熱気覚めやらぬリンクで、皆、ヤグディンのアンコールを待ちます。
時間かかるなー?まさか…まさか…。おおお。
winterの衣装だ~~~~~!!
「うわーーーーっ!」と歓声が。解る人には解る。初めての人には「?」かも。
01年に初披露した当初は「蜘蛛の巣城みたい…」と、やや不評だった有名な白黒の衣装ですが、シーズンが進むに連れ、ヤグの調子が上がってくるに連れ、演技と衣装がしっくり一致するようになり、今ではこれ以外のいでたちでの「winter」は考えられない位です。黒の手袋がポイント(もし手袋をしてなかったら魅力半減でしょう)。
今日は衣装の白い部分がうっすらピンクに見えました。照明のせいなのか、私自身が上気してるせいなのか。衣装を見ただけで涙があふれるという…でも、あの日そう感じた人は多かったはず。
ヒュゥ~~~ゥ♪…と一陣の風が吹く。
目が覚める。あっ!?
雪だ!雪だ!ここにも。ここにも。
雪だ!雪が降ってきたよー!
ジャラ~ン♪と哀愁の音が鳴り、両の手を天に向かって差し伸べる。
もうここで既に引き込まれます。
雪と氷の「ウィンター・ワールド」のはじまり。
…このSPは、大ちゃんや静香ちゃんの今季のPGを担当した、元アイスダンサーのニコライ・モロゾフが作っている事でつとに有名ですね(静香ちゃんにキスしてたあの黒髪の兄さん)。
私は、モロゾフのこの鋭敏な感受性、タラソワコーチの構成力、表現するヤグディンの才能、この3つの要素のどれか一つでも欠けていたら、名作「winter」は生まれなかった…と固く思っているのです。いわば三位一体。「黄金のトライアングル」とでも言いましょうか。
スポーツと芸術が完璧に融合して、幻想的な夢の世界を作り上げている。
モロゾフがもし、長野五輪後にナフカとのダンスカップルを解消しなかったら…。
タラソワコーチのアシスタントにならなかったら…。
ヤグディンとの出会いがなかったら…。
また運命は大きく変わっていただろな~と、不思議な気さえします。
(02長野世界選手権のSPを、杉田秀男氏が解説していますが、秀逸だと思います。ジャッジ(レフェリー)として、6.0=満点をこのwinterに出した杉田さんですが、この人の話を聞きながらSPを見ると喜びも倍増。ヤグファンには至福…なのだ)
足元の氷を集めて空中に投げ、パアーッと世界が華やぎます。
ヤグディンは、雪の中で無邪気に遊ぶ少年のよう。
金髪を風になびかせ、猛スピードでリンクを突っ切った後には、雪の結晶の粒がキラキラと宙を舞っている…私には本当にそんなふうに見えます。世界が変わって見えるのです。
冒頭の4-3や、「世界一美しい」と賞賛された3アクセルも、今はもう跳びませんが、ジャンプ着氷のあの美しさ。端正さ。全くあの頃と変わっていない。
姿勢の良い上半身からスッと差し出された、優雅な腕のライン。つま先まで綺麗に伸びたフリーレッグと、ほどよく曲がる膝。
黒手袋をはめた指先が繊細かつ力強く、物語を紡いでいきます。
「音楽が奏でる表情」と、ヤグの動きの全てがぴったり重なるのです。哀しいとか、嬉しいとか、切ないとか…今、何を言いたいのかが、私の遠い席からもはっきり解る。
私が、何度も何度も繰り返しこの演技を見てきたせいもあるけど、ヤグはやはり、写真家の菅原氏語るところの「千両役者」なのです。リンクを「ヤグディン・ワールド」に変えてしまう。
一見、大胆でクールに見えるヤグディンですが、私はこの人は至って繊細だと思います。そうでなければ、こんな、琴線に触れる情感は醸し出せないでしょう。
4年前の、大事な大事な五輪シーズン。
もしタラソワさんが一人でSPを作ったら、多分クラシックの名曲(定番)を使っただろうと思うのですが、あえて若いモロゾフの才能を持ってきた(当時モロゾフは26歳)。そこに、タラソワさんの懐の深さや柔軟性を感じずにはおれません。
この前のシーズン(00~01年)のヤグのフリー「グラディエーター」で、振付家としての鮮やかな才能を見せたモロゾフですが、競技用PGとしてはややマニアックで重苦しい(もっとも私は「仮面の男」より「グラディエーター」のほうが好き)。その辺りの反省点も踏まえて、「winter」は軽やかに、かつ華やかに作ってあると思います。
つまり、「あふれる才能の選手、ヤグがいる」→「ヤグに触発されて、モロゾフの芸術的イメージがふくらむ」→「モロゾフが原型を作った新鮮なプログラムを、タラソワさんが“勝つ”プログラムに再構築する」→「ヤグが、高い技術と感受性でその意図を理解し、完全に“自分のもの”にする」という理想的な循環がなされている…とまあ、私が勝手にそんな物語を作りあげているだけかもしれませんが。
今、この3人がそれぞれ別の道を歩き、ファミリーは解散してしまった、というのもなかなかに切ないです。それだけに、この「winter」が貴重な宝石に見えます。
ソルトレイク五輪後、怪我の深刻化や手術、モロゾフとの決別、引退か続行かの逡巡…と、常に「ジェットコースターな人生」を駆けめぐっていたヤグですが、ず~っと一緒にお付き合いしてきたファンにとって、この日の演技はまさに最高の贈り物だったのではないでしょうか。
「贈り物」をしっかり抱えて日本にやってきたヤグと、それに応えるファンの歓声。悲鳴のようなスタンディング・オベーションでも、私はずっと声が出ず、ただただ泣くのみでした。
一度は「一生リンクに立てないかもしれない」と宣告された状況から考えると、「その後のヤグディン」が、こうして再びリンクで舞い、ジャンプを跳び、誰よりも真摯な姿勢でスケートにのぞんでくれていることが、ある意味、奇蹟のような気がします。
来日直前のアイスショーのレポで、調子が悪い(腰にまた痛みがある?)とも聞いていたので、「もしwinterを滑って、悲しい内容だったらどうしよう…ガッカリするかも…」と私は思っていました。
最早、現役時と同じ健康状態で考えてはいけない。それこそ「poor skate」でも仕方ない…という覚悟。至高の演技を一度見てしまったら、それ以下のものは再び見たくない、と思うのも正直なところです。
がしかし、「winter」は素晴しかったのです。
どこがどう、と文字で書くのも陳腐なまでに。
「そこには、“スケートの魂”があった。」
と言うしかない。だから私はボロボロ泣くのみでした。
大トリで、静香ちゃんが「ユー・レイズ・ミー・アップ」(これは昼のコンペと同じ)と、アンコールで新作の「アベ・マリア」をちょこっとだけ滑り、大団円でした。やはり静香ちゃん人気は高し。
フィナーレでは、また二人ずつ組になって得意ワザなどを披露。
大ちゃんと武史君は、今度は二人同時にバレエジャンプ(大ちゃんは復活して元気でした・笑)。
エマさんとジェフは、ステップから逆回転のジャンプ(3トゥ?)。
ランビエールは絶好調のスピン。すごーい腕の動きの変化で、喝采を浴びます。
エンディングの一連の動き・構成も、やはりヤグディンが考えたのでしょうか。楽しく華やかでしゃれてます。
最後の最後で、皆が踊りながら取り囲む中を、静香ちゃんがスイーッとイナバウアー。
荒川さんは、トリノからの激務にもかかわらず、ずっとテンションを保ち、乱れるところが無かった。すんごい底力です。平静に見せて、水面下のトレーニングは相当のものなのでしょう。
戦い抜いて栄冠をもぎ取った彼女を讃えるべく、「特別ゲスト」として、終始立ててくれていた選手たちにも、ここは感謝したいところ。
「なんだかウサン臭いイベントかも…」という危惧は外れ、「ああやっぱりスケートはやめられない!」状態になって帰ってきました。この先、どうやって生きていけば良いのでしょうか(笑)。
ヤグディンありがとう。時差ボケながらも来てくれた海外選手、調整の難しい中で頑張ってくれた日本選手、ついにナマで会えた杉田さん(?)、大ちゃん、ヒゲ剃れよ(笑)。
夢まぼろしのごとくなり…というわけで、「さいたまスーパー」は誠に「スーパー」に終わりました★
(翌日が営業の仕事だったので、思いっきり現実に引き戻されました…)
時間かかるなー?まさか…まさか…。おおお。
winterの衣装だ~~~~~!!
「うわーーーーっ!」と歓声が。解る人には解る。初めての人には「?」かも。
01年に初披露した当初は「蜘蛛の巣城みたい…」と、やや不評だった有名な白黒の衣装ですが、シーズンが進むに連れ、ヤグの調子が上がってくるに連れ、演技と衣装がしっくり一致するようになり、今ではこれ以外のいでたちでの「winter」は考えられない位です。黒の手袋がポイント(もし手袋をしてなかったら魅力半減でしょう)。
今日は衣装の白い部分がうっすらピンクに見えました。照明のせいなのか、私自身が上気してるせいなのか。衣装を見ただけで涙があふれるという…でも、あの日そう感じた人は多かったはず。
ヒュゥ~~~ゥ♪…と一陣の風が吹く。
目が覚める。あっ!?
雪だ!雪だ!ここにも。ここにも。
雪だ!雪が降ってきたよー!
ジャラ~ン♪と哀愁の音が鳴り、両の手を天に向かって差し伸べる。
もうここで既に引き込まれます。
雪と氷の「ウィンター・ワールド」のはじまり。
…このSPは、大ちゃんや静香ちゃんの今季のPGを担当した、元アイスダンサーのニコライ・モロゾフが作っている事でつとに有名ですね(静香ちゃんにキスしてたあの黒髪の兄さん)。
私は、モロゾフのこの鋭敏な感受性、タラソワコーチの構成力、表現するヤグディンの才能、この3つの要素のどれか一つでも欠けていたら、名作「winter」は生まれなかった…と固く思っているのです。いわば三位一体。「黄金のトライアングル」とでも言いましょうか。
スポーツと芸術が完璧に融合して、幻想的な夢の世界を作り上げている。
モロゾフがもし、長野五輪後にナフカとのダンスカップルを解消しなかったら…。
タラソワコーチのアシスタントにならなかったら…。
ヤグディンとの出会いがなかったら…。
また運命は大きく変わっていただろな~と、不思議な気さえします。
(02長野世界選手権のSPを、杉田秀男氏が解説していますが、秀逸だと思います。ジャッジ(レフェリー)として、6.0=満点をこのwinterに出した杉田さんですが、この人の話を聞きながらSPを見ると喜びも倍増。ヤグファンには至福…なのだ)
足元の氷を集めて空中に投げ、パアーッと世界が華やぎます。
ヤグディンは、雪の中で無邪気に遊ぶ少年のよう。
金髪を風になびかせ、猛スピードでリンクを突っ切った後には、雪の結晶の粒がキラキラと宙を舞っている…私には本当にそんなふうに見えます。世界が変わって見えるのです。
冒頭の4-3や、「世界一美しい」と賞賛された3アクセルも、今はもう跳びませんが、ジャンプ着氷のあの美しさ。端正さ。全くあの頃と変わっていない。
姿勢の良い上半身からスッと差し出された、優雅な腕のライン。つま先まで綺麗に伸びたフリーレッグと、ほどよく曲がる膝。
黒手袋をはめた指先が繊細かつ力強く、物語を紡いでいきます。
「音楽が奏でる表情」と、ヤグの動きの全てがぴったり重なるのです。哀しいとか、嬉しいとか、切ないとか…今、何を言いたいのかが、私の遠い席からもはっきり解る。
私が、何度も何度も繰り返しこの演技を見てきたせいもあるけど、ヤグはやはり、写真家の菅原氏語るところの「千両役者」なのです。リンクを「ヤグディン・ワールド」に変えてしまう。
一見、大胆でクールに見えるヤグディンですが、私はこの人は至って繊細だと思います。そうでなければ、こんな、琴線に触れる情感は醸し出せないでしょう。
4年前の、大事な大事な五輪シーズン。
もしタラソワさんが一人でSPを作ったら、多分クラシックの名曲(定番)を使っただろうと思うのですが、あえて若いモロゾフの才能を持ってきた(当時モロゾフは26歳)。そこに、タラソワさんの懐の深さや柔軟性を感じずにはおれません。
この前のシーズン(00~01年)のヤグのフリー「グラディエーター」で、振付家としての鮮やかな才能を見せたモロゾフですが、競技用PGとしてはややマニアックで重苦しい(もっとも私は「仮面の男」より「グラディエーター」のほうが好き)。その辺りの反省点も踏まえて、「winter」は軽やかに、かつ華やかに作ってあると思います。
つまり、「あふれる才能の選手、ヤグがいる」→「ヤグに触発されて、モロゾフの芸術的イメージがふくらむ」→「モロゾフが原型を作った新鮮なプログラムを、タラソワさんが“勝つ”プログラムに再構築する」→「ヤグが、高い技術と感受性でその意図を理解し、完全に“自分のもの”にする」という理想的な循環がなされている…とまあ、私が勝手にそんな物語を作りあげているだけかもしれませんが。
今、この3人がそれぞれ別の道を歩き、ファミリーは解散してしまった、というのもなかなかに切ないです。それだけに、この「winter」が貴重な宝石に見えます。
ソルトレイク五輪後、怪我の深刻化や手術、モロゾフとの決別、引退か続行かの逡巡…と、常に「ジェットコースターな人生」を駆けめぐっていたヤグですが、ず~っと一緒にお付き合いしてきたファンにとって、この日の演技はまさに最高の贈り物だったのではないでしょうか。
「贈り物」をしっかり抱えて日本にやってきたヤグと、それに応えるファンの歓声。悲鳴のようなスタンディング・オベーションでも、私はずっと声が出ず、ただただ泣くのみでした。
一度は「一生リンクに立てないかもしれない」と宣告された状況から考えると、「その後のヤグディン」が、こうして再びリンクで舞い、ジャンプを跳び、誰よりも真摯な姿勢でスケートにのぞんでくれていることが、ある意味、奇蹟のような気がします。
来日直前のアイスショーのレポで、調子が悪い(腰にまた痛みがある?)とも聞いていたので、「もしwinterを滑って、悲しい内容だったらどうしよう…ガッカリするかも…」と私は思っていました。
最早、現役時と同じ健康状態で考えてはいけない。それこそ「poor skate」でも仕方ない…という覚悟。至高の演技を一度見てしまったら、それ以下のものは再び見たくない、と思うのも正直なところです。
がしかし、「winter」は素晴しかったのです。
どこがどう、と文字で書くのも陳腐なまでに。
「そこには、“スケートの魂”があった。」
と言うしかない。だから私はボロボロ泣くのみでした。
大トリで、静香ちゃんが「ユー・レイズ・ミー・アップ」(これは昼のコンペと同じ)と、アンコールで新作の「アベ・マリア」をちょこっとだけ滑り、大団円でした。やはり静香ちゃん人気は高し。
フィナーレでは、また二人ずつ組になって得意ワザなどを披露。
大ちゃんと武史君は、今度は二人同時にバレエジャンプ(大ちゃんは復活して元気でした・笑)。
エマさんとジェフは、ステップから逆回転のジャンプ(3トゥ?)。
ランビエールは絶好調のスピン。すごーい腕の動きの変化で、喝采を浴びます。
エンディングの一連の動き・構成も、やはりヤグディンが考えたのでしょうか。楽しく華やかでしゃれてます。
最後の最後で、皆が踊りながら取り囲む中を、静香ちゃんがスイーッとイナバウアー。
荒川さんは、トリノからの激務にもかかわらず、ずっとテンションを保ち、乱れるところが無かった。すんごい底力です。平静に見せて、水面下のトレーニングは相当のものなのでしょう。
戦い抜いて栄冠をもぎ取った彼女を讃えるべく、「特別ゲスト」として、終始立ててくれていた選手たちにも、ここは感謝したいところ。
「なんだかウサン臭いイベントかも…」という危惧は外れ、「ああやっぱりスケートはやめられない!」状態になって帰ってきました。この先、どうやって生きていけば良いのでしょうか(笑)。
ヤグディンありがとう。時差ボケながらも来てくれた海外選手、調整の難しい中で頑張ってくれた日本選手、ついにナマで会えた杉田さん(?)、大ちゃん、ヒゲ剃れよ(笑)。
夢まぼろしのごとくなり…というわけで、「さいたまスーパー」は誠に「スーパー」に終わりました★
(翌日が営業の仕事だったので、思いっきり現実に引き戻されました…)
