アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「8・6式典」に「ロシア招待しない」愚行

2022年05月27日 | 日本の政治・社会・経済と民主主義
   

 広島市(松井一実市長)は20日、8月6日の「平和祈念式典」にロシアのプーチン大統領、駐日ロシア大使を招待しないと発表しました。これに対しロシアのガルージン駐日大使が25日、SNSで「恥ずべき措置」と批判。松井市長は26日釈明会見を行いました。

 広島市は1998年から核兵器保有国の首脳を式典に招待していますが、特定の国を招待しないのはこれが初めてです。ロシアの招待を止めたのは、「ロシアがウクライナ侵攻を続けていることを踏まえた」(21日付中国新聞)ものです。ロシアを支持しているベラルーシの駐日大使も招待しません。

 ガルージン駐日大使の批判にかかわらず、今回の広島市の決定は数々の問題を含むまったくの愚行と言わねばなりません。

 第1に、核兵器廃絶を願う被爆者・市民の声、要望に反することです。

 広島市の決定に対し、「被爆者たちからは、世界で核兵器使用のリスクが高まっている今こそ被爆地訪問を求めるべきだとの声が上がった」「被爆者の田中稔子さん(83)は…「対立構造が深まる世界の潮流に流されないでほしい」と願った」(21日付中国新聞)のは当然でしょう。

 第2に、ロシア人に対する差別を助長します。

 ウクライナ侵攻以降、国際的スポーツ大会や文化・芸術活動からロシアのアスリート、アーティストを排除する差別や、市民レベルでのロシア人に対する中傷が横行しています。今回の広島市の決定はそうした不当な差別を助長することになります。

 第3に、政府の圧力に屈したことです。

 松井市長は26日の記者会見で、「外務省との協議で外交問題になりかねないということでやめる判断をした」と述べました(写真左)。しかし、担当する市民活動推進課はもっとはっきり言っています。
「同課によると、今年もプーチン氏らを招待しようと準備をしていたが、日本政府から招待しないよう促され、取りやめたという」(20日の中国新聞デジタル)
 今回の決定は岸田文雄政権の圧力に広島市が屈したものです。自治体に圧力をかける政府とそれに従う自治体という不当な関係性においても容認できるものではありません。

 第4に、ウクライナ情勢の客観的・理性的判断を阻害します。

 岸田政権は来年のG7 サミットを広島市で行うと決め、松井市長も「大変うれしい」(23日の記者会見)と歓迎したばかりです。G7 (西側諸国)とロシアに対する日本政府・広島市の対照的な姿勢は、ロシアに対する嫌悪・憎悪を駆り立て、ウクライナ情勢の客観的・理性的な判断を阻害し、西側軍事同盟の一員としての道に拍車をかけるものです。

 第5に、「平和式典」の劣化をさらにすすめることになります。

 広島市は2014年から、「静粛の確保」(松井市長)を理由に、「平和式典」中に会場(「平和公園」)周辺で行われるデモ・集会を規制する条例の制定を図っています。「静粛」を口実にした反政府の言論・集会規制で、市民団体から強い抗議・批判が出ています(2019年8月5日、21年3月8日のブログ参照)。
 今回も松井市長は、「式典を円滑に執行するのが一番」(26日の会見)と釈明していますが、これは「平和式典」をますます政府に従順なものにするものと言わざるをえません。

 広島市は「平和式典」からロシア・ベラルーシを排除する今回の決定を直ちに撤回すべきです。


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