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日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

マノン・レスコー アベ・プレボー

2008-12-22 | book

        アベ・プレボオ原作 「 マノン・レスコオ」 久晃堂 刊

アミアンを去る日が決まった。それがもう一日早かったら!私は汚れない身で両親の家へもどれたであろうものを!



学業を優秀な成績で卒業した17歳の若者、シュバリエ・ド・グリューは、明日故郷へ帰るという日に
魅惑的な女性マノン・レスコーと出会ったことにより破滅へ向かい、
マノンを愛するあまり悪に手を染めていく。

マノンはシュバリエを愛しながらも、虚飾の生活が捨てられず三度の不貞でシュバリエを裏切るが、
シュバリエはそれでもなおマノンの愛を得たいがために賭博、詐欺、脱獄を重ねてしまう。

逃亡の果て、砂漠で力尽きたマノンが息絶えて二人の転落は終りを告げる。
シュバリエの行状に苦悩した父はすでにこの世にない。
どんな時にも理解を示してくれた友の救いで物語は終わる。


アレクサンドル・デュマ 作 『椿姫』では、アルマンがマルグリットに贈った本が
この「マノン・レスコー」であることが書かれている。


薔薇の夜を旅するとき

2008-12-03 | book

Bluerose_320

地下深くに息をつめて、巨大な薔薇の根の尖端がしなやかに巻きついてくるのを待つほどの倖せがあろうか。
うずくまり、眼を瞑って、その触手のかすかなそよぎが次第にきつく厳しい裸身をいましめてゆく、栄光の一瞬。             

       TANTUS AMOUR RADICORUM (すべての 愛を 根に! ) 

                              
中井英夫「薔薇への供物」 薔薇の夜を旅するとき より

 花器提供M様

薔薇を偏愛する男と女は、薔薇園が閉鎖され自動車教習所に変わる前に、
最後の誇りとばかりに咲ききそう薔薇たちに会いにくる。

二人が考えた“過去からの弾丸”。
それは開所式の日、出席者の胸につけられたバラ(造花)に薔薇(生花)を撃ち込むという復讐だった。
そして、フラウ・カール・ドルシュキーと名づけられるはずだった孤高の白き薔薇を幽界へ送る。
薔薇作家、中井英夫が迷宮と神秘の世界へ誘う短編。