夢うつつ♪つれづれ草子

書いて残しておきたい事が、たくさん出来ました(*^^*)
自分自身のための備忘録なんだけれど…いろいろ書きたいな♪

あさきゆめみし②

2024-02-05 20:39:49 | 小説や漫画のこと
今回は宇治十帖にあたる11〜13巻についてつらつらと。

宇治十帖は物語の骨格はいたってシンプル。

乱暴に言ってしまうと、いろいろなエピソードののちに、浮舟という八の宮の庶出の姫を、匂宮と薫が奪い合う。
浮舟はふたりの貴公子からのアプローチに悩み抜いてついに死を決意し、しかし死にきれず出家する。


うーんと昔に円地文子先生の訳でようやく「夢浮橋」に辿り着いて、そして最後となったとき、「え?こんな中途半端な終わり方なの?」と驚いたのを覚えています。
『あさきゆめみし』初読の際にも、「源氏物語って呆気ないラストよねー」と感じ、浮舟については「物語の最後を飾るヒロインとしては地味だし個性がない」と切り捨ててしまっていました。

しかし、今回ようやく気づきました。
浮舟は薫にとって大君(浮舟の異母姉で故人)の形代でしかないのですね。
光源氏が紫の上を藤壺の宮の形代として見ていたのと同じ。
それでも光源氏はだんだんと紫の上を個人として認めましたが(しかし光源氏の一方的な自己満足であって紫の上の気持ちには思いが及ばない)、薫は浮舟を形代としてしか見ていなくて、大君よりも劣っている浮舟に苛立ったりまでしている。
一方で匂宮の言葉には、その場限りではあっても真実がある(匂宮の正妻は夕霧の六の姫だし、浮舟の異母姉の中君も大事にしているから、浮舟の立場はどこまでいっても弱い)。

冷静に考えると薫といっしょになれば安定した人生が送れて、苦労をかけた母を安心させられると言うことはわかる。
しかし、薫の浮舟に対する態度は、今で言うところのモラハラ気味でたぶん改まることはないのだろう。
それを浮舟は感じ取っていたのでしょう。

そして、死にきれなかった浮舟は出家して心の平穏を得て、その存在を知った薫にはもう会おうとしない。

というあたりで、長かった物語は終わります。

さて、紫の上はいくら光源氏に望んでも出家させてもらえなかった。
そして紫の上は自分の人生は何だったのか?と嘆く。

同じように形代にされた紫の上と浮舟。
一方は、幸せの絶頂を経験し世間からも重んじられたけれど、心の澱は溜まっていくばかりだった。
もう一方は、「数ならぬ身」であったけれど、身の処し方を自分で考えることが出来て、晴れやかな視野を持つことができた(出家することしか手段がなかったのはこの時代ゆえ仕方ないことでありましょう)。

『あさきゆめみし』を読み直し、イマドキの『源氏物語』の解説本にもちょっと触れて、はじめて「夢浮橋」で終わって良かったのだと納得したのでした。


『源氏物語』に登場する女君では誰が好きですか?
かつては、自分の立場をわきまえて性格も良さそうな花散里が好きでした。
しかしいつの頃からか、朝顔の姫君の生き方、考え方に惹かれるようになりました。

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