アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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朝鮮に対する「経済制裁」は日本人に何をもたらすか

2018年10月13日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)と中国、ロシアは10日、「3カ国外務次官」会談のあと「共同声明」を発表し、朝鮮に対する国連安保理の経済制裁の見直しを求めました。「中ロ両国が個別に制裁緩和の必要性に言及したことはあるが、『3カ国会談』の形でこれを正式に提起したのは、今回が初めて」(11日付ハンギョレ新聞)

  一方、トランプ米大統領は9日、「(朝鮮が)非核化への具体的措置がない限りは制裁を維持する考えを重ねて示し」(11日付中国新聞=共同)ました。安倍首相も一貫して「制裁継続の必要性」を強調しています。

  朝鮮半島の平和をめぐって、朝鮮戦争の終結宣言とともに、朝鮮に対する経済制裁の見直しが焦点になっています。

  ここで考えたいのは、朝鮮に対する経済制裁は、朝鮮の市民を苦しめるだけでなく、制裁を加えている側すなわち日本の「国民」にとっても大きな害悪をもたらしているということです。

  明治学院大学の鄭栄桓(チャン・ヨンファン)准教授(朝鮮近現代史・在日朝鮮人史)は、「経済制裁に関する研究の中で指摘されるものとして、『制裁をしている国の国民の戦争に対する抵抗感の敷居を下げる』という効果があります」として、こう指摘します。

  「つまり制裁は、それを行使する国の平和意識・反戦意識に対するマイナスの影響を与えるというのです。この指摘は今の日本を見ていると、とても大事なことだと感じます。
 例えば、90年代には『経済制裁は憲法の理念に反するからやるべきではない』という意見がまだありました。実際に、経済制裁は準軍事的措置です。
 しかし、今は護憲派からも『9条の立場からすれば抑制的であるべき』といった議論の芽生えすら出てきません。国会でも、衆参・与野党を問わず、ほとんど全会一致で政府の制裁措置は承認されています」(「DAYS JAPAN」9月号)

 鄭氏の指摘通り、国会では日本共産党も含め、与野党が「北朝鮮制裁」で足並みをそろえるという”翼賛国会“状態になっています。

 鄭氏の指摘は、朝鮮に経済制裁を加えることが日本(人)の「平和・反戦意識」に大きなマイナスの影響を及ぼすという警鐘ですが、同様の趣旨を、越田清和氏(ほっかいどうピースネット事務局)は逆の方向から、つまり日本の市民が政府の経済制裁に抗って朝鮮市民とつながることが、日本人にとってどういう意味をもつかを指摘しています。

 「韓国の民衆は、米国の傘下で北朝鮮敵視の軍事政策をとり続けてきた軍事独裁政権を自らの手で倒し、民主主義を原理とする社会をつくった。…いま私たちに必要なのは、こうした韓国の人びとの努力から学ぶことだ。隣国を敵視する『安全保障最優先』の思考から抜け出すことである。
 そのためには、米国が名づけた『テロ国家』というレッテルで最も激しい北朝鮮攻撃を行ってきた日本(人)の内側を変え、北朝鮮の人びととの連帯に基づく関係づくりを立ち上げていくことが大事である。韓国社会の変化を視野に入れ、私たちも平和を最優先する原則に立ち、北朝鮮との関係づくりを進めていこう
 それは、北朝鮮と韓国との和解を支えるための協力であり、北東アジア地域における平和への脅威を弱めていくための協力であり、そして日本の侵略、植民地支配に対する責任をはたすための協力である」(『朝鮮半島と日本の<平和>を紡ぐ 制裁論を超えて』新評論2007年所収)

 越田氏の論稿は11年前の第1次安倍政権時代に書かれたものですが、今日の状況にピッタリあてはまります。

 「経済制裁」は「準軍事的措置」であり、朝鮮の人々の生活・健康・命を脅かすだけでなく、制裁を加えている側の日本人の「平和・反戦意識」を阻害し、「戦争に対する抵抗感の敷居」を下げます。
 安倍政権の「北朝鮮敵視」、「日米安保優先」に抗い、経済制裁をやめさせ、朝鮮の人びとと「連帯に基づく関係」をつくることは、日本の侵略・植民地支配に対する日本人の責任であり、私たち自身のためでもあります。

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