上砂理佳のうぐいす日記

7月18日(木)~23日(火)まで、茶屋町の「ギャラリー四匹の猫」で「夏への扉」展に参加します★

ジョニーの戸惑い

2006-02-18 | トリノ五輪
新採点法になってから初めての五輪ですが、男子のトップはほぼ皆(プルさん以外)ミスが目立ちました。この前「今は過渡期だから致し方なし」と書きましたが、かなり悲しいは悲しいです。でもこれは、私のフィルター(目線)もいけないのね。
「今日のスピンは遅いな。これじゃレベル4取れないわ」とか「あ、最初でミスした分、どこで取り返すんだろう?」という視点で見てしまいがちで「プログラム=滑り」から受ける感動が後回しになってる。
ソルトレイクはそうじゃなかった。先に「感動」があった。ヤグディンの「仮面の男」も。本田君の「アランフェス」も。ストイコもトッドも。だからずっと泣きっぱなしでしたが、今回は「うう~ん」と唸ってばかりです。今後、この新採点法ずっと続くのかな…6月のISU総会で改正を望むなり。少なくとも、ザヤックルールはなんとかならんのか(女子のビールマンも)。

もう男子のTOP10くらいは皆、実力は横一線。大ちゃんもPCSが7点台定着してきたし、ジェフやランビ、ジョニーのPCSで、プルさんより高い点を出してるジャッジもゴロゴロいます。そして上位は皆、ステップやスピンで確実にレベル3は取る。なのであと明暗を分けるものは
・舞台度胸
・用意してきたエレメンツ構成がぬかりなし
・当日、冷静な試合巧者であること
これだと思います。今回、怪我の影響が懸念されたのはランビエールくらいなので(でもよく頑張ったねー)、コンディションは皆同じ。
フリーで実力を発揮できなかった選手は、やはり上の3要素が、上位陣に及ばなかったのだと思う。プルさんはやはり「ぬかりなし」でした。サスガです。一番苦労人(?)で経験値が豊富、ということもありますが。

ジョニーはSPが素晴しくて、まさしく「本領発揮」でした。これは私の「想定内」でしたが、80点出て2位とは…これは「想定外」(笑)。77点くらいで4位ぐらいにつけるかな、と思ってました。でもこれがかえって「戸惑い」の原因になったのかも。
金メダルは無理としても、スグ後ろにランビエールがいるので、「銀確実」とは言い難い。ランビは4回転2個持ってるから、たとえアクセルが抜けても、ジョニーを上回る点が出る可能性アリ…だとしたら、ジョニーは「不確実な4回転に賭けるか」「4回転なしで3回転をすべて完璧でおさめるか」。
4回転を持ってない人は、「3アクセル以下を絶対ミスれない」という逆プレッシャーがかかって、下位ならまだしも(ライサみたいに)、2位にいたら相当考えこむのではないか。どういう作戦でいくのか。

フリーの序盤、2回目のジャンプは、なぜ2アクセルなんか入れたのかなー。あそこを4回転にしようと思ってたけど、無理と感じて咄嗟に変更したのか。前半から2アクセルなんてまず入れないものね。男子は。そもそもジョニーは、4回転、今回はどうする気だったんでしょう?用意してたのか?
で、なぜ3回目ジャンプが基礎点の低いサルコウなのか。N杯の時の「Otonal」と比較してたら、ここはルッツのはず。このへんで「おかしいな~」と益々混乱する私。
スピンはいいけど、次の単独の3アクセルが、回転不足の上にオーバーターン。ここで「これは3回転と判定されたか?2回転か?どっちだ?」と微妙に気持ちが揺れたと思う。3回転なら、後半のジャンプで3-3をくっつける時、また「跳びすぎるとノーカウント」になってしまう(3回転は8回までしか跳べないし)。
どうする?と揺れた影響が出て、次のサーキュラーがいまいちに。もっと華麗なターンな筈が…。3ループ。これはOKでホッとするも、次のルッツは何もつけない。「ここで何かくっつけないとまずいよー。単調だよー」と唸る私。でも「最初にサルコウ跳んでしまったので、ここはルッツにしないとマズイ」と、予定変更ジャンプだったのではないでしょか。
プロトコル見たら、ジョニーは結局3回転を6個しか跳んでないので、ここで「3ルッツ+2トゥ」もしくは「3サルコゥ+2トゥ」を入れなきゃいかんのだけど、入らなくてさらに動揺。やっとフリップは入れましたが。
もうやはり、中盤の狂いあたりから「頭の中が大混乱」になっちゃったのだと思う。終盤の盛り上げのステップも、密度と気迫を欠いてしまった。それでも、観客はおおむね好意的だったので、有り難かったのですが。

全米フリーはカウントミスもあったけど、私は正直「Wonderland」のPGでジャンプのカウントさえ気をつければ、4回転を入れなくてもノーミス狙い、で大丈夫、と思っていたのでした。躍動感も出てきたし、スタミナもついてきた。調子は上向き。それに「SPで貯金」出来る人だから。逃げきれると。
でも「Otonal」に戻したでしょ。「あれあれあれー?」
戻すのなら、NHK杯時のフリーみたいな「完璧+α」のジャンプ構成でないと、勝てないよ…。それかスピン、ステップで上げてくるのか(限度がある)。「Otonal」は良いPGだけど、五輪でこの曲はちょっと地味に思えるのよ。新鮮味にも当然欠けるのだから、何かプラスアルファした新バージョンでないといけないよ…。と、あれこれ思っていたら、ズバリ「不安的中」になってしまいました。

でも「ジョニーらしさ」は見せてくれた。繊細で優美ではかなげな(でも、足元は良く滑ってるという)。私は本当に「五輪チャンピオンって難しいんだね~。おいそれとなれるもんちゃうんやね」と恐れ入った次第。
銀でもみどりちゃんは偉大だった。タラちゃんも。サラも。でも、女子に限っては「年少の天才少女が勢いで優勝する」という黄金のパターンも可能に思えるんだけど、男子にそれは当てはまりませんよね。16歳の新人男子が金メダルってないわ、ないわ、そりゃ。経験値が大きくモノを言うような。
ジョニーも、世界トップに躍り出て、まだ実質上2年半(?)くらいなので、今回の失敗が良い経験値になってくれたらいいなーと思います。なんか「いい子ちゃん」な言い方だけど。でも「重複ジャンプは2度まで」+「回転不足ととられるか否か」っていうルールは、混乱をきたしてますよね。全日本男子といい、今回の大ちゃんといい。ジョニーも明らかに「ジャンプへの戸惑い」が大きな要因だったと思う。バスに乗り遅れて…というのもわかりますが、それはある程度、想定しておかないといけないよね。アクシデントはつきもの。
(なんか、イタリアでせっせとお買物もしてたようで(笑)。またその成果も見せてほしいね。イタリアの靴はやっぱサイコーなのか!?)

スキー・モーグルの解説によれば、その日の天候による雪質の違いや、自分の前に滑った人によるコースの荒れ…などなど、「その時その場で、どういう作戦をたてるか」という選手本人の判断力が大きく明暗を分けるらしいです。+(プラス)実力ってことかいな。なるほどなあ。
フィギュアスケートにも、そういう「冷静な判断力」が大きく求められる時代になったということね。私はずっと、芸術的観点からフィギュアを見てきたけど、スポーツとしてそういう方向から楽しむと、また見る目が違ってくるなあ(男子モーグルがかなり面白かったので、感化されまくってます)。
「精神的な強さ」は必須要素とよく言われますが、それは「冷静でかしこい(試合運びが)」という事も含めてなのね。まあ今回は舞台が舞台なので、「冷静」がブっとんでも致し方ないんですが…。いろんな事を悟る私です。

うん。「強くて美しい」か。これだ!だんだんナットクしてきた…。
コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あやまる必要なし

2006-02-18 | トリノ五輪
NHKや民放見てると、五輪のスタート時は「さあ!ニッポンのメダル第1号は?」って、かなり騒いでたと思うんですが、最近言いませんね…。岡崎選手の4位ぐらいから、なんとな~くムードが変わってきてて、スピードスケートの団体追い抜き女子で銅メダルが無くなった時にはもう、「頑張ってくれたら、それでいいよ」というモードになったと思いませんか…。
私はそれでいいと思います。だいたい、「上から3人がエライ」というのはいつ、どこで決まったんじゃ(笑)。金は銀より偉い。銀は銅より偉い。銅はあまり偉くないけど、4位以下よりはず~っと偉い。その区別っていったい。15位でも、感動させてくれたらそれは素晴しいことではないか。自己ベストだったらそれでいいではないか。
それと、大ちゃんも言ってたけど「日本の皆さんに申し訳ない」という言葉。スノボの童夢君も「すみませんでした」と、帰国一番言ってましたね。もっと昔は、伊藤みどりちゃんの「銀(メダルで)ごめんなさい」。あれは悲しゅうございました。
なぜ、謝る必要があるの?クサイけど「感動をありがとう!」ですよ。ほんま、どういう結果であれ、楽しませて頂いてますよ。運動神経の無い私なんぞからしたら、「なんであんな、人間離れしたこと出来るのじゃ!?」の連発。だいたい、五輪に出るための選抜からして、気の遠くなるよーな練習の積み重ねで、それでも出られない人が大半なのだから。
「税金ドロボー!」なんてまさか、この平成の世で言う人いるんでしょうか…。TVの前で寝っ転がって「メダル獲れねーなー。ちぇっ。しっかりしろよー日本選手。」なんて言う資格は…ないよ。おまえには(笑)。何かの道で精進したことのある人なら、一流になるまでのトホーもなく遠い道のりを知ってる人なら、「残念だなあ」とは言えても、悪態はつけないというもの。
金メダルと騒がれていた加藤条治選手も、今回はたまたま6位という位置ですが、だからと言って、これまでの努力が間違ってたわけでは決してない。むっちゃ頑張ってきたから、今に至ったのだし。
五輪にはいろんなドラマがあって、また「こういう競技があったんだね?」と、スポーツの面白さを再認識させてくれる。だからいいのだ。「前回の五輪より、ウチの国はメダルが少ない。誰の責任だ」なんて問うことがナンセンス。
だからやめましょうね。「なかなかメダルが獲れないニッポン。弱い原因はどこにアリ?」なんて番組作るの。大抵くだらないから。番組作ってる人間は、なんの責任も感じてないからね。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする