ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題 「現場からの医療改革レポート」  Japan Mail Media

2009年03月31日 | 書評
絶望の中の希望ー医師は「医療崩壊」の現状をネットに訴える 第56回

第23回(2009年1月28日)「迷走する医療行政ー骨髄移植フィルター騒動からみえるもの」  東京大学医科学研究所 上昌広 

 昨年12月19日アメリカのバクスタージャパンは骨髄移植フィルター「ボーンマロウコレクションキット」が供給できなくなると発表した。翌日読売新聞が記事にしたことで、骨髄移植関係者に動揺が走った。「ボーンマロウコレクションキット」とは骨髄提供者から採取した骨髄液をろ過して骨片などの夾雑物をとりのぞく器具である。このキットを製造するメーカーは市場が小さい事もあって世界ではアメリカのバクスター社とベンチャービジネスのバイオアクセス社の2社のみであった。日本ではバクスタージャパン1社が厚生省の承認を得ており、毎月約150セットを供給していた。ところが昨年秋いらいの米国金融不安から企業の倒産買収が進み、バクスター社は血液事業を投資会社に売却した。買い取った投資会社は経費を切り詰める人件費の安いドミニカに工場を移転したため、FDAの再認可が必要となった。その際に手続きが大幅に遅れいまだに供給体制ができていない事態となった。日本国内にはバクスタージャパンはこのキットを493個在庫しているが、これでは2009年3月までしか持たない。アメリカではもう1社バイオアクセス社があるので問題ないが、日本は市場が小さいこともあってバイオアクセス社は日本進出をしていなかった。たしかに日本の医薬品市場は世界の10%に過ぎず、日本市場は無視されたようだ。そこで厚生省の外郭団体「骨髄移植推進財団」がバイオアクセス社の「ボーンマロウコレクションキット」を600個確保したといわれるが、問題は日本で健康保険診療による使用可能とするための治験認可申請をどうするかである。あと2ヶ月しかない中で厚生労働省は強権を発動して書類審査だけで済ませるようバクスタージャパンを動かしている。認可のない医薬品器具の使用に残された道は、健康保険診療をあきらめて自費診療とすることや、高度医療評価制度を利用する事である。厚生労働省は混合診療禁止の原則から一部に自費診療が入り込む事に絶対反対である。骨髄移植を全部自費でやったら1000万円近くかかるので出来る相談ではない。高度医療評価制度は手続きが複雑で、誓約書を提出しかつ罰則が厳しいので、造血細胞移植学会は利用しないと説明した。厚生省官僚は患者の命より、自らの作った制度の維持を重視しているようだ。又この1ヶ月間情報を公開せず秘密裏に対策を講じてきた厚生労働省にたいして、NPO法人「全国骨髄バンク推進協議会」は署名を集め、この問題の情報公開と代替キットの使用許可を求めた。またこれを受けて「医療危機打開超党派議員連盟」と舛添厚生労働大臣が後押しをして、1月23日厚生労働省はしぶしぶ記者会見を開いた。この「ボーンマロウコレクションキット」騒動から見えてくるのは、業界への強権発動で極短時間でことは解決すると見た緊急事態での官僚の秘密主義である。治験の遅さは世界でも定評があり、世界の製薬会社は日本を敬遠してきた。このあたりのシステムの検討なしには今後の医薬品と医療器具の開発競争に日本一人が遅れを取ることになりかねない。
(続く)



自作漢詩 「春日郊行」

2009年03月31日 | 漢詩・自由詩
遠望幽山已半     遠望す幽山 已に半ば青なり

千枝紅雨緑楊     千枝紅雨 緑楊の汀

長郊草色生生合     長郊草色 生生として合し
   
一片黄花冉冉     一片黄花 冉冉として馨る

●●○○●●◎
○○○●●○◎
○○●●○○●
●●○○●●◎
(赤い字は韻:九青 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

銚子市立総合病院 診療休止  

2009年03月30日 | 時事問題
朝日新聞 2009年3月29日22時45分
銚子市長が失職 市立病院の休止めぐり住民投票
 千葉県銚子市の市立総合病院休止をめぐり、休止に反発する住民らが求めていた岡野俊昭市長(63)の解職請求(リコール)の是非を問う住民投票が29日にあり、開票の結果、解職を求める票が有効投票の過半数に達し、同市長は失職した。公職選挙法により、住民投票の投開票日の翌日から50日以内に市長選挙が実施される。岡野市長はこの市長選に立候補する意向を示した。
 国の臨床研修医制度改革のあおりで、06年、同病院に35人いた常勤医が昨春、17人と半減。院長も辞意を表明した。岡野市長は昨年7月、医師不足や財政難を理由に14科あった市立総合病院の診療を9月末で休止すると発表。現在、夜間小児急病と精神科の診療所2部門のみを残し、診療を休止している。

病院から医師がいなくなる典型的な医療崩壊
日本の新たな医療システムというものは、今後50年を支配する「超高齢化社会」の文脈の中で考えてゆかなければいけない。結論としては、医療費削減ではなく、道路公団のように資金が豊富に流入することが良い循環を作り出すことにつながるということです。道路公団に石油税を嫁入り道具にした政治家は天才的であった。医療においても医療費を削れば関係者間でぎすぎすした争いが増え、活動が停止する。そのため一時的には総経費が縮減できたように見えるのだが、実は内部でシステム崩壊が起きている音なのである。それが今の医療崩壊の現状である。潤滑油たる金がなければ、機械とシステムが動かないのは当たり前の事である。無理に働かそうとすれば、部品(医者、患者、保険)が音を立てて、金属疲労を起こして破損する。関係者(医者,患者、政治行政、司法、メディア)が自己規律を作り出す良い循環をつくるサブシステムとは集金システムである。日本国内の資産運用(1500兆円個人資産と2500兆円の非金融資産)、官僚の制度設計、国内消費拡大、国内雇用拡大などをうまくつなぎ合わせて豊かな資金を使わないといけない。