計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

梅雨入りの時期

2024年06月09日 | 気象情報の現場から
 この記事を書く時点(2024年06月09日)で、沖縄・奄美・九州南部・四国の梅雨入りが発表されました。梅雨の季節が近づいているのを感じます。

 1951-2023年の梅雨入りの時期を地方毎に「箱ひげ図」で比較しました。沖縄・奄美では4月下旬~5月半ば、その他の地域では5月半ば~6月半ばが多いようです。また、北陸地方の平年値は6月11日頃、東北南部は12日頃、東北北部は15日頃ですが、今年はどうなるのでしょうか。


 そもそも、梅雨入り・梅雨明けは「人間の主観的な判断」によるものであり、明確な基準があるわけではないのです。従って、「この日」が梅雨入り・梅雨明けした、と言うよりも「だいたいこの辺りの時期」という目安です。

 そのような事情を踏まえつつ、「梅雨入りが年々遅くなっているのかどうか」が気になる所です。そこで、梅雨入り日の年次変化の傾向(経年トレンド)をを調べてみました。ここでは、北陸地方と東北地方南部を例に取り上げてみます。

 まず、北陸地方の場合は回帰直線(赤線)が右上がりになっています。しかし、相関係数は0.1733と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。


 つづいて、東北地方南部の場合は回帰直線(赤線)がほぼ横ばい(微妙に右上がり?)になっています。こちらも相関係数は0.0587と小さいため、年(x)と入梅時期(y)の間に相関があるとは言えません。


 従って、安易に「梅雨入りが年々遅くなっている」とは「言えない」ようですね。引き続き、週間予報の推移を見守りましょう。
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気温の日較差の月別変化

2024年03月25日 | 気象情報の現場から
 新潟県内4地点(相川・新潟・長岡・高田)における「気温の日較差」を月別に「箱ひげ図」の形で集計してみました。

 ここで、気温の日較差とは「最高気温(Tx)と最低気温(Tn)の差(Tx-Tn)」の事です。この値が大きいほど、一日の中での気温差が大きいということです。今回は「平年」に相当する「1991~2020年」の観測値を使用しました。

 相川・新潟・長岡・高田の順にグラフを掲載します。ここで、箱ひげ図の他に記載されている「〇」は外れ値、「×」は平均値を表しています。グラフから日較差の変化傾向を読み取ると、冬と夏は極小となる一方、春と秋は極大となることが判ります。特に春(4~5月)の日較差が顕著です。






 これからの時期は特に体調管理にも注意したい所ですね。
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新潟県内の花粉飛散の傾向分析

2024年02月18日 | 気象情報の現場から
 新潟県内3カ所(新潟・長岡・上越)の花粉飛散傾向を調べました。気象要素は「気象庁の観測値」、花粉の飛散量は「環境省花粉観測システム(はなこさん)」を用いています。

 まずは、2009~2020年の年別(各年の2月~5月)の花粉飛散量を集計しました。棒グラフの比較から、シーズンを通しての花粉飛散量は年によって大きく変動することが判ります。また、箱ひげ図の比較からは、新潟よりも長岡・高田の方が多く飛散しています。



 続いて、旬別の平均的な傾向を集計しました。棒グラフの推移から、旬別平均では「3月上旬~4月中旬」が大きな山となるようです。累積比率のグラフを見ると、この時期の大きな上昇カーブが現れているのが良く判ります。



 続いて、新潟県内の花粉飛散量と前年の気象要素の関係について調べてみました。今回は「山間部に多く分布するスギの花粉が平野部に拡散される」過程も考慮し、山間部での観測結果も分析対象に加えました。この結果、前年8月下旬の平均気温および9月下旬の降水量と相関が見られました。

(1)新潟の花粉と新潟・津川の前年気象の関係


(2)長岡の花粉と長岡・守門の前年気象の関係


(3)高田の花粉と高田・関山の前年気象の関係


 ちなみに、気温と降水量を同時に考慮する場合は「重回帰分析」を行うことになります。しかしながら、花粉データについて環境省花粉観測システム(はなこさん)の情報配信サービスが既に終了しております(現在公開されているのは「過去のデータ」のみ)。従って、改めて予測を試みたとしても、その予測結果の検証が出来ません。ここが、ちょっと悩みどころですね。
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2024年02月05日の関東の雪

2024年02月06日 | 気象情報の現場から
 2月5日は南岸低気圧の東進に伴い、関東地方でも大雪となりました。興味深い事例なので、メモとして記事を上げておきます。

 以前、2018年の1月に「南岸低気圧に伴う関東地方の降雪を考えてみる」と言う記事を書きました。まずはその内容を簡単に振り返ってみましょう。

 南岸低気圧の接近時、関東平野に流れ込む南東~北東の風が、北から流入する寒気を堰き止めることがあります。この結果、関東平野では寒気が滞留します。

 また、低気圧に伴う雲から滞留寒気に向かって雨粒が降り注ぎ、これら雨粒が蒸発すると、下層空気の冷却が進みます。これは雨粒の相変化に伴い、周囲の空気から潜熱が奪われるためです。こうして「地上から上空まで」十分冷えた状態が形成されます。

 従って雪から雨に融けにくくなるので、その分「雪の状態を維持したまま」地上に到達しやすくなります。


 さらに、低気圧の後面では融解層も下がるので、上空の降水が雪のまま地上に到達することがあります。この場合は「雪から雨に融けるよりも、地上に到達する方が早くなる」のです。



 さて、件の2月5日は前線を伴った低気圧が日本の南岸を東に進みました。さらに上空の寒気も南下しており、東日本の太平洋側の地域でも、北東の流れに伴う寒気の流入が見られました。



 北東から関東山地に流れ込んだ寒気は、南岸低気圧に伴う南寄りの風によって堰き止める形となりました(この点は冒頭の構図とは異なります)。さらに、上空寒気の南下に伴い融解層も下がったことで、上空の降水が雪のまま地上に到達しやすくなりました。



 2月5日の東京における時系列変化です。正午を過ぎて降水が始まり、気温も「釣瓶落とし」の如く降下しました。上空の寒気の南下に加えて、滞留寒気に降った雨粒が蒸発した効果も合わさって、下層空気の冷却が進んだようです。この結果、地上から上空まで十分冷えた状態が形成されたことで、16時以降には降雪が始まりました。

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2024年1月は少雪傾向

2024年01月31日 | 気象情報の現場から
 この冬は暖冬・少雪の傾向にあるため「雪のイベント」にも開催規模の縮小など、影響が出ているようです。

 以前(2019年)、「開催直前の気温上昇のリスク」を想定した「天候デリバティブ」を検討したことがあります(その論文)。これは、山形県米沢市の「上杉雪灯籠まつり」を念頭に、「1か月アンサンブル予報」を応用して天候リスクの評価を試みたものです。


 しかし、現実問題としては、そもそもの原材料となる雪が少ない「少雪のリスク」をヘッジするケースも検討した方が良さそうですね。対応策としては様々なアイデアが思い浮かびます。もし、「天候デリバティブ」のプランを想定すると、期待された利益や効果が得られない場合に、そのダメージを最小限に抑えるというアプローチが考えられます。

 また、天候デリバティブで得られた補償金を元手に、降雪装置などを稼働する方向もあるかもしれません。その場合は諸々のコストと比較して検討する必要があると思われます。


 さて、新潟県内にも目を向けてみます。ここでは上越・妙高・十日町における12月と1月の降雪量に関して、平年値と今季の比較を行いました。棒グラフからも明らかなように、12月の高田を除くと、今季は平年値を下回る傾向が現れています。



 ここで、平年値とは過去30年間(2024年の場合は1991~2020年が対象)の平均値です。そこで、この30年分の「平均値」ではなく「変動の範囲」で比較してみましょう。そこで、平年(1991~2020年)の12月と1月の月降雪量の変動を箱ひげ図に表してみました。


 この箱ひげ図において、この冬の12月、1月の値がどこに来るのかを見てみると・・・12月の高田・安塚を除いては、今季は第一四分位点以下の水準となりました。やはり、この1月は「雪の少ない冬」と言えそうです。
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2023年12月の傾向と背景

2023年12月27日 | 気象情報の現場から
 前回の記事で述べたように、今年(2023年)の12月は「17日頃」を境に「暖冬」から「寒冬」に転じました。これに伴い、新潟県では21~22日を中心に大雪に見舞われました。

 大気の循環場を見ると、前半は偏西風のリッジ位相が卓越したものの、後半はトラフ位相が進んできたことで寒気の南下が顕著に現れました。さらに冬型の気圧配置と日本海上の収束帯の影響も重なり、一気に冬の景色に染められたようです。



 続いて、12月21日は冬型の気圧配置となりました。日本海上では北風と西風に伴う収束帯(JPCZ)が形成され、付近では対流も活発になりまそた。上空では湿潤域が広がる他、顕著な寒気南下も重なって大気の状態は不安定になっており、大雪や強風なども予想されました。



 12月22日も冬型の気圧配置が続き、その上空では非常に強い寒気も南下しました。また、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が北陸地方にかけて延びており、その付近では対流活動も活発になりました。また、JPCZの動向に加えて、その北側に広がる「Tモード」の雲域の広がりが、平野部中心に積雪の増加に寄与したようです。

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2023年12月の傾向(新潟県)

2023年12月27日 | 気象情報の現場から
 新潟県における「2023年12月の平均気温と降雪量の推移」を25日まで調べてみました。

 概ね5日~17日頃までは平年より高温傾向で推移しました。その後、平年より低温傾向に転じると顕著な降雪となりました。4地点のグラフからは、17日頃を境に傾向が大きく変わっているのが見て取れます。






 一口に「暖冬」とは言っても、必ずしも「高温状態が続き、雪が降らない」と言うわけではありません。もちろん「高温」の時もあれば、「低温」の時もあるのです。そして、トータルの平均を取ると「高温」の側に偏るのです。

 実際の間隔としては「高温の時期と低温の時期の振れ幅が大きい」という所でしょうか。
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猛暑日が目立つ夏

2023年08月23日 | 気象情報の現場から
 この夏は(2023年)、いつもにも増して「暑さが際立っている」ように感じます。

 まずは、8月14日の14時30分時点での新潟県内の気温と風の様子です。台風7号の北上の影響で(図略)、北陸地方では南東の風に伴うフェーン現象が顕著に現れました。この夏は、このような高温の日が多いのが特徴です。




 そこで、新潟県内4地点の8月の日最高気温の推移(1976~2023年)を調べてみました。日最高気温は「猛暑日」「真夏日」「夏日」「夏日未満」の4階級に分け、各々の出現回数を表示しています。今年(2023年)は20日までの集計ですが、「真夏日」と「猛暑日」しかありません。また、「猛暑日」の出現回数が顕著です。






 さらに、上空の天気図を見ていると、「いつもの夏とはちょっと違う」と感じることがあります。一般的に、太平洋高気圧の目安としては500hPa面の「5880m」等高度線(ジオポテンシャル高度)に着目します。

 しかし、最近の数値予報図で暖湿気(高相当温位)の流れを見ていると、「5880m」等高度線の縁辺ではなく、むしろ「5910m」等高度線の縁辺を回り込んでいるように見受けられます。つまり、ここ最近については、太平洋高気圧の目安として「5880m」よりも「5910m」を見た方が良さそう(要は、高気圧の指標が平年よりも高め)と言うことです。

 次の図は2023年8月18日の模式図です。



 これら一連の背景を理解するために、最近(2023年8月中旬)の特徴をラフに描きました。南の活発な対流に伴って、偏西風や太平洋高気圧は北に偏り、日本付近における高温域の広がり(気温の底上げ)を招きました。

 また、偏西風の峰(リッジ)に伴い、高気圧の中心も東に偏り、日本付近では南風が目立ちました。この南風に伴うフェーン(風炎)現象が日本海側の高温に拍車を掛けた(さらに気温が上がる)ため、猛暑日の日数が増加したと考えられます。

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梅雨明けした途端・・・暑い。

2023年07月26日 | 気象情報の現場から
 7月20日頃から厳しい暑さが続いております。当地も「北陸地方の梅雨明け」発表直後から連日のように「真夏日」が続いております。水道の蛇口を捻っても、出てくるのは「水」ではなく「お湯」といった有様です。この背景を図に描いてみました。


 フィリピン付近の活発な対流や台風5号に伴う上層発散場が、日本付近の偏西風を押し上げているようです。この結果、日本付近ではリッジ位相が顕著となり、太平洋高気圧が強められると考えられます。また、台風は高気圧の縁辺を北上しており、互いに影響を及ぼし合っています。

 さらに、台風は顕著な「上昇気流」です。対流圏界面付近まで達すると、以降は水平に広がり(発散)やがて「下降気流」に転じます。この「下降気流」が太平洋高気圧の勢力を強める働きをします。下降気流に伴って空気が「断熱圧縮」されるのに伴い、その温度は上昇します。つまり、「暑さ」が増すのです。

 適度な冷房の使用や、水分・塩分の補給を心掛けるなど、熱中症の予防を心掛けて下さい。
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梅雨末期の前線の動き

2023年07月19日 | 気象情報の現場から
 7月も半ばを過ぎて、梅雨末期となりました。この時期は梅雨前線の北上に伴い、東北・北陸地方を中心に大雨に対する注意が必要となります。

 先日・15日(土)~16日(日)の週末は、秋田県を中心に東北地方の北部で大雨に見舞われました。また、梅雨前線の南側では気温の上昇に伴う猛暑が顕著となりました。

 そこで、7月16日の主な特徴を模式図に表してみました。


 太平洋高気圧の北上に伴って、梅雨前線も東北地方まで北上しています。太平洋高気圧の縁辺に沿って、梅雨前線に向かう顕著な暖湿気の流入が持続しています。この構造が大雨をもたらす背景の一つとなりました。

 また、850hPa面の18℃等温線も北上しています。850hPa面は上空1500m付近に相当し、気温減率を6.5℃/kmと仮定して地上気温に換算すると「18℃ + 6.5℃/km × 1.5km ≒ 27.8℃」と「30℃」近い暑さに相当します。

  7月16日正午の新潟県内の気温と風の分布を見ると、標高補正値で「34~35℃」と非常に気温の高い地域が見られます。


 このように、梅雨前線の近くでは大雨に、また梅雨前線の南側では猛暑に、それぞれ注意が必要な状態です。

 そして、7月19日(水)の特徴を模式図に表してみました。梅雨前線が日本海を通って東北地方に延びており、前線上には低気圧も発生しています。また、太平洋高気圧の縁辺流に伴う暖湿気の流入も持続しており、大気の状態は不安定になっています。


 今後の前線の南下や低気圧の接近に伴う影響も気掛かりです。降水量が増えた場合は、土砂災害や河川の増水・低い土地での浸水のおそれもあるので、最新情報の確認を心掛けましょう。
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寒波襲来の背景にあるもの

2023年02月09日 | 気象情報の現場から
 2023年1月下旬に襲来した「10年に一度」の「最強寒波」の背景を探ってみます。寒波が顕著だった1月21日~25日(第5半旬)の特徴をラフに描いてみました。


 偏西風の蛇行が大きく、北極付近の上空ではリッジが卓越しました。一方、日本付近では広くトラフとなりました。このため、北極付近に蓄えられた寒気が日本付近に向かって放出された形となりました。

 つまり、対流圏内で偏西風の蛇行が大きくなり、その波動が上層の成層圏にまで伝播して「成層圏突然昇温」を引き起こした結果、対流圏でも「負の北極振動」のパターンが顕著になりました。さらに、日本付近でトラフとなったことが寒波の襲来につながったものと考えられます。
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「10年に一度」の「最強寒波」

2023年01月30日 | 気象情報の現場から
 2023年1月下旬には非常に強い寒気が南下しました。この寒気を形容するために「10年に1度」や「最強寒波」というキーワードが多用されたようです。そこで、上空1500m付近の寒気について高層気象観測のデータを基に調べてみました。

 具体的には、高層気象観測(1991~2020年・09時と21時)を基に、輪島と秋田における「気温のヒストグラム(850hPa面・1月)」を作成しました(階級は3℃毎に設定しています)。その上で、今年(2023年)の「1月25日09時」の値を例に、ヒストグラム上の対応する階級を照合してみました。


 輪島と秋田における「2023年1月25日09時」の値は、いずれもヒストグラムの中でも最も左側(最も気温の低い階級)に対応していました。平年の期間(1991~2020年)の中でも「トップクラスの低温」ということであり、あらためて今回の寒気が顕著だったことが実感できます。

 ここで、蛇足ですが(受験ではお馴染みの)「偏差値」という概念を用いてみましょう。世間ではランキングを表す際に「○○偏差値」というワードを用いることがあります。そこで、上空の寒気の度合いを表す「偏差値」のようなものを考えてみます。

 N個の観測値からなる母集団について「平均値:m、標準偏差:σ」である場合、ある観測値xの「偏差値SS」は

 SS = 50 + 10×(x-m)/σ

 で表されます。 一般的にSSの値は「25~75」の範囲におさまると言われています。

 ここで、気温が低くなるほど偏差値が高くなるように修正すると

 SS = 50 + (-10)×(x-m)/σ

 となります。

秋田の場合は、
「x=-19.1,m=-9.6,σ=3.8」を適用して「SS=75.0

輪島の場合は、
「x=-16.7,m=-7.0,σ=3.8」を適用して「SS=75.5

 ここで、上記の秋田・輪島のSSは厳密に言えば「正確な偏差値」ではありません。なぜならば「xが母集団に含まれていない」からです。本来の偏差値は評価対象(x)の「母集団内における相対的な位置」を表す指標です。

 しかし、「平年」の期間(1991~2020年)を基準に評価した場合、偏差値75~76に「相当するレベル」とは言えるでしょう。少なくとも(漠然とした)「最強寒波」や「10年に一度の寒波」と言うよりも「インパクト」は伝わりそうな気がします。
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冬の中休み

2023年01月17日 | 気象情報の現場から
 2023年01月半ばの特徴をラフに描いてみました。この時期は偏西風の蛇行が大きく、日本付近はリッジ側に入りました。

 このため、一時的に気温が上がり、春のような陽気さえ感じられました。「梅雨(つゆ)の中休み」という言葉がありますが、この時期はさながら「冬(ふゆ)の中休み」と言った所でしょうか。

 しかし、この後は偏西風波動の位相が東にシフトすることで、強い寒気の南下も予想されます。気象情報に留意して、大雪などへの備えや体調管理にも注意しましょう。

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2022年12月の降雪傾向を振り返る

2023年01月05日 | 気象情報の現場から
 謹んで新春のお慶びを申し上げます 

 新春早々、山形県・新潟県の昨年(2022年)12月の積算降雪量を平年値(1991~2020年)と比較しました。

 山形県は昨年・平年共に朝日連峰で極大域となりましたが、極大域における昨年の値は平年値より1m近く増えています。12月18日~20日および12月23日の大雪の影響がうかがえます。



 また、新潟県の平年は山側ほど降雪量は増加しますが、昨年は中越北部~県央の降雪が顕著でした。特に魚沼付近では昨年の値が平年値より1m近く超過しました。こちらも12月18日~20日の大雪の影響がうかがえます。



 昨年(2022年)12月中旬は、北極付近に蓄積された寒気が中緯度地方に放出される「負の北極振動」の形となりました。さらに、ヨーロッパから日本付近にかけて偏西風が「谷ー峰ー谷」の波列となる「正のEUパターン」が加わり、日本付近では非常に強い寒気が南下しました。



(2023.01.05追記)
 また、輪島・秋田の高層気象観測を基に「850hPa面の風配図(12月)」を作成し「平年(1991~2020年)」と「昨年(2022年)」を比較しました。秋田では平年と昨年で同様の傾向を示した一方、輪島の昨年は平年に比べ西南西の風向が卓越しました。昨年12月の積算降雪量の分布にも両者の違いが現れたと考えられます。

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2022年12月中旬の大雪

2022年12月20日 | 気象情報の現場から
 2022年12月18日夕方から20日朝にかけて、新潟・山形・福島の3県を中心に大雪に見舞われています。長らく続いている「ラニーニャ現象」に「負の北極振動」が重なり、さらに「日本海寒帯気団収束帯」が新潟県に延びたことが主な要因とみられます。

 第1図は、2022年12月18日15時における数値予報図です。
 日本海では等圧線が幾重にも(ひらがなの)「く」の字に折れ曲がっています。そこでは日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が形成されており、その向かう先で大雪の傾向があります。


第1図・12/18の15時における数値予報図(気圧配置と降水量)


 第2図も、2022年12月18日15時における数値予報図です。
 この図では風向風速に注目してみます。北半球では、気圧の高い側から低い側に向かって、等圧線を右斜めに横切るように風は吹きます。また、等圧線も密集し、気圧の傾きが大きくなっています。日本海上の等圧線が「く」の字に折れ曲がる線(黄色破線)を境に、その北側では北西寄りの風、南側では西よりの風となっています。この2つの流れが日本海上で線状(帯状)にぶつかる領域が「収束域(収束帯)」です。


第2図・12/18の15時における数値予報図(気圧配置と風向風速)


 第3図は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図です。
 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)は、朝鮮半島北部の山脈(約2700m級)によって寒気の流れが二分され、日本海上で合流する際に形成される風の収束域(収束帯)のことです。要は、二つの流れが合流する帯状(線状)の領域とイメージすると良いでしょう。
 各々の季節風の流れに伴って生じた雪雲が、この収束帯上に集まり、その延長線上の下流側に向かって移動します。まさに、雪雲が大群を成して押し寄せるようなものです。


第3図・日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の模式図


 第4図は上空寒気のパターンの模式図です。上空の寒気に注目すると、日本付近に非常に強い寒気が流入しやすい条件が揃っていました。
 ヨーロッパから日本付近にかけてトラフーリッジートラフの位相(波列)となる「正のEUパターン」が形成されたため、日本付近では寒気の南下しやすい位相となっています。
 さらに「負の北極振動」に伴って北極付近に蓄積された寒気が中緯度地方に放出されやすい状態が重なったため、「最強寒波」と呼称されるような非常に強い寒気の南下につながったと考えられます。


第4図・上空寒気のパターンの模式図


 第5図は新潟県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図です。
 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が県央~中越地方北部に向かって延びた影響で、この地域を中心に集中的な降雪域が見られます。一方、中越地方南部の南魚沼市では目立った降雪は見られませんでした。


第5図・新潟県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図
※20cm以上を等値線の対象


 第6図は山形県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図です。
 山形県は日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の北側に当たり、北西寄りの風が強まりました。このため、朝日連峰と飯豊連峰に沿って降雪量の極大域となっています。山形県では西置賜から最上地方を中心に積雪の増加が見られました。

第6図・山形県12時間降雪量(2022年12月18日18時~19日06時)の分布図
※20cm以上を等値線の対象


 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)については「こちらの記事」でも詳しく述べています。また、類似の事例として、2021年1月の上越の大雪も日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)が関与しています。
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