ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

小林秀雄全集

2006年09月16日 | 書評
             小林秀雄の文学散歩

小林秀雄全集の書評は私のホームページ書評コーナーに纏めました。ご覧ください。

「小林秀雄全作品」目次概要から小林秀雄の変遷をたどってみる。1922年の「様々なる意匠」を処女作として評論活動を開始し、フランス文学翻訳者と紹介者としてデビューした。ランボー、ボオドレール、ヴァレリイ、アンドレ・ジイドなどについての評論・翻訳が目立つが、とにかく分かりにくい文章である。私も若かりし頃はこの紹介文を咀嚼不十分で鵜呑みにしていたようだ。今でもよく分からない。なぜ分かりにくいのか考えてみると、若いときの小林秀雄はフランス風言い回しの格好をつけてわざと二重三重にひねって難解にしたに違いない。どうだフランス文学を分からぬ奴には理解できないだろうといわんばかりに。そして本質的にはフランス語の詩や散文には音韻があってもともと音楽的に作られているものを、そんな伝統のない日本語に意訳しても美しさは損なわれているだろう。よさが分からなくて当然かもしれない。ついでロシア文学としてドストエフフスキィの思想(ロシアの文化・社会の悲劇、ツアー専制と正教支配)をしつこく追求していることに感服した。人間の悪魔的幻想の悲惨さを独特の陰惨なリアリズム追求したドストエフスキーの像に迫った。これはついに小林のライフワークと言ってもいい。日本文学評論では、ロシアと同様に西洋化できない日本文学の悲劇として私小説批判とプロレタリア文学批判を主とした評論活動が第2次世界大戦前まで続いた。ところが終戦直前あたりから「無常ということ」を初めとして急速に日本回帰が始まった。これは軍部により表現の対象を制約された文藝人としてやむをえない転進になった。このことが幸いして戦後は矢継ぎ早やに日本文学・文化に関する評論作品になって結実した。平家物語、徒然草、西行、実朝、鉄斎、雪舟、光悦と宗達、本居宣長などの代表作は私たちにも良く分かる内容で実に興味深く読んだことを憶えている。小林秀雄はまた絵画や音楽に対しても造詣が深く、その関係の評論も多い。モーツアルト、ゴッホの手紙、近代絵画、壺、ゴッホの絵などの作品も、同じ趣味を持つ私には分かりやすくうなづく点が多い。小林秀雄氏は骨董品収集家としても有名で、娘の白州正子も骨董家・文化評論で知られる。ということで小林秀雄は戦前はフランス文学・ロシア文学紹介者として活躍し、戦後は日本文化文藝の発掘者として振舞った。物を見る眼は非常に研ぎ澄まされていた一流の評論家であった。
全内容についてコメントするわけではなく、取捨選択する基準は以下である。第2次大戦後の流行として2,3人で標題を論じた対談・鼎談や座談会形式の文章は頁数は多いが、基本的に小林秀雄個人の作品ではないので(参考的に取り上げることはあっても)これらはコメントしない。さらに短い文芸時評・雑誌の読後感や巻末寄稿文などはあまりに雑文的、私的、時事的なのでこれらはコメントしない。さらに戦争中の従軍記者としての紀行記は歴史的残滓なので取り上げたくない。ということで私がコメントするのは10頁以上の内容を持ち、テーマを持ったまとまった論文に価する作品を対象とする(といってもかなり恣意的な選択であるが)。

戦争は宗教教義で起きるのではない。なんと政治音痴な法王か

2006年09月16日 | 時事問題
asahi.com 2006年09月16日11時10分
法王のジハード批判発言にイスラム諸国の反発相次ぐ
 「ローマ法王ベネディクト16世がイスラム教の聖戦(ジハード)について批判的な発言をし、イスラム諸国に反発が広がっている。バチカンは14日、「ジハード論議を意図したものではない」と釈明したが、各地のイスラム宗教指導者らは謝罪を要求。教会内には、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画が欧州の新聞に掲載され、イスラム諸国で暴動が起きた今年初めのような騒ぎに発展するのではないか、と懸念する声も出ている」
 法王は「暴力による布教は論理的ではない。暴力は神の本質と両立しない」などと話し、聖戦を批判した。
「パレスチナ自治区ガザでは15日、イスラム過激派ハマスのハニヤ首相が「法王発言は真実に反しており、我々の信仰心に火を付けるものだ」と強く非難した。」

戦争は宗教教義で起きるのではない。なんと政治音痴な法王か。イスラム教徒全体の反発は必死。火に油を注ぐとはこのこと。
いうまでも無くイスラム原理主義者のテロまたは闘争は西欧植民地主義者への反抗から出ている。歴史を勉強すれば、宗教の教義で戦争が起きたことは一度も無い事が分かる。「全て戦争とは外交の延長にある」とは「戦争論」の名言である。利害・領土・権益などめぐる国間の抗争である。誰かが「文明の衝突」などという変な理屈を言い出したが、全てこの利害抗争を覆い隠すものである。空想だが米国が中東から石油権益を全て放棄したら、戦争なんて起きなかった。石油権益を手放さないなら永久に戦争は続く。そして米国が出来る事は空から箱物を爆破することだけである。全て地下にもぐったらお手上げ(ベトナム戦争のように)である。宗教は国民をまとめて米国に対決するための極めて強力な接着剤である。

漢詩 「鬼哭」

2006年09月16日 | 漢詩・自由詩
 再度、8月16日戦没者慰霊祭での河野議長の言葉を詩にしました。靖国に参拝される小泉さんはどのようなお気持ちですか。 
        
        鬼  哭

百代忠兵為国     百代の忠兵 国の為に捐つ
三軍北伐幾人     三軍北伐して 幾人か全き
悲君死節真堪惜     君を悲しむ 節に死すは真に惜しむに堪え
猶想大材哭墓     猶想う大材 墓前に哭く

(赤い字は韻:一先   七言絶句仄起式)