


「ウクライナ戦争」の大きな特徴は双方の「情報戦」であり、メディアがそれに大きく加担していることです。NHKのウクライナ=西側=日本政府に偏った報道については、先にその「3つの手口」を述べましたが(4月5日のブログ)、続きを書きます。
先に挙げたのは、①偏った映像-出所・背景・真偽不明②偏った「解説者」―頻出する防衛省幹部③偏った「情勢分析」―触れない「極右・ネオナチ勢力」問題でした。これらはその後も継続されています。
とくに、防衛研究所の幹部が頻出してコメントするのは目に余ります。例えば、17日にマリウポリのアゾフスターリ製鉄所で抗戦を続けていたアゾフ大隊が投降した際、防衛研究所の長谷川雄之氏は「ロシア側に時間を使わせたのは大きな成果」だと強調しましたが(写真中)、これはウクライナ政府当局の見解の引き写しです。
上記3点に加えて、NHKの偏向報道には次の特徴があります。
④ウクライナに不都合な情勢の軽視
アゾフスターリ製鉄所のアゾフ大隊の投降はロシアによるマリウポリ完全制圧化を意味し、客観的にみて大きな節目です。ところが、NHKのメーンニュースともいえる夜7時のニュース(18日)で、それは5番目の扱いでした(写真左)。連日「ウクライナ」をトップで大きく扱いながら。そしてやっと報じたのが上記・長谷川氏のコメントです。ウクライナ政府にとって不都合な情勢の軽視と言わざるをえません。
これは1例ですが、NHKが報じるのはゼレンスキー大統領の肉声はじめウクライナ側の発信・主張が大部分を占めていることは否定できない事実です。
⑤「住民の声」の選択
NHKが報じる「現地住民の声」の多くはキエフなど爆撃などで被害を受けた人々がロシア軍を非難するものです。それは実際の声でしょうが、「現地住民の声」はそれだけではないはずです。
たとえば、南東部では2014年の「マイダンクーデター」以降、アゾフ大隊の親ロシア住民への攻撃が繰り返され、それが今回の背景になっているといわれていますが、親ロシア住民の声が報じられることはほとんどありません。
街頭インタビューをはじめメディアが流す「市民の声」は選択・編集されているのは常識ですが、戦争報道におけるそうした選択・編集はとくに大きな影響を及ぼします。
⑥ロシア側に対する「一方的に」の言葉の常用
NHKももちろんロシア側の主張を取り上げることはあります。その際、多くの場合「一方的に」という言葉が付きます。「ロシア(プーチン)は…と一方的に述べました(決めつけました)」など。ウクライナ側に「一方的に」を付けることはありません。
これは一度や二度ではなく常用されています。編集幹部の指示と推測します。ロシア側の主張は身勝手で不条理なものだという刷り込みが「一方的に」の言葉によって行われていると言わざるをえません。
⑦戦闘・戦争の継続・激化の煽動
最も気になることです。たとえばNATO(北大西洋条約機構)諸国のウクライナ政府への武器供与に関してNHKは、「欧米がどこまで最新兵器を供与するかが焦点」(11日の国際報道2022)だと言いました。南部の港湾をめぐっては、「今後ウクライナ側がどう奪還していくかが焦点」(18日の国際報道2022)だとコメントしました。
こうしたコメントは、たんにウクライナ側に偏しているだけでなく、戦闘・戦争の継続・激化を煽るものです。
今最も必要なのは、一刻も早く戦闘・戦争を終結させることです。そのためには客観的情勢、ウクライナ、ロシア、そしてアメリカはじめNATO諸国の主張・思惑、停戦へ向けた外交課題などを報道・論評することです。
戦場の悲惨な実態の描写とあわせて戦闘を煽ることは、人々の憎悪を増幅するだけで、平和的解決に逆行するものです。
以上の諸点は、もちろんNHKだけでなく、日本の(あるいは世界の)メディアの共通した問題です。