC1「魔像殴る」→魔像くん一体死亡
第二ラウンド…PC2「魔像殴る」PC1「胡乱にクリティカル」→魔像くん、胡乱ともに爆発四散
GM「あれれ?」
「iPhone、発、売!」
ジョブズが奥義の名を叫ぶ。ジョブズの右の掌に突如出現した薄い金属の板が爆ぜ、胡乱の肢体を吹き飛ばす。
「ぐぅぅ…なぜ、なぜ私が負ける!ひ、『彼岸花』があれ、ば……!」
そう言い残し、胡乱は血溜まりの中へと沈んだ。猫杓子は魔像の残骸を押しのけ、胡乱へと近づく。
終わった、と猫杓子は思う。達成感はなかった。爽快感はなかった。ただ、自分の中心にあった指針が失われた、という喪失感のこもった眼差しで、すでに息絶えた胡乱を見下ろすのみであった。ふと、隣にいたジョブズが口を開くのに気づいた。
「覚えておけ。iPhone はこれから、世界中で大ヒットするんだ」
不思議と人を惹きつける言葉。その言葉を聞いた瞬間、猫杓子は一つの結論にたどり着く。ジョブズとともに、尊敬する師とともにこれからもやってゆけばいいのだ。何かを為そうとするのではない、自分のための”これから”を、彼の下で学ぼう。
決め台詞のつもりなのであろう、頓珍漢な言葉を聞いて、猫杓子は笑った。
上記の文章には多大な脚色が含まれておりますことをご了承ください。
二人用に急遽作ったシナリオでしたが、大きな問題もなく回すことができたことは重畳でした。
「シノビガミは知名度低いんだしブログでインストしたら?」という助言をしてくださったぐれそさんと、セッション後に行った模擬戦で1ゾロを出していた市松の人に感謝の意を述べて、このブログを締めようと思います。
お二方、お疲れ様でした。そして、ご参加ありがとうございました。