アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「美味しんぼ」から考えるべきこと

2014年05月24日 | 被ばく

PhotoPhoto_2 生まれて初めて「ビックコミックスピリッツ」(6月2日号)を買いました。「美味しんぼ」の「福島の真実」編を読むのはこの最終回が最初で最後です。
 したがって作品全体の評価はできません。ただ、最終回と同時掲載された13人の識者・専門家の賛否両論、3自治体の批判を読んでの感想です。

 「鼻血」と被ばくの因果関係についての見解は分かれても、一致点も少なくないと思いました。
 ①「福島」を一色に描くのでなく、地域を区別し特徴を見る必要がある。
 ②内部被曝については未だ解明されていないことが多く、確定的なことは言えない。
 ③健康被害調査はじめ実態の調査・解明こそ政府の責任。
 ④政府の「問題なし」には、原発再稼働、被災者補償軽減、東京五輪開催の思惑がある。
 ⑤自主的避難者に対して、国の責任で支援する必要がある。

 13人の識者の投稿の中で、特に印象に残ったのは、青木理さん(ジャーナリスト)の言葉です。
 「問題の本質が原発事故にあることを忘れてはいけない。未曾有の巨大人災が撒き散らした悪影響を脇に置き、表現だけを批判するのは、ただの言葉狩りにすぎません」

 実はこの言葉よりも、もっと胸に迫った言葉がありました。それは作品の中での主人公父子の会話です。
 「今の福島に住み続けて良いのか、われわれは外部の人間だが、自分たちの意見を言わねばなるまい。」(海原雄山)
 「自分たちの意見を言わないことは、東電と国の無責任な対応で苦しんでいる福島の人たちに嘘をつくことになる。」(山岡士郎)

 おそらくこれがこの作品全体を貫く作者(雁屋哲氏)の想いでしょう。その想いから取材し描かれた作品だから、仮にいくつかの不十分点があるとしても、私はこの作品に好感を持ちます。

 この言葉は、私たちに大きな問題提起をしています。「福島原発問題」は日本に住む私たち全員の問題です。しかしどこかに、「それは被災地・被災者の問題」という意識はないでしょうか。そして、やっかいな問題だから、できるだけかかわらないようにしよう、という潜在意識はないでしょうか。
 雁屋さんはそんな「庶民」を叱咤しているのではないでしょうか。「自分たちの意見を言わねば」ならないと。

 自分たち自身の問題でありながら、それが見えなくさせられ、ひとごとのように思わされ、思考停止に追い込められる。
 「福島原発問題」のこの構図は、そう、「沖縄問題」とまったく同じなのです。

 私たちは権力が作り上げるこの構図を打ち破らなければなりません。

 もう一つ、忘れられない言葉があります。19日のテレビニュースで、子どもを被ばくから守るお母さんたちのグループのおひとりの言葉です。
 「怖いのは、風評ではなく、風化です」

 <注目された番組>

 「ダウンウィンダーズ」


Nhk 23日夜8時からNHKプライムSで、「ダウンウィンダーズ~核被害に揺れるアメリカ~」という番組がありました(全国放送でしょうか?)。「ダウンウィンダーズ」とは「風下住民」という意味です。

 ネバダ核実験場とハンフォード核施設(長崎原爆のプルトニウムを製造した施設)周辺の住民が次々がんで死亡している実態が明らかにされました(写真の赤は放射能汚染地域)。

 父ががんに犯された息子は言います。「ロシアの核兵器を恐れていたが、自分の国(アメリカ)から攻撃された。恐ろしいのはロシアではなく自分の国だった」

 ユタ州で被ばくしがんを発症した女性は、広島・長崎を訪れ、「目が覚めた」と言います。「学校で『原爆投下は正しかった』と教えられてきたことは間違いでした。私たちダウンウィンダーズと広島・長崎の被爆者はつながっている」。

 「ダウンウィンダーズ」。初めて聞いた言葉でした。もう忘れません。アメリカには今も日々苦しみ、たたかい続けている被ばく者たち・「ダウンウィンダーズ」がいることを。


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