日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

映画 「ボーイフレンド」

2015-07-22 | 映画

  

ケン・ラッセル監督が1971年に製作したミュージカル映画「ボーイフレンド」
その主役として出演しているのが
「小枝」という意味で名づけられたツィギーで、1960年代に細身で
キュートなモデルとして大活躍した。
テレビで見たこの映画のセットの豪華さとツィギーの可愛らしさ、
タップダンスの素晴らしさが印象的だった。

物語は1920年代後期、イングランドはポーツマスの劇場。
観客はまばらで出演者のほうが多いくらいのわびしさ。
しかし幕が上がった舞台は、チャールストンのダンスあり、
ふんだんに見せるタップダンスがあり、ハリウッド映画の見せ場でもある群舞ありと
ケン・ラッセル監督の意気を感じるシーンが満載だ。

主人公ポリー(ツィギー) は劇団の雑用係をしているが、主演女優が怪我をした為に
ピンチヒッターとして急遽出演することになってしまった。
そこへハリウッドでは有名な監督スリルがキザないでたちで客席に姿を現した。
最初はおぼつかなかったポリーだがそのうち主演女優を凌ぐほどになっていく。
相手役のトミーに想いを寄せているが、彼の本心がわからないポリーは
不安とさびしさでいっぱい。
そんなポリーに優しく接してくれたのは同じ劇団のマダム・デュポンネという女優だが
彼女は、ポリーに会いに来た父親の昔の恋人だった。再会を喜ぶふたり。
そして劇団のもうひとりのホープ、トミーはタップダンスの才能を持つ孤児だったが
キザな監督スリルが長年尋ねあぐねていた実の息子だった。
ポリーの恋人トミーも実は貴族の御曹司で、ポリーもまた資産家の跡取り娘だったとお互いに打ち明け、
ふたりの恋は実を結ぶ。

内容は出来過ぎなくらいの偶然性のおかしさを感じつつも
全体に漂うアールデコ時代の雰囲気と、
監督がツィギーを何とか説得して出演させただけあって彼女の魅力を存分に引き出している。

又、現在はアメリカ演劇界の演出家でもある若きトミー・チューンのタップダンスが
織り込まれているのもうれしい。
衣装は監督の夫人であるシャーリー・ラッセル。

ケン・ラッセル監督の他の映画は「マーラー」と「ケンラッセルのサロメ」しか
見ていないが、実在の人物を映画化したことが多かった異彩ともいわれた監督の
遺した作品は興味が尽きない。