アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

両軍死者膨大・士気低下、停戦協議が急務

2022年06月28日 | 国家と戦争
   

 国連人権高等弁務官事務所(UHCHR)はウクライナ戦争による市民の死亡が「少なくとも4662人」(22日時点)に上ると発表しました。ウクライナ大統領府顧問は、「1万人のウクライナ兵が犠牲になった可能性がある」と述べました。イギリス国防省は、「ロシア側の死者数は約1万5000人に上る可能性が高い」と発表しました。

 おびただしい犠牲とともに、顕著になっているのが、両軍兵士の「士気の低下」です。

 23日付共同電(地方紙各紙)は、6月中旬に負傷した2人のウクライナ兵のインタビューを掲載しました。証言したのは、従軍前教師だった30代前半の男性と、同じく溶接工だった40代後半の男性。

「(元教師の兵士は)「前線では脱走兵の情報を聞くことがあった」と明かした。ロシア軍の戦車に自動小銃のみで攻撃を仕掛けるような「自殺行為に近い作戦」を命じられた兵士らが、逃亡するケースが出ているという」

「ウクライナ兵は30代~40代が中心で「50代の兵士もいた」と説明。人員不足も深刻で、前線の兵士が高齢化している実態が示唆された」(23日付共同電)

 また、「英国防省は19日、「ウクライナ、ロシア両軍ともドンバス地域での激しい戦闘のため士気に揺れがある。ウクライナ側は脱走が起き、ロシア側の士気は依然問題を抱えている」と指摘した」(同)

 いまなによりも必要なのは、1日も早い停戦へ向けた協議・外交です。

 しかしゼレンスキー大統領は26日の動画で、米欧諸国に対し、「パートナーというのはすばやく行動に移すものだ。傍観者でないならば」として「最新鋭の防空システム」の提供を催促しました(27日の朝日新聞デジタル)。

 また、G7では「ウクライナの取り組みを支援する」と軍事支援を確認。ゼレンスキー氏はオンラインで演説し、「年内に戦争を終わらせたい」と述べたといいます(同朝日新聞デジタル)。早期停戦ではなく「年内」は戦争を続ける意向です。

 早期停戦は急務であり、けっして突飛な主張ではありません。
 元オバマ政権の大統領特別顧問で、米ジョージタウン大のチャールズ・カプチャン教授は、朝日新聞のインタビューにこう答えています。

「戦争は長期化するほどリスクが高まります。ロシアのエスカレーション(過激化)のリスクも上がるし、より多くの犠牲が生まれます。経済的影響も深刻で、途上国では食糧不足が起きています。この戦争は遅かれ早かれ終わらせる必要があるのです。米国が軍事戦略から外交戦略への転換にもっと力を注ぐことを望みます」

「いまは「勝利」がすべてという議論が大勢で、外交について提案すれば宥和(ゆうわ)政策(ロシアの軍事侵攻を大目に見ること―私)だと非難されます。…これは健全な議論ではありません。外交によってロシアと領土問題を話し合うのは、宥和政策ではありません。戦略的な慎重さです」

「我々はイデオロギーの違いを超えた協力が必要とされる課題に直面しています。気候変動やパンデミック、サイバー、核不拡散などです。こうした冷戦期との違いを踏まえると、今後もロシアとは一定の協力は必要です。だからこそ、ウクライナでの戦争を終え、外交の段階に進む必要があるのです」(22日の朝日新聞デジタル)

 欧州市民の世論調査でも「早期停戦」を望む人々が多数です(20日のブログ参照)。「徹底抗戦」は犠牲を拡大し、米欧の兵器産業とそれに群がる者たちを喜ばせるだけです。
 

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