韻文劇 『RENAUD ET ARMIDE』 はコクトーが阿片治療後に初めて書いた作品で、
たった4人の登場人物がドラマに緊迫感を与え劇的な恋愛を描いている。
1943年3月 フランス ガリマール社出版 限定1500部のうち非売品121部の90番台
魔女アルミードは、一国の王であるルノーを愛するあまり魔法をかけ幻想の庭に誘い込んだ。
ルノーもアルミードを恋して名を呼び続ける。
しかし愛と王の責務の板ばさみで苦悩するルノー。
魔女が人間を愛することは許されない。つかのまの愛は消える運命にあった。
愛するルノーを国に帰すアルミードだったが
最後に、触れてはならない唇にルノーがくちづけをした瞬間アルミードの命はついえてしまう。
この作品はコクトーがジャン・マレーのために書き下ろし、フランス座で上演する予定であった。
コクトーはマレーにコメディ=フランセーズの特別オーディションの約束を受けるよう進言するが、
このことが思わぬ波紋を呼ぶ。
この頃、女優マリー・ベルがマレーをコメディ=フランセーズに推薦していたが
支配人が入団拒否をする。マレーとベルの芝居にオーディション会場の満場一致で
入団が決まりはしたものの、以前から映画出演が決まっていたマレーは撮影が終わるまで休暇願いを出す。
しかし映画は中止になり、コメディ=フランセーズに戻ったマレーだったが「ここは出入り自由の場所ではない」と
復帰を拒否され、結局コクトーが望んだマレー主演は実現しなかった。
参考文献
「ジャン・コクトー全集 第7巻」 ルノーとアルミード 諏訪 正 訳 東京創元社
「評伝ジャン・コクトー」 秋山和夫 訳 筑摩書房
「美しき野獣」 ジャン・マレー 石沢 秀二 訳 筑摩書房