アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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玉城知事が元自衛官を「危機管理補佐官」に起用した意味

2024年04月08日 | 沖縄と日米安保・自衛隊
   

 沖縄の玉城デニー知事は1日、元陸上自衛隊自衛官の吉田英紀氏(65)(退任時は1等陸佐)に「危機管理補佐官」の辞令を交付しました(写真左。写真はいずれも琉球新報より)。

 「危機管理補佐官」は「新設」(2日付沖縄タイムス)されたポスト。「危機管理補佐官のような県の役職に元自衛官が就くことに県人事課は「初めてかどうかは分からない」と回答。…一般職で任期は2年。最大5年まで延長が可能で、知事部局に統括監級で配属」(同)されました。

 沖縄タイムスも琉球新報も論評なしで「辞令」の事実だけを2面で報じましたが、これはけっして見過ごすことができない重大な問題です。

 玉城氏が「危機管理補佐官」を「新設」した意図は報じられていませんが、岸田自民党政権が「中国脅威」論をあおって沖縄のミサイル(前線)基地化を図っている情勢と無関係でないことは明らかでしょう。

 事実、玉城氏は辞令にあたり「豊富な知識と経験を生かし、県内の災害や危機事象へ取り組んでほしい」(2日付沖縄タイムス)と述べ、吉田氏に災害だけではない「危機事象」すなわち有事への対応も「期待」していることを示唆しました。

 沖縄では離島の自衛隊ミサイル基地強化はじめ、本島・うるま市勝連分屯地のミサイル連隊発足(写真中)、陸自訓練場設置など自衛隊基地拡大・強化の動きが相次いでいます。

 さらに、「軍拡(安保)3文書」に基づき、那覇空港などを「特定利用」に指定し、空港・港湾などの「軍(米軍・自衛隊)民共同使用」を推進しようとしています。

 こうした動きに対し県民の不安と批判が広がっています(写真右はうるま市)。その最中での元自衛隊幹部の起用は、玉城氏と自衛隊の親和性をいっそう強め、自衛隊基地の拡大・強化に反対する県民の意思に逆行し、その声に冷水を浴びせるものと言わねばなりません。

 さらに留意する必要があるのは、県知事は自衛隊との関係で重要な権限を持っていることです。それは基地の新設・拡大に対する許認可権だけではありません。
 自衛隊法第83条は、都道府県知事は「天災地変その他の災害に際して…部隊等の派遣を…要請することができる」と規定しています。「災害に際して」とはいうものの、知事には自衛隊派遣を要請する権限があるのです。その知事の「危機管理補佐官」に元自衛官という“自衛隊の身内”を起用した意味はけっして小さくありません。

 10日の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の指揮系統の統一はじめ、両軍の一体化がさらに強化されようとしています。日米安保条約=軍事同盟・自衛隊をめぐる情勢はかつてなく危険な段階に入っています。

 その戦争国家化の前面に立たされている沖縄での今回の元自衛官起用は、けっして沖縄だけの問題ではありません。
 琉球新報、沖縄タイムス、さらに日本共産党を含む「オール沖縄会議」がこの問題で沈黙していること、さらに「本土」メディアに至っては報道すらしていないことは、事態のいっそうの深刻さを示すものです。

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