アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

女性の進出を阻む「家庭支援政策」の貧困

2013年12月14日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 「家庭支援政策とワークライフバランス」というテーマのシンポジウムが8日、那覇市内でありました。主催は沖縄ゾンタクラブ。ゾンタとはアメリカインディアンの言葉で「正直」「信頼」だそうです。女性(特に結婚・出産後)の社会進出の遅れを生み出している日本の政策の貧困をあらためて痛感しました。

 沖縄ゾンタクラブの大林静枝会長や上原明貴さん(社会福祉士)によれば、先進国の女性の9割が出産後も働き方を柔軟に変えながら雇用を継続しているのに対し、日本では約6割が出産を機に退職しています。男女間格差を測る指数(ジェンダーギャップ指数)は、日本は136カ国中105位、先進国では最低レベルです。

 パネリストの秋吉晴子さん(しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄代表)は母子家庭が置かれている深刻な実態を報告しました。例えば、母子世帯124万(父子世帯は22万)の平均年収は181万円で同世代の就業女性の約半分。諸手当を入れても年収は223万円。働くシングルマザーの貧困率はOECD30カ国中最悪です。驚いたことに、働いていないシングルマザーの貧困率が52・1%なのに対し、働いているそれは57・9%。日本のシングルマザーは働くほど貧しくなるのです。諸手当がカットされるからです。これが日本の政策の実態で、他の国に例はありません。

 糸数慶子参院議員(ゾンタクラブ会員)は日本の女性の社会進出の遅れの典型例として、国会議員の中の女性の割合を示しました。例えばフランスでは上院で22・1%、下院で26・1%が女性ですが、日本は衆院が16・1%、参院は8・1%にすぎません。閣僚の中の女性の割合も、フランスは34人中17人なのに対し、日本は21人中たった2人です(そのうちの1人があの森雅子大臣ですが)。糸数議員は視察したフランスの現状を詳しく報告しました。

 私がこのシンポに関心を持ったのは、沖縄の諸問題、とくに子どもに関わる問題の根源は貧困であり、離婚率の高い沖縄ではシングルマザーに対する支援の強化が急務だと思うからです。その切実な実態が改めて浮き彫りになりました。しかし、ではどこから、どうやって現状を変えていけばいいのかは、必ずしも明確になってとはいえないという印象です。
 その原因の1つは、基調講演が、「安倍内閣は女性を重視している」などという厚生労働省の官僚(女性)によって行われたことでしょう。日本の政策を問い直すのに、なぜ政府官僚が講師なのか。首をかしげざるを得ません。

 今回、ゾンタクラブという存在を初めて知りました。世界68カ国にある国際的組織で、沖縄での結成は22年前だそうです。苦しむシングルペアレントの立場に立った、いっそうの活動を期待したいものです。

 <今日の注目記事>(14日付沖縄タイムス社会面)

 ☆<沖縄の貧困率 全国最悪 07年 ワーキングプア率も 山形大准教授調べ>

 「必要最低限の生活を保つための収入がない人の割合を示す『絶対的貧困率』と、就業世帯のうち所得水準が最低生活費以下の世帯(貧困就業世帯)を示すワーキングプア率が、沖縄県は都道府県別の2007年の数値がいずれも全国ワーストとなっていたことが13日までに分かった。山形大の戸室健作准教授の研究で明らかとなった。戸室准教授は総務省の『就業構造基本調査』などのデータを用いた」

 ※貧困率は全国平均14・3%に対し沖縄は29・3%(ワースト2は高知県で21・7%)。ワーキングプア率は全国平均6・7%に対し沖縄は20・5%(2位は大阪で11・3%)。いずれもダントツの悪さです。沖縄の貧困は深刻です。そのうえ米軍基地の74%が集中。これが沖縄の姿です。


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