この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

13番目の物語。

2009-01-31 22:26:47 | 読書
 ダイアン・セッターフィールド著、『13番目の物語』、読了。市立図書館蔵書。

 ダイアン・セッターフィールドという名前に聞き覚えのある人はいないでしょう。
 それも然り、本書が彼女の処女作なのですから。
 しかし、覚えておいて損はないと思われます。いずれ彼女の名前は世に知れるはずです。
 そう思わせるだけのものが本書にはありました。

 父親の経営する古書店を手伝いながら、世間の目から隠れるようにして暮らしているマーガレットの元にある日、英国で最も著名な女流作家ヴァイダ・ウィンターから自伝の執筆を依頼する手紙が届きます。
 ヴァイダにはいくつもの偽りの生い立ちを語ってきた過去があり、マーガレットは訝りつつも彼女の住むヨークシャーへと向かいます。
 ヴァイダからすべて真実を語るという約束を取り付け、依頼を引き受けることにしたマーガレット。
 そしてヴァイダの口から語られる『13番目の物語』は驚くべきものだった・・・。

 まずは傑作といってよいと思います。
 本書には、例えばカズオ・イシグロの作品に通じる、英国文学特有の格調の高さがあります。それは同時に取っつきにくさでもありますが、実際自分はそのせいで幾度となく挫折しかけました、読み終わった今、その格調の高さはやはり特筆するに値する、そう思います。
 本書はまたミステリーの様相も呈します。
 ヴァイダが幼少のころを過ごしたエンジェルフィールド、そこに潜む邪悪と謎、そして狂気、それらは読む者の興味を捉えて離さないでしょう。
 そして本書は作者であるダイアンと登場人物であるマーガレットとヴァイダ、三人の女性の、本に対する惜しみない愛の結晶でもあります。
 本好きにはたまらない、そして羨ましくもある一冊であることは間違いありません。

 上下巻合わせて3600円するので、おいそれとは購入しかねるとは思いますが、図書館に蔵書であれば是非借りて読んでみて下さい。
 至福の読書体験が出来ること、請け合いです。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
そそられる (雫石鉄也)
2009-02-01 15:36:39
これはおもしろそうですね。
そそられます。いずれ読みたいと思います。
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いいと思いますよ。 (せぷ)
2009-02-01 22:39:32
これはいいと思いますよ。

処女作でこれだけのものが書けるのであれば、ダイアン・セッターフィールドの才能は本物だと思います。

機会があれば是非ご一読下さい。
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