ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年10月01日 | 書評
地球内部熱収支 

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第14回

5) 終章ー水惑星地球 (その2)

地表とマントルの底の間には4000度の温度差があり、地球中心とは5500度の温度差があります。熱の移動様式には「対流」、「伝導」、「輻射」があります。地球表面での太陽熱の吸収と輻射による地熱の放熱バランスは先に示した通りです。地球内部では輻射はあり得ないので、流体域では対流が支配的で、固体域では伝導が主となります。内核は鉄・ニッケル合金の金属固体ですので熱伝導性に優れ内部温度は均一です。岩石の固体相では熱抵抗が大きい伝導が主です。融解相では対流と伝導を総括した熱移動となります。ではマントルでは対流と熱伝導のどちらが主流になるかは、粘性と浮力の比である「レイリー数」が決め手となり、臨界レイリー数を越えると対流が主流となります。マントルの岩石物性値で計算すると、臨界レイリー数をはるかに超えるので対流が起きていることが分かります。上図に地球内部熱収支を示します。地球表層からの放熱量は46テラワットです。放射性元素の崩壊熱は約20テラワット、また核からマントルへの熱移動量は計算すると約8テラワットです。外核は流体と固相の二層になっているので、まだ核の熱収支はよくわからない。地球型惑星の中では、金星と火星は現在でも火山活動が認められ、内部ではマントルが溶融して高温状態である。しかしプレートテクトニクスが作動しているのは地球だけである。地球のマントルの最下層D"層で温度は200度以上である。マントルの粘性は温度が下がると上昇し、地球内部物質に示したように、剛性に近い部分はリソスフェア、流体として振る舞う部分はアセノスフェアである。金星や火星では表面の地殻は移動しないでマントルだけが滞留する「不動蓋型対流」と呼ばれる。この状態はホットスポットの上昇流に伴った火山活動はあるが、地殻の沈み込み部分での火山活動はない。

(つづく)


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